【書き起こし】「中央省庁などで雇用の水増しが続々明らかに?障害者雇用の現状と課題」永野仁美×長谷川珠子×西村正樹×荻上チキ▼8月23日放送分(TBSラジオ「荻上チキ・Session-22」22時~)#ss954
【書き起こし】「中央省庁などで雇用の水増しが続々明らかに。障害者雇用の現状と課題」永野仁美×長谷川珠子×西村正樹×荻上チキ▼8月23日放送分(TBSラジオ「荻上チキ・Session-22」22時~)#ss954 tbsradio.jp/286433 ※多少のケバ取りと整文あり これより連投。
2018-08-28 22:06:21南部広美さん:『中央省庁などで雇用率の水増しが続々明らかに。障害者雇用、その現状と課題とは』中央省庁などで、障害者の雇用率が水増しされていたことが相次いで発覚しています。水増しに関係する省庁は、総務省・法務省・環境省・防衛省など、きょうまでに10を超える見通しとなっていて、
2018-08-28 22:06:22また地方自治体などでも不適切なケースが明らかになっています。障害者の雇用を巡っては、1960年に国や自治体に対し一定の割合以上の障害者の雇用を求める、身体障害者雇用促進法が成立。当初は民間企業については努力目標とされましたが、その後76年の法改正で、
2018-08-28 22:06:22民間企業についても法的義務となりました。また98年には、身体障害者に加えて知的障害者の雇用も義務化され、さらに今年、双極性障害や統合失調症など、精神障害者も対象となりました。障害者雇用促進法では、労働者全体に占める障害者の割合を法定雇用率として定めていて、
2018-08-28 22:06:23特に国や自治体については規範となるよう、民間企業より高い割合に設定され、今年4月からその割合がさらに引き上げられていました。今夜は、障害者雇用を巡る経緯と現状を踏まえ、水増しはなぜ起きたのか、そして問題の本質はどこにあるのかを考えます。
2018-08-28 22:06:23荻上チキさん:規範となるべき国の数字が、調べる対象として信頼に足るものではなかったと。例えば障害者雇用の研究をしたり議論をする際に、今の状況がどうなっているのかという公表データは、非常に重要な参考資料として活用されていますけれども、そうしたデータが信頼できないということになれば、
2018-08-28 22:06:24これは障害者雇用の問題だけではなくて、行政全体の信頼の問題にも関わってくる根深い問題なのですが、きょうは障害者雇用の問題に絞って、どんな問題がここに潜んでいるのか、その背景なども考えていきたいと思います。
2018-08-28 22:06:24南:では、今夜のゲストをご紹介します。障害者雇用などについて詳しい、上智大学教授の永野仁美さんです。よろしくお願いいたします。 永野仁美さん:よろしくお願いいたします。 南:永野さんは『障害者の雇用と所得保障』の著書があり、また編著書で『詳説 障害者雇用促進法』もあります。
2018-08-28 22:06:25南:続きまして、福島大学準教授の長谷川珠子さんです。よろしくお願いいたします。 長谷川珠子さん:よろしくお願いします。 南:長谷川さんの専攻は労働法で、日本評論社より『障害者雇用と合理的配慮―日米の比較法研究』を出版されたばかりで、
2018-08-28 22:10:00また永野さんとの編著書『詳説 障害者雇用促進法』があります。 荻:ショウセツといってもノベルではなくて、「詳」しく「説」くと書く詳説ですね。 南:はい。耳で聞くと、ね。 荻:永野さんは普段どういったことを研究テーマにされているんですか?
2018-08-28 22:10:01永:私は日仏の障害者施策全般について研究しています。 荻:なるほど。特に比較などから見えてくるもので、注目するのはどんなものでしょうか? 永:さまざまありますけれども、やはり最近では障害者を巡る状況は日仏で共通するところもあり、同じような課題を抱えている中で、
2018-08-28 22:10:01それをどう解決していくのかということが、大きな研究のテーマになっていようかと思います。 荻:同じような課題があると、あの国はこう解決した、じゃあ自分のところはできないわけはないとか、いろいろな参考になるところもあれば、異なるからどうしようというアイデアを出さなくてはいけない。
2018-08-28 22:10:02いろいろな研究につながりますよね。 永:そうですね。比較法研究をすることで日本の問題を浮き彫りにしたり、あるいは海外の事情を調べる中で、日本に参考となることを探ったりといったことが可能になるかなと思っています。 荻:長谷川さんは普段の研究はどういった……。
2018-08-28 22:10:02長:私はアメリカの差別禁止法を研究してまいりまして、特に障害者に対する雇用差別を禁止した法律をアメリカは早くに作っておりましたので、1990年に制定したのですが、それについてずっと研究をしてまいりました。日本でも2013年の法改正でそれが導入されたので、
2018-08-28 22:18:40新しい日本の法律を理解していく中でアメリカでの経験というか、そこでの解釈というものをなるべく生かしていきたいなと思っています。 荻:やはりアメリカが一つの先端事例として、世界各国から注目されていた面もあるわけですよね。
2018-08-28 22:18:40長:そうですね。もちろんアメリカにもいろいろ課題はあるんですけれども、やはりすごく参考になると思います。 荻:普段からそうした障害を巡るさまざまな課題解決の方法なども研究されているお2人ですが、今回の水増し問題、捏造問題ですかね、こうした問題について永野さんはどのように
2018-08-28 22:18:41お感じになりましたか? 永:まず今回の報道に接して、こういうことが起きるのかと非常に驚きました。 長:驚きましたね。後、あきれるっていうのもあります。 荻:これはやっぱり研究者としても、データが信頼できないとなれば、何を公庁のデータとして引用していいのか分からなくなる、
2018-08-28 22:18:41という点も出てきますよね。 永:そうですね。はい。 荻:こうしたさまざまな問題がある背景については、どうしてこういったことが起こるのかと長谷川さんはお感じになりますか?
2018-08-28 22:18:42長:報道によりますと、40年以上前からこういったことが行われてきたということなので、当時から一体どういった背景があったのかがよくわからない、というのが実際のところです。ただ、公務員というのはなかなか採用が難しいというんですかね、試験をやってそれを突破した人を採用するということが
2018-08-28 22:18:42恐らく決まっていて、多様な採用の仕方がない中で、そこで障害者の方々を雇用しにくかったというのはあるとは思うんですが、だからといってまさかそんな水増しが起きているとは思っていなかったので、急にこういう報道があると、何でなんだろうと不思議でならないですね。
2018-08-28 22:18:42荻:そうですね。その不思議なポイ本当にント、つまり今回の件でしっかりと対応するためには、なぜ40年前からそういった数字の操作が行われてしまっていたのか、そして現在も行われていたので、そうしたことに関わっていた人たちがその数字をどういうふうに認識していたのか、
2018-08-28 22:18:43ここまでは行政の、そして政府の責任として明らかにしてほしいとは思います。きょうはですね、そもそもの障害者雇用について考えていきたいと思うんですけれども、この障害者雇用の「障害者」という一つのくくりというか雇用の枠組みは、どういった形で決まっていくんでしょうか?
2018-08-28 22:18:43永:まず障害者の範囲ですけれども、障害を持っている方と障害のない方が明確にくっきりと線で分けられるわけではなく、障害のある方ない方、そこはグラデーションになっています。でもそうした中で、どの方を障害者雇用の施策の対象にするかということを考えるときには、
2018-08-28 22:23:58どうしてもどこかで線引きはしなければならないということになります。現在はこの線引きを、主として障害者手帳に頼って行っているという現状があります。もちろん障害者手帳に頼って、障害者雇用政策の対象となる障害者を画することについての妥当性は問われていますけれども、
2018-08-28 22:23:59実務上の運用としては手帳を大前提としますよということになっています。そうした中で、今回大前提としている、そして民間企業には課している、手帳を前提として範囲を画しますよと決めていたところが、公的部分においてきちんと守られていなかったという点が大きな問題になっている
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