茂木健一郎(@kenichiromogi)さんの連続ツイート第2113回「化ける」

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茂木健一郎 @kenichiromogi

連続ツイート第2113回をお届けします。文章はその場で即興で書いています。本日は、「化ける」について。

2018-08-20 07:34:37
茂木健一郎 @kenichiromogi

柳家花緑師匠の「初天神」を舞台袖から拝見していた。子どもが父親にだんご買ってくれよとねだるあたりで、師匠の顔の表現があまりにもすばらしく、ああ、師匠化けられたと思った。もともと凄い師匠が、化けられた。

2018-08-20 07:35:50
茂木健一郎 @kenichiromogi

演芸の世界で「化ける」とは、ある人がそれまでの境地を突き抜けて、別人と思われるほどのすばらしい芸をすることである。6代目の三遊亭圓生さんも、「名人」と言われるようになったのはそれなりのお年になられてからと聞く。「化ける」ということがあるのである。

2018-08-20 07:37:14
茂木健一郎 @kenichiromogi

「化ける」という言葉には、幼虫がさなぎになり、蝶になるような、内面の化学反応を含む、予想できないような変化の認識がある。それは、積み重ねによる小さな変化というよりは、本人も周囲も予想しないような、劇的な存在革命である。

2018-08-20 07:38:36
茂木健一郎 @kenichiromogi

人は、どんな時に化けるのか。柳家花緑師匠は、近年、演劇の舞台を経験され、その時求められているものが落語とは全く違うという話をされた。相手が喋っている時の受けの演技が必要だったり、役ヘの没入がさらに深く、全人格的であるといったこと。

2018-08-20 07:40:21
茂木健一郎 @kenichiromogi

柳家花緑師匠が、演劇の舞台を経験されることで、拝見した「初天神」の子どもの演技の深み、凄みに通じるというような回路があるのかもしれない。「化ける」は、その人となにか別のものの出会いであり、だからこそ、憑依したような、そんな趣を呈するのかもしれない。

2018-08-20 07:41:35
茂木健一郎 @kenichiromogi

どんな人でも「化ける」ということはあるのだと思う。なにか大きなものと出会って、それを必死になって自分の中に取り入れる時に、人は化けるのかもしれない。それはつまり、自分が何かに乗っ取られることである。大きく深いものを、自分の中に取り入れていくプロセスである。

2018-08-20 07:42:48
茂木健一郎 @kenichiromogi

以上、連続ツイート第2113回「化ける」をテーマに、6つのツイートをお届けしました。

2018-08-20 07:43:28