死刑囚赤城、艦娘になる

なんかどろっとしてる
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たこいちろう@天然記念物 @_TKKC_

『主文、被告人、赤城 舞を極刑に処する』 わかっていた結末だった、何人この手で葬ったかさえ、私自身覚えていない。 所詮人の生き死になんてものは無関係な人間一人の手で決まってしまうほど軽いものだと、傍聴席の温室育ちどもは分かりはしない

2018-08-20 08:47:38
たこいちろう@天然記念物 @_TKKC_

ある日のテレビで見たことがある、カエルは増えすぎると数を減らすために共食いする個体が生まれるそうだ、そのような個体が人間にも生まれるのであれば、それは私のような人間だろう。いや、こいつらは私のことを人間だと思ってはいない。殺人犯は鬼か悪魔と思っているのだろう。

2018-08-20 08:51:12
たこいちろう@天然記念物 @_TKKC_

生い立ちを知れば同情し、反抗手口を知れば悪魔と呼ぶ都合のいい連中だ、人の本質は私のような黒い部分だ、それを表に出すか否かの違いしかない。 長ったらしい判決書が読み上げられた今、私は永遠にカビ臭いコンクリートの中で一生を過ごす、酷く退屈でつまらない、二度と血の匂いを嗅ぐことはない。

2018-08-20 08:54:39
たこいちろう@天然記念物 @_TKKC_

判決が決まった次の日から、つまらない生活が始まった。 何かするわけでもなく硬いベットの上で寝転んだり、刑務官から渡される分厚い本を読んだり、生産性のない無意味な生活、死んだように生きるとはこのことなんだろうなとどうでもいい納得感があった。

2018-08-20 09:15:35
たこいちろう@天然記念物 @_TKKC_

毎朝、何かにすがるように念仏を唱える声で目を覚ます。刑務官の起床合図よりも早い時間から聞こえる、死が決まった今徳だなんだとすがるこいつらは、覚悟を決められないまま牢に押し込められたのだろう。

2018-08-20 09:20:15
たこいちろう@天然記念物 @_TKKC_

「うわぁぁぁ!!いやだ!!死にたくない!」 一人、刑務官に連れていかれた、ここで呼び出されることは死刑執行を意味する。 大の男が、実に情けない ここにいることはいずれ死を迎える、悪戯に時間を引き延ばすのは懺悔か、世論か、どちらにせよいつか死ぬことには変わりない。

2018-08-20 09:57:41
たこいちろう@天然記念物 @_TKKC_

この牢に押し込められたある日、私は牢から出された ついに私は死ぬ、この腐った世界からようやくおさらばだ 思えばなにも恵まれない人生だったなと、連れられる間にふと思った。 初めてこの手を血で染めた時は、制服を着ていたくらいの歳だった。

2018-08-20 10:00:44
たこいちろう@天然記念物 @_TKKC_

ろくでなしの父親に無理やり犯された時は、なんの感情もなく、気付けば父親は肉になっていた。 その次はなんだっけ…そうだ、高架下で殴られた時だ。サングラスをかけていた男を殴り続けたら動かなくなっていた。

2018-08-20 10:03:11
たこいちろう@天然記念物 @_TKKC_

そのあとは…まぁ、さほど思い入れのある人間ではなかったかな、私の体目的の下衆か、金をたかるチンピラ…そんなのばかりだったかな、でも誰かを苦しめたことのある悪党ばかり手にかけていた、悪いかと言われたらそうではない。だが法を破ったのは事実だった。

2018-08-20 11:00:27
たこいちろう@天然記念物 @_TKKC_

いつしか自分の正義のためではなく、動くものが動かなくなる瞬間が楽しくなっていたのも事実だった。暖かい肉が冷たくなる感触、肉をこの手で引き裂いたり、殴ったりする感触、背徳的な感触はいつしか快楽になっていった。

2018-08-20 11:10:48
たこいちろう@天然記念物 @_TKKC_

そこからだろう、私が偽善の英雄からただの快楽殺人者に堕ちたのは、今となってはどうでもいいことだが… 長い廊下を歩かされた先は、味気ない灰色の扉が一つ、この先が、絞首台 私の人生が、ここで幕を閉じる

2018-08-20 12:27:45
たこいちろう@天然記念物 @_TKKC_

扉の先にあったのは、無機質な机と、椅子と、背広を着た男だった。 「死刑囚の暮らしはどうでしたか?」 一言目に聞かれたのは暮らしぶりだった、思っていたのと違う光景と、予想外の問いに少し困惑した。 「税金の無駄遣いですね、死刑囚同士殺し合いでもさせれば効率的でしょう」

2018-08-20 12:47:51
たこいちろう@天然記念物 @_TKKC_

「はは、一理ありますね、ですが法はそれを許しません」 「それをどうにかするのが背広組の仕事では?」 「ええ、仰る通りです、超法規的措置も、ですが」 超法規的措置、私には縁のないことだと思っていたが、この状況を見る限り私に言っているのだろう。

2018-08-20 13:03:50
たこいちろう@天然記念物 @_TKKC_

「あなたの犯罪歴と手口、そして経歴を確認させていただきました。そこから、貴女は艦娘になる素養があると、我々防衛省は判断し、貴女にその任を任せたい」 「死刑囚に軍属になれということですか」 「ええ、貴女の持つ頭脳と、その胆力さえあれば主戦力も夢ではない」

2018-08-20 13:15:15
たこいちろう@天然記念物 @_TKKC_

突拍子もない話で現実感がなかった、しかし私に選択肢はない、ここで断れば待つのは死あるのみだった。 「ついでに、殺しが容認される」 魅力的な言葉が、私の心に突き刺さる。殺しの正当化が、私の原動力と、この背広は見抜いていた。

2018-08-20 13:17:44
たこいちろう@天然記念物 @_TKKC_

「どのみち、私に拒否権はないのでしょう?」 「仰る通り、ここで断れば貴女は首を吊るだけです」 「わかりました、塀の中の退屈な生活に飽き飽きしていましたし、未来があるのならそちらの道に進むしかないでしょう」 背広の男は、邪悪に満ちた笑みを浮かべた

2018-08-20 13:20:24
たこいちろう@天然記念物 @_TKKC_

……… 「赤城さーん」 波打ち際に私は立っていた 心地よい潮風と、穏やかな波の音、そして、慕ってくれる子達 死ぬ定めだった命を拾われ、刃物を握っていた私の手には和弓 化け物とはいえ、正当化された殺しを手に入れた。 私は、一航戦「赤城」

2018-08-20 13:23:15

着想

たこいちろう@天然記念物 @_TKKC_

前々から構想にあったのと大渡教授の「赤城、実はやばい人説」あとは昔見たイラストを参考になんとか形にしてみた

2018-08-20 13:29:33