教え子エマに語る、日本の中学英語のウラ事情

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uroak_miku @Uroak_Miku

①正しい英語をどう学ぶか を主眼に書き綴ってきた。 ②正しくない英語をどうして押し付けられるのか はサブテーマだった。 しかしこの二年半で、②がメインテーマになっていった。

2018-08-25 03:04:36
uroak_miku @Uroak_Miku

① どういう風に正しくないのか ② 正しくないものをどうして押し付けられるのか ③ 正しいものを学ぶにはどうしたらいいのか

2018-08-25 03:07:03
uroak_miku @Uroak_Miku

「~ing」を教えるには、この画像を使うとよろしい。youtu.be/jqIkaNZemys

2018-08-25 03:10:25
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uroak_miku @Uroak_Miku

「I'm meeting with Emma.」(エマに会うことになっている) 「I'm running.」(今走っているところ) どちらも「~ ing」なのに、近未来と今をそれぞれ語っていますね。中学英語では後者しか教えないことになっています。そうしないと生徒の頭が混乱するから。

2018-08-25 03:13:01
uroak_miku @Uroak_Miku

この画像でいうと「会うことになっている」は、機関車がいったん停止して転車台がぐるーんと回って「エマに会う」方面で止まった状態のイメージ。機関車は止まっているけれど窯では火が燃えまくり状態。「よっしゃあこれよりエマに会いにいくぜ!」 youtu.be/jqIkaNZemys

2018-08-25 03:21:22
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uroak_miku @Uroak_Miku

「今走ってるぜ」は、転車台から動き出しているところ。先の「会うことになっている」は転車台の上で停止しているイメージで、「走ってるぜ」は動き出しているイメージ。静と動。物理的には異なるのだけど、窯のなかで火が燃え盛っている点で同一状態といえるから、ともに「~ ing」で表現されるわけ

2018-08-25 03:24:23
uroak_miku @Uroak_Miku

こうやってわかりやすいイメージを提示しながらなら、用法を複数同時に教えこむことは十分可能なのですが、学校英語ではそういうの事実上タブー視されている。それでこういう頭の痛くなる「ing」デビューが教科書を彩ってしまう。 pic.twitter.com/MVT0dKcf4x

2018-08-25 03:38:17
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uroak_miku @Uroak_Miku

これ、おそらく教師用マニュアルには「~ている」で全訳が載っているはず。全訳というか、教科書作成チームは日本語で元原稿をこしらえて、それを英語に直訳しているので、元原稿(日本語)を「全訳」として教師用アンチョコに掲載している。

2018-08-25 03:42:52
uroak_miku @Uroak_Miku

教科書を作っている側が「~ ing = ~ている」と公式化したうえで日本語原文→英語直訳したものを教科書に載せて、生徒にはそれを和訳させる(つまり日本語原文に戻させる)という、交流→直流→交流みたいなわけのわからないことをさせているわけです。

2018-08-25 03:45:54
uroak_miku @Uroak_Miku

中三で現在完了形を習う。あれで英語嫌いを決定的に増やしてしまうのはなぜか?「~ing=ている」のような一対一の公式化を、ここでとうとう逸脱するからです。習いませんでしたか「~以来ずっと…している」「~したことがある」「~してしまった」の三パターンだよと。これで生徒は大混乱。

2018-08-25 03:54:20
uroak_miku @Uroak_Miku

現在完了形で決定的に挫折してしまう理由がもうひとつあります。教科書に載ってる現在完了形の例文、大半は過去形で済んでしまうんですよ。このページもそう。「I've lived in Japan for a month.」だって。「I came to Japan one month ago.」(一か月前に日本に来た)つまり過去形で済むのにね。 pic.twitter.com/0zdgSWL8IT

2018-08-25 04:01:07
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uroak_miku @Uroak_Miku

このブラジル日系三世の男の子「I've loved Japanese anime since I was a child.」と現在完了形で自己紹介してるけど、「I grew up with Japanese cartoon shows.」(ぼくは日本のアニメ番組で育った)つまり過去形で済むはず。教科書チームがこの章では強引に現在完了形を使ってくる。

2018-08-25 04:04:18
uroak_miku @Uroak_Miku

be動詞→一般動詞→現在進行形→過去形→過去進行形→助動詞→接続詞→受動態→現在完了形 かなりはしょってますがこんな風に中学英語はカリキュラムができていて、そしてこの融通の効かない階段に、なんとか青春ストーリーをデコレーションしているのが中学の英語教科書です。 pic.twitter.com/9xyz0zFSdI

2018-08-25 04:11:11
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uroak_miku @Uroak_Miku

だからどう頑張っても英文が不自然になる。先の「日本のアニメを見て育った」もそう。しかし国の方針にそった題材を取り入れている場合は教科書検定で✖にされない。アニメうんぬんなら、クールジャパンの文脈に沿うということで、こんな英文でも検定を合格できてしまう。

2018-08-25 04:13:27
uroak_miku @Uroak_Miku

検定側も、教科書作成の困難をよくわかっていて、それで車いすバスケとかバリアフリーとかヒロシマ訪問とか子ども国際会議とかの、万人に共感される(=誰もツッコミができない)もっともらしい題材を挿んだものについては英文チェックを大甘にしてあげている…というのが私の推理。 pic.twitter.com/l7pEEmYow3

2018-08-25 04:19:56
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uroak_miku @Uroak_Miku

教科書出版社と教科書検定委員との、この奇妙な共犯関係がいつ頃から成り立ったのかはわからない。学習指導要領が厳しくなっていくなか、英語教科書の作成が困難になっていって、検定側もその事情をわかっていて、それで双方あうんの呼吸でこういう裏手口を編み出していった気がしますね。

2018-08-25 04:23:10
uroak_miku @Uroak_Miku

昭和時代にもうこういう共犯関係はまわっていた、とみます。歴代の各社の教科書を読んでいくとよくわかる。

2018-08-25 04:24:01
uroak_miku @Uroak_Miku

しかししわ寄せは生徒の側にくる。正しくない英文にさらされて育つわけだから、正しい英語が身に付くわけがないわけです。

2018-08-25 04:26:35
uroak_miku @Uroak_Miku

階段をひとつひとつステップアップしていく作りにすれば、どんな子も必ず英語が身についていく…敗戦日本が夢見た、民主主義の理念そのもの。しかしこの親心が、かえって掲載英文の硬直化を招いた。青春ストーリーをのっけないといけないぶん、英文はさらに硬直化した。

2018-08-25 04:29:34
uroak_miku @Uroak_Miku

どうして青春ストーリーをのっけないといけないのかというと、敗戦の衝撃で「今までの英語教育ではいけない、これからは子どもたちが伸び伸び育つよう、会話主体の教科書がいい」と叫ばれたのがきっかけだった。『ジャック&ベティ』がそうだった。 pic.twitter.com/AAdACoN65u

2018-08-25 04:34:49
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uroak_miku @Uroak_Miku

階段ステップアップ方式、会話主体の青春ストーリー、そして民主主義的な題材が取り入れられていること…これが中学英語の必須条件となった。 検定や指導要領の縛りが緩かった昭和20年代でさえ、この三つを同時に満たすのは困難だった。 そこに要領改訂、検定強化が重なった。

2018-08-25 04:37:52
uroak_miku @Uroak_Miku

空中分解必至となった。 そこでどうしたか?③の民主主義的題材をさらに積極的に顕示することで、つじつまをあわせる技が意識化されていった。

2018-08-25 04:39:20
uroak_miku @Uroak_Miku

ああそれから、戦前との決別のシンボルとして訳読の否定があったのですが、実際の授業で訳読否定なんて教師の負担が大きすぎるし生徒も困ってしまうため、「です・ます」による訳読が広まった。「です・ます」は民主的な敬語ということで敗戦日本では大いにもてはやされていた。

2018-08-25 04:41:47
uroak_miku @Uroak_Miku

民主主義を学ぶツールとして中学英語は事実上の必修化を果たし、そこに「です・ます」という、やはり民主的とされることば遣いが合流し、否定されるはずだった訳読式授業が延命を果たした。いわゆる「ジャック&ベティ語」ですね。「あなたは男の子ですかベティ」「いいえ私は女の子です」等の。

2018-08-25 04:44:21
uroak_miku @Uroak_Miku

こんな風にですね、敗戦後のいろいろな理想主義と、現実との埋めがたいギャップが、中学英語の世界で噴出したわけです。

2018-08-25 04:45:48