古田尚行『国語の授業の作り方』(文学通信)★授業の質を高めていくために、何が有効か。
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仕事の合間を縫って、古田尚行『国語の授業の作り方』(文学通信)を読んでます。これは教育実習生だけでなく、中学・高校「国語科」の現在を知る上でも、間違いなくオススメの1冊です。hanmoto.com/bd/isbn/978490…
2018-08-21 10:38:05もう10年以上も前のことですが、現職に赴任する際、中高教員免許のための「国語科教育法」を担当することになって、授業テキストを探し回ったのですが、自分の授業経験に引き比べても些か抽象的で、しっくり来るものがなかった。当時この本が出ていたら、間違いなく「教科書」に採用したと思います。
2018-08-21 10:38:05本書がすばらしいと思うのは、黒板とチョークを使ったオーソドックスな授業の組み立て方進め方が、ほんとうに丁寧に書き込まれていることです。教材研究の際には、発問の種別を意識して、なぜその発問をするかという理由を用意しておくべきこと。あくまで教材本文を出発点に授業を構成していくこと。
2018-08-21 10:38:05板書は1時間につき1枚を基本とすること。生徒の「わからない」を微分して捉え返す必要があること……。経験者なら肌身で知るように、授業はつねに一回的で、「こうすれば絶対うまくいく」というコツなどはありません。それは生徒が生身の人間だからであり、教員も身体と個性を持った存在だからです。
2018-08-21 10:38:06ICTを使えるひと、使える環境ならば、どんどん使うのはよいと思います。でもその前に、他ならぬ教員としての自分の個性に即した、自分自身の授業の「型」をしっかりと固めておくことで、さまざまな変化や応用を試すこともできるようになる。人文系研究者の方々にも、ぜひ読んで欲しい一冊です。
2018-08-21 10:39:41古田尚行『国語の授業の作り方』、新指導要領や入試制度改革対応のために読み始めた本のうちの一つだったけど、そういう近年の動向の話題には直接は触れてない代わりに近年の色々な分野の文献を参照しつつ普遍的に大切なことを考えようとする骨太の本で、これは教育実習に行くゼミ学生達にも勧めたい。
2018-08-21 15:30:13拙著『小説とは何か?』を参照しつつ、芥川龍之介「羅生門」を、語り手の物語行為を考える教材として扱うことも提案されています。僕自身、国語科の授業での具体的な応用が可能かどうかまでは考えていなかったのですが、こうして現場の先生に研究成果を活用して頂けるのはありがたいことですね。
2018-08-21 15:36:20最先端の研究成果があってそれを自らの知と経験と教える生徒の実態に基づいて変換して工夫して授業の中に取り入れて関心意欲も力も高めていくことができればそれに越したことはないでしょう。ただし往々にして生徒の実態を無視したものや強引すぎるものもあります。
2018-08-21 19:12:14これは従来は教育学部出身と文学部出身の教員との違いを示す例として出されていたような気がします。ただ、私はもうこういう違いを強調することに意味があまりないと思っていますし教育学部出身だからといって良いわけでもない。
2018-08-21 19:12:14また、現実的に国語科の教員は教育学部出身の人間だけで構成されているわけでもありません。大学で学ぶ教育学の考え方や思想に深いところで触れていかない可能性も高い。そしてそれは現場に出てから研修で身につくかもしれないし、身につかないかもしれないし、
2018-08-21 19:12:14身についたとしても意味が本当にあるかはよくわからない。いろいろな教育方法は提案され実践され、それぞれの学校に合ったものを選択していると思います。受験国語だってそういう実態を無視できないですし、そしてそれは無意味ではなく確かに生徒の何らかの力の育成につながっている。
2018-08-21 19:12:15私がいうことではないのですが、日本全国の学校が同じやり方や考え方になるとは思えません。一つの理想としてはあるかもしれませんが、それが望ましいことかどうかも考える必要はあると思います。もちろんそれを考え続けて提案していく必要はあります。
2018-08-21 19:12:15しかし、繰り返しますがいろんな現実や実態があり、それは文科省や中教審が述べたりいろんな人たちが提唱する方法では解決されえないことだって十分にある。ツイッター上では自分の理想とする教育と異なることを言っている人に対してとても冷ややかにしている人がわりと多くいます。
2018-08-21 19:12:16また自分と教育観を同じくする人たちと馴れ合って他者を排除していく人たちがいます。もちろん私も例外ではない。ただ、みんながみんな理想の教育を求めることはできないし、そうであるがゆえに苦しんでいる教員も数多くいることでしょう。
2018-08-21 19:12:16明確に述べておきますが、私が批判をする人は、生徒や教員を食い物にする人と、人を所有してしまう(しまっている)ことに無自覚な人と、非を認めず間違いをあらためずに他者よりも優位に立とうとする人です。私が本で述べたことで日本の国語教育が大きく変わるわけでもないし、変わる必要はないし、
2018-08-21 19:12:17変わったらそれは大変おかしなことです。しかし、どんな授業でもいろんな視点や方法があることを示して、それで使えそうであれば使っていけばいいし、アレンジしていけばいい。日本の国語教育を救うなんて意識高い系は勝手にやってくれたらいいし、
2018-08-21 19:12:17私は自分が所属する学校の授業作りを丁寧にやっていくことができればいいと思います。そんな人たちに「なにやってんの? 今そういう時代じゃないでしょ」と言うのは愚の骨頂ですよ。私は授業作りで悩んでいる人たちに向けていろんな提案をこれからもしていきたいと思っています。
2018-08-21 19:12:18そして私は授業の質を高めていくために授業者の振る舞い方と、テキスト分析の知識や方法を先人や今現在研究をしている人から学んで活かしていくことがとりあえず有効だと思っています。
2018-08-21 19:12:18前者については私の固有性を抽象化できるところとできないところがありますし、私ができることが他の人はできないこともあるし、その逆もある。後者については研究者に向けています。
2018-08-21 19:12:19なるべく教科書に載っている教材で「こういう使い方ができるのでは?」「こういうテキストと合わせてみてはいいのでは?」と声をあげてくれればそれでいいと思います。授業者の存在を消した方がいいと思っていた時期もありましたが、そんなことは不可能です。
2018-08-21 19:12:19授業者の痕跡を消すことはできません。しかし、それは残し方の問題です。学校を卒業した後、どのように私という他者が生徒たちに生まれて影響を与え続けていくのか、そのことを考えると恐ろしいことですが無自覚であるよりよっぽどいい。いや、無自覚の方がいいことだってあるでしょう。
2018-08-21 19:12:19一筋縄ではいきません。一本の筋は通したいけれど臨機応変に変えていく、そのための力は蓄えた方がいいし、いろんな人と共有した方がたぶんいい。それだけのことです。
2018-08-21 19:12:20