[R-18]魔女シリーズ9~ヘドロめいたババアがかわいい少女に惚れるが悲恋で終わる百合・終編

泥婆(どろばばあ)こと青海嘯ヘドローバと 見習いのドゥドゥすなわち飾の魔女ドゥニドゥニエンヌの物語 ほかのお話は以下 魔女シリーズ一覧 続きを読む
2
まとめ [R-18]魔女シリーズ8~ヘドロめいたババアがかわいい少女に惚れるが悲恋で終わる百合・後編 泥婆(どろばばあ)こと青海嘯ヘドローバと 見習いのドゥドゥすなわち飾の魔女ドゥニドゥニエンヌの物語 ほかのお話は以下 魔女シリーズ一覧 https://togetter.com/li/1257731 [R-18]魔女シリーズ1~少年期に魔女に犯された男が成長後も搾取を受ける話 https://togetter.com/li/1257715 [R-18]魔女シリーズ2~食用人種なのに貧相で出荷されない少年がお姉さんに世話してもらう話 https://togetter.com/li/1257724 [R-18]魔女シリーズ3~少年放牧場における躾、お姉さんの趣味と実益を兼ねた妙技 https://togetter.com/li/1257726 [R-18]魔女シリーズ4~たたら場で使い潰されそうな少年を拾っ.. 2732 pv 1
帽子男 @alkali_acid

嵐の多い夏の終わり。 南洋では、海に住む民と陸に住む民のあいだに血で血を洗う戦が起こった。 ただ干戈(かんか)や弓矢を向け合うだけではない、双方が方術をもって森羅万象を操り、天変地異を生じせしめて武器とした。

2018-08-19 11:43:13
帽子男 @alkali_acid

陸の人間は、東方から絹の道を通じて伝わった知識を得て神仙を名乗り、不壊の金属、神鋼でよろった兵と軍船(いくさぶね)、天翔(あまが)ける乗物、虹の浮橋(うきはし)とを投じた。 海の人間は鱗あるもの、甲羅あるもの、触手あるもの、透き通った水母(くらげ)のごとき肌を持つものなど多彩。

2018-08-19 11:45:34
帽子男 @alkali_acid

美しきも恐ろしき大酋長、青海嘯が、浅瀬から深淵まで五十七州に散らばる異形の諸族をまとめ、潮と浪(なみ)、嵐さえもをしもべとして迎え撃った。

2018-08-19 11:47:25
帽子男 @alkali_acid

守る側の海霊の軍勢はあらかじめ領する島々をことごとく津波で洗い、壊し尽くしていたので、攻める神仙の軍勢は、泊(とまり)すべき地がなく、糧秣や矢玉を荷船に積み込み、軍船が周囲を固めるかたちで進んできた。

2018-08-19 11:50:15
帽子男 @alkali_acid

海霊の戦士は動きののろい荷船を狙って再三襲いかかったが、都度、神仙の作り出した水の中をゆく鋼鉄の精兵が阻んだ。 新顔である金属(かね)のからくりは、それぞれが船ほどの大きさもあり、半身が人で半身が魚、手に三又の矛を携え、胸の内に生きた乗り手を宿している。

2018-08-19 11:54:04
帽子男 @alkali_acid

わだつみのもののふはたいてい少数で、不利とみると犠牲を出す前にすばやく引き上げ、また隙をついて補給を断とうと図った。 おかげで陸の民の進軍はいささか遅れたが、一方で神仙の将帥は、敵の考えを推し量り始めた。

2018-08-19 11:59:24
帽子男 @alkali_acid

打ち続く戦によっての海霊の数は減り、従う小邦はたよりにならず、大軍と正面からぶつかるより疲れさせ、倦ませる計略をとっていると。 かくて木と鋼の船からなる艦隊は力を散らさぬようにしつつ、海霊の小刻みな抗いを除くため、根城としているうなぞこの砦を囲んでは一つまた一つと落としていった。

2018-08-19 12:04:15
帽子男 @alkali_acid

鯨の墓場、黒煙突の谷などに陣取るわだつみのやからは、懸命に防戦にあたったが果たせなかった。 まず天の高みから、虹の浮橋が鋼の錘をつけた樽を落とす。 樽はそれぞれ波の下に入りある深さまで達すると割れ、高熱と衝撃を発する。石灰や辰砂その他を混ぜ合わせてあり、水に触れると炸裂するのだ。

2018-08-19 12:09:13
帽子男 @alkali_acid

貝殻や岩で固めた堡塁を壊し尽くし、動くものの気配がなくなったところで、やっと軍船があらわれ、神鋼の兵士や潜りのうまい常人の水夫を下ろす。 海霊の側は一矢も報いられずに退散するばかりだった。 ついに神仙はほぼ無傷のまま空と海の両方から、目的地である魔女の島のそば、貝の都に達した。

2018-08-19 12:12:45
帽子男 @alkali_acid

◆◆◆◆ 天から降り注いだ樽が爆ぜ、美しい巻貝の塔を粉々にしてゆく。 退却する海霊の男達は怒りに震えたが、泡すら立てずに滅びゆく故郷をあとにしていた。 かなり離れたところで、万軍の帥である青海嘯はじっとすべてを観察していた。そばでは年長の戦士が嘆く。 「いつまで」 「まだだわえ」

2018-08-19 12:15:36
帽子男 @alkali_acid

「祖先があれを築くのにどれほどの心血を注いだか。貝の都をむざむざ蹂躙させるなど海霊の誇りはどこに」 壮年が透き通った肌をした巨躯をゆらめかせつつ、たまりかねて問うのを、さらに背丈で上回る女帝は冷たく一瞥した。 「汝等、わらわに大酋長の座を返す時、泣き言は漏らさぬと誓ったわえ」

2018-08-19 12:19:16
帽子男 @alkali_acid

「聞きや小僧。海霊の誇りは、きらびやかな都に安穏とするのではなく、うなぞこに積み重ねた敵の屍の上を泳ぎ水に混じる血の匂いを味わうことにあるのだわえ」 「だが…それはいつ…いつ」 「まもなくだわえ…思うた通り、むこうは神仙と名乗っても陸の人間」

2018-08-19 12:21:51
帽子男 @alkali_acid

ヘドローバは目を細める。 「戦の仕方は陸の人間そのもの。根城を囲み、潰し、点と点をつないで線となし、征服したと考える」 「ではなぜ奴等のやり方に合わせて戦うのだ」 「まったく…汝等に大酋長の座を譲ったのは少しは知恵をつけさせるためであったものを…」

2018-08-19 12:24:06
帽子男 @alkali_acid

青海嘯は嗤った。ぞっとするような表情で。 「誰しも分かりやすいものを信じるからだわえ…餌が少なくても、自らの慣れし親しんだやり方が通じると思うておる時、釣り針を飲み込む。もっと喉の奥へ、もっと」

2018-08-19 12:26:27
帽子男 @alkali_acid

女の声音に、男はあとずさった。 「奴等を誘い入れるためだけに、都を…」 「たかが都の一つや二つ…くれてやるわえ…さて、そろそろ…漁を始めるわえ」

2018-08-19 12:28:38
帽子男 @alkali_acid

◆◆◆◆ 陸の伝馬や鳥文、狼煙、あるいは神仙の方術よりもはやく、海の軍令は諸族に広がった。 深淵に住まう、不知火の娘と呼ばれる光で言葉をかわす民の力だった。 潮の流れが急激に変わり、水温が変化すると、晴れ渡った空に密雲が渦を巻き始めた。

2018-08-19 12:31:12
帽子男 @alkali_acid

すでに神仙の軍船も虹の浮橋もすべてが、一定の領域に入り込んでいた。 渦潮がそれらの退路を断った。海底の火の山が開戦の喇叭のごとく溶岩を噴出させ、うなぞこの沙を巻き上げて濁らせるほどの地震を起こすと、津波がすさまじい勢いで陸に奔った。港という港をさらうのは明らかだった。

2018-08-19 12:33:53
帽子男 @alkali_acid

同時に暴風の渦が一つ、二つ、三つ、四つと生じ、神仙の空の軍と海の軍のあいだを遮った。 いよいよ魔女の島への上陸を準備しにかかっていた艦隊に混乱が沸き起こった。

2018-08-19 12:35:39
帽子男 @alkali_acid

ヘドローバは透き通った指をまっすぐに獲物の群へ向けた。 「さあ我慢せず好きなだけ食い散らかしや。神仙の肉は甘いと聞くわえ」

2018-08-19 12:36:35
帽子男 @alkali_acid

鱗あるもの、甲羅を負うもの、鋏を振るうもの、触手をうねらせるものは、透き通った肌を持つ海霊を先頭に四方から陸の民に押し寄せた。

2018-08-19 12:37:55
帽子男 @alkali_acid

神仙の新兵器として猛威を振るってきた神鋼の人魚は、常人には聞こえぬ音を発して敵の数を探り当てようとしたが、戦が始まって以来ずっと音のくせを聞き取ってきたわだつみのやからは、打ち消すような音を発して封じ込めた。

2018-08-19 12:39:48
帽子男 @alkali_acid

暗黒の波濤の中で、不知火が燃え、海蛍が輝き、惑わされたものを裏切ってかき消える。 神鋼の鯨や人魚には触手をうねらすものの戦士がからみつき、墨をはきかけながら深みへひきこむ。不壊の金属にも耐えがたいほど水の圧が高まるところへ。装甲の継ぎ目が破れ、乗り手が溺れ死ぬよう。

2018-08-19 12:43:00
帽子男 @alkali_acid

海霊の百の戦士がが一つとなり、巨大な人型となって、波を操りながら艦隊のあいだをかき分け、おもちゃのように軍船を掴んでは投げ飛ばす。 陸の民の悲鳴は、吹きすさぶ風と雨にまぎれ聞こえなかった。

2018-08-19 12:44:42
帽子男 @alkali_acid

◆◆◆◆ 「さて…小僧どもには玩具で遊ばせておくとして…わらわはめんどうな方を片付けるわえ」 荒天から降りてくる竜巻を階段(きはざし)がわりに、ヘドローバは天へとのぼる。 「空飛ぶからくりとは、こざかしいものを考え付いたものだわえ」 渦巻く雲を裳裾にし、女帝は暴風と一つとなる。

2018-08-19 12:47:15
1 ・・ 4 次へ