茂木健一郎(@kenichiromogi)さんの連続ツイート第2118回「電子書籍の寂しさと、紙の本の存在感」

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茂木健一郎 @kenichiromogi

連続ツイート第2118回をお届けします。文章はその場で即興で書いています。本日は、「紙の本」について。

2018-08-25 05:20:04
茂木健一郎 @kenichiromogi

仕事柄、電子書籍もたくさん読む。情報を効率よく得るためには、購入して、あっという間に手元のスマートフォンにダウンロードされる電子書籍の便利さはありがたい。一方、紙の本も捨てがたいと感じていて、その理由について今日は考えたい。

2018-08-25 05:21:44
茂木健一郎 @kenichiromogi

電子書籍と紙の本の違いというと、その「読み味」に注目されることが多い。紙の本は、手で持つ感触があるとか、紙のぬくもりだとか、そこに特徴があると。また、線を引きたり、付箋を張ったりといった便利さや、ページをめくるザッピングの速さに注目する人も多い。

2018-08-25 05:23:06
茂木健一郎 @kenichiromogi

電子書籍を本格的に使い始めて数年くらい。改めて思うのは、紙の本の最大の特徴は、それが仲立ちする「関係性」にあるということである。電子書籍でいちばん寂しいと感じるのは、自分が読んだ本を人にあげたり、貸したりできないこと。本を通したコミュニケーションのチャンネルが狭い。

2018-08-25 05:24:33
茂木健一郎 @kenichiromogi

紙の本は、直接あげたり貸したりというだけでなくて、もっと間接的で、偶然の関係も仲立ちする。テーブルの上に置いてあった本を、誰かがとりあげて読み始めるかもしれない。また、自分の手を離れた本が、まわりまわって、誰かの手にわたるかもしれない。

2018-08-25 05:25:45
茂木健一郎 @kenichiromogi

ペーパーバックの古本を買うと、そこに学校図書館の蔵書印があることが時々あって、つまり余分な蔵書を市場に出すシステムがあるらしい。そんな時には、その本があったアメリカの田舎の学校に思いを馳せることもある。紙の本でないと、不可能なできごとである。

2018-08-25 05:27:42
茂木健一郎 @kenichiromogi

紙の本には、「メッセージ・イン・ア・ボトル」のような側面がある。自分の持っている本が、まわりまわって、いつ誰の手にわたるか、わからない。確かめようもないけれども、そうなったらうれしい。紙の本の最大の魅力は、それがモノとして独立して世界の中に存在し、個人の生を超えるところにある。

2018-08-25 05:29:28
茂木健一郎 @kenichiromogi

電子書籍は便利だけれども、紙の本にくらべると、寂しさを感じる。この寂しさは案外本質的なもので、結局、紙の本が完全に廃れることはないのだと思う。装丁を含めた、モノとしての存在感の魅力はもちろんのことである。豪華本も、文庫本も、ソフトカバーも、モノとしての存在感は変わらない。

2018-08-25 05:31:25
茂木健一郎 @kenichiromogi

以上、連続ツイート第2118回「電子書籍の寂しさと、紙の本の存在感」をテーマに、7つのツイートをお届けしました。

2018-08-25 05:32:00