週刊 生存ファンタジー3T 第一週

生存ファンタジー3Tとは、3ツイートで語られる、生存を題材にしたファンタジー小説のことです。大体毎日更新し、一週間ごとにまとめるつもりです。なお、本シリーズは1ヶ月で終焉の予定です。 ※本作は一次創作です。 ※無断転掲載を固くお断りします。
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ぞろ目の八ことマスケッター(旧1d6) @hm1d6

投石器の丘 1 気がつくと、俺の左側には壁があった。数秒して投石器の石弾と分かった。そこからはみ出た潰れ損なった血まみれの手甲と右腕が、今朝一緒に飯を食った騎士の遺物だった。起き上がると、辺り一面石弾のお陰で迷路ができていた。味方は一人もいない。 #生存ファンタジー3T

2018-08-27 19:05:01
ぞろ目の八ことマスケッター(旧1d6) @hm1d6

2 俺達は、丘に据えられた投石器を破壊するために選抜された。投石器は一つしかないが、敵の錬金術師が徹底的に呪符を施し、無人でも雨霰と石弾を投げつけた。旋回式だから死角もない。魔法も効かない。唯一の救いは投石器を護衛する者が一人もいないことだけだ。 #生存ファンタジー3T

2018-08-27 19:10:36
ぞろ目の八ことマスケッター(旧1d6) @hm1d6

3 その時、死んだ馬が目に入った。皮を丁寧に剥ぎ取り丸一昼夜噛んでなめし、俺は馬になった。奴はただの馬を敵と認識できなかった。手持ちの道具で発射できないように壊し、そのまま丘を降りた時、一本の矢が俺の心臓を貫いた。馬肉でもないよりましだ、という声が聞こえた。 #生存ファンタジー3T

2018-08-27 19:26:12
ぞろ目の八ことマスケッター(旧1d6) @hm1d6

#生存ファンタジー3T とは、3ツイートで語られる生存を目指す人々のファンタジー小説です。

2018-08-27 19:27:57
ぞろ目の八ことマスケッター(旧1d6) @hm1d6

ヤブ蚊の森 1 三人いる仲間は、みんな地面の上で呻き、真っ青な顔でひどく寒がっていた。森の中でまさかの出来事だった。回復役の僧侶まで苦しんでいる。薬草も使い果たした。一日の内に、治った端からすぐ病気にかかってこうなった。幸い、森には病気以外に敵はいない。 #生存ファンタジー3T

2018-08-28 18:00:47
ぞろ目の八ことマスケッター(旧1d6) @hm1d6

2 そうなると、何故あたしだけ無事なんだろう。それを解き明かさないと脱出できない。あたしは女。二十歳前。仲間は男二人に女一人であたしと似たような年齢。武器や防具はばらばら。 保存食を食べているのだけは同じ 。……どれも些細な違いに思える。 #生存ファンタジー3T

2018-08-28 18:01:18
ぞろ目の八ことマスケッター(旧1d6) @hm1d6

3 頭を休めるために、あたしは香油のビンを出して顔に塗った。自分だけのささやかな息抜き。その時、あたしに近づきかかった蚊が逃げていった。これが!? あたしは苦しむ仲間にとどめを刺し、金目の品を全て奪った。こんな欲深バカどもとやっとおさらばできる。 #生存ファンタジー3T

2018-08-28 18:02:27
ぞろ目の八ことマスケッター(旧1d6) @hm1d6

絶壁の花 1 道のついてない険しい崖のてっぺんに、花が一輪咲いている。八重咲きで、真夏でも冷ややかに青く、握り拳くらいの大きさをしていて一年中枯れもしおれもしない。それ以外のことは誰も知らない。手段がどうあれ、花に近づいただけで不測の事態が起こる。 #生存ファンタジー3T

2018-08-29 20:27:28
ぞろ目の八ことマスケッター(旧1d6) @hm1d6

2 巨大な鳥に飲み込まれたり、落雷に打たれたり。だが、私は違う。崖を下から見上げ、私は連れてきたゴーレムに命じた。ゴーレムはたちまち崖を削り始め、リンゴの皮を剥くように道を作った。そうして頂上まで至り、ゴーレムは花の周りの土を掘った。 #生存ファンタジー3T

2018-08-29 20:27:59
ぞろ目の八ことマスケッター(旧1d6) @hm1d6

3 花ではなく土を手にするのがミソだ。降りてきたゴーレムのもたらした花を眺める前に、突然地面が盛り上がった。私とゴーレムは、新たにできた崖の中で人柱になってしまった。何人もの先達と目が合った。頭から根が伸びて、花に向かっていた。私の頭にも……。 #生存ファンタジー3T

2018-08-29 20:28:30
ぞろ目の八ことマスケッター(旧1d6) @hm1d6

路上の虫 1 街道を巨大な虫が塞いでいる。大人の牛くらいの図体で、脚のないコガネムシのような姿だ。生きているらしく、時々頭がぴくぴく動く。驚くより頭にきた。私は近くの街から商談のために何台もの荷馬車を連れてきた。 早く次の街にいかないと破談になる。 #生存ファンタジー3T

2018-08-30 19:35:18
ぞろ目の八ことマスケッター(旧1d6) @hm1d6

2 道の両脇は薮になっていて、切り開いて進む時間はない。つまり虫をどかせるしかない。それぞれの荷馬車には御者と護衛がいる。その意味では難しい話ではない。問題は、虫がなにかしら有害な生き物だとして、御者や護衛にケガだの病気だのを負わせる可能性だ。   #生存ファンタジー3T

2018-08-30 19:36:11
ぞろ目の八ことマスケッター(旧1d6) @hm1d6

3 誰もこんな虫など知らないから、じかにどかせねばならない。腹をくくって護衛に作業を命じた。意外にもあっさり終わった。次の街で無事に商談もすんだ。そして、あの虫が腹の中に大量の宝石を溜め込んでいると知った。慌てて引き返したが、どこにもその姿はなかった。 #生存ファンタジー3T

2018-08-30 19:36:44
ぞろ目の八ことマスケッター(旧1d6) @hm1d6

流砂の部屋 1 踏み込んだ一室は罠だった。全ての扉はびくともしなくなり、床全体が突然流砂になった。のっぺりした壁と天井が冷ややかにこちらを見据えている。くるぶしが埋まるまでに、辛うじて上半身だけ鎧を外した。身体が軽くなり、ささやかな足場もできた。  #生存ファンタジー3T

2018-08-31 22:01:10
ぞろ目の八ことマスケッター(旧1d6) @hm1d6

2 脱いだ鎧の上にどうにか上がったものの、このままだと結局は鎧ごと沈んでしまう。せめて、もっと確かな足場が欲しい。無数の怪物にでも囲まれた方がまだましだ。少なくとも剣を振るえる。そんな愚痴っぽい想像を払い捨てようとした時、突如閃いた。  #生存ファンタジー3T

2018-08-31 22:03:39
ぞろ目の八ことマスケッター(旧1d6) @hm1d6

3 まず鎧の下半身を外して部屋の隅に投げた。二つ目の足場だ。そこに飛び移り、剣を抜いて壁に突き立てた。つまり、壁同士が交わる角と剣で三角形をこしらえた。剣の上に飛び乗ると、鎧が沈み、砂が消えて扉がひとりでに開いた。では、鎧代を稼ぎ直そう。  #生存ファンタジー3T

2018-08-31 22:04:02
ぞろ目の八ことマスケッター(旧1d6) @hm1d6

死後の髭 1 邪神崇拝で悪名高い魔法使いが亡くなった。孤独死だった。本人は、これあるを予想して自分が死ぬと自動的に家ごと燃やすよう魔法をかけていた。元々手近な集落のない一軒家であり、 手筈通りに魔法が発動された。死体は大部分が灰になった。  #生存ファンタジー3T

2018-09-02 17:19:02
ぞろ目の八ことマスケッター(旧1d6) @hm1d6

2 しかし、唯一顔の下半分のみが焼け残った。そこへ、煙を見つけた数名の冒険者が現れ、顔を拾った。一同はなにか値打ちがあると考え、防腐剤代わりのワインに顔を漬けた。数日後、鑑定屋に持ち込むと、下顎に髭が生えていた。驚愕する一同に顔は告げた。  #生存ファンタジー3T

2018-09-02 17:19:59
ぞろ目の八ことマスケッター(旧1d6) @hm1d6

3 呪いをかけられたくなければ今から教える場所に自分を運べと。そうして一同は顔の下半分が欠けた邪神像を祭る祠に現れた。持参した顔をあてがうと、邪神像は肉体を得て蘇った。一同が最初の生け贄となった。 #生存ファンタジー3T

2018-09-02 17:20:19
ぞろ目の八ことマスケッター(旧1d6) @hm1d6

少女の蜂蜜 1 街外れのあばら家に、いつからか一人の少女が住み着いていた。十歳くらいだろうか。身寄りもなさそうだし気にする者もいたが、余計な世話を焼こうという酔狂は現れなかった。少女はいつも、どこからか蜂蜜を仕入れては自分で飲んでいた。  #生存ファンタジー3T

2018-09-02 17:21:11
ぞろ目の八ことマスケッター(旧1d6) @hm1d6

2 そんなある日、あばら家にミツバチの群れがやってきた。少女は蜂蜜を小皿に入れてふるまった。ミツバチは蜂蜜をなめ、次々に倒れて死んだ。 ミツバチの死体を数える少女の元に、一人の魔女が現れた。魔女はミツバチを引き取り、まとめて小瓶に入れた。  #生存ファンタジー3T

2018-09-02 17:21:30
ぞろ目の八ことマスケッター(旧1d6) @hm1d6

3 良く見ると、ミツバチの頭は人間のそれだった。少女はうなずき、ポケットから高価な宝石を出して魔女に与えた。遺産騒動に巻き込まれて行方不明になった少女の噂が街に流れた時、少女はあばら家から消えており、それからは二度と姿を現さなかった。 #生存ファンタジー3T

2018-09-02 17:21:49