フォ・フーム・ザ・ベル・トールズ #4

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤープラスより【フォ・フーム・ザ・ベル・トールズ】#4

2018-09-06 21:47:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(あらすじ:テマリの三角関数とヤモトのイアイドー奥義が原子分解レーザーを弾き返し、見張り塔のニンジャは爆発四散!……だがまだ終わりではない。鳴り響く警報!収容施設に閉じ込められたミラたちを助け出すため、ヤモトはカタナを掲げ、採石場にいた三百人のセーラー服女子高生を率いて進む!)

2018-09-06 21:53:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「みんな、こんな場所にいたらダメだ!」ヤモトは見張り塔を駆け上り、カタナを掲げて叫んだ!「力を貸して!中に残っている人たちを助け出すんだ!」いまや彼女はニンジャの本性を露わにしていた。その瞳、そのカタナは、神々しき桜色の光を放ち、首の周りには超自然のマフラースカーフが現出する。1

2018-09-06 21:55:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

あれは女子高生。いや、違う。女子高生の姿をとった、何かもっと強く、気高く、神々しいものだ。女子高生たちは皆、戦うヤモトの姿に胸を打たれ、勇気をもらい、目を見開いて涙を流した。そして拳を握って叫び、ヤモトに続いて収容施設へと押し寄せたのだ……! 2

2018-09-06 21:58:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

緊急ロック隔壁前では、クローンヤクザが横一列に並びマシンガンを構える。「「「モドレッコラーーーッ!」」」だが女子高生たちは止まらない。クローンヤクザたちが遂に引き金を引かんとする直前……彼らの視界外から突如、高速飛行するオリガミの群れが出現した! 3

2018-09-06 22:03:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

高く跳躍したヤモトが指差し、命じる!「行けーーッ!」オリガミ・ミサイルが一斉に降り注ぐ! KBAM!KBAM!KBAM!KBAM!KBAM!KBAM!「「「グワーーーッ!」」」連続爆発!クローンヤクザ部隊もろともコンクリート隔壁を破壊し、突破口を穿つ!「水と食料を奪うんだ!急いで!」ヤモトが叫ぶ! 4

2018-09-06 22:06:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

その瓦礫を踏み越えながら女子高生たちが施設内へと雪崩れ込み、封鎖されたオリガミ作業所のドアを蹴破って仲間たちを助け、食堂からは水ボトルと保存食を略奪してゆく!「逃げよう!みんな、ここから逃げよう!」テマリも脱出を呼びかけながら必死に叫び、施設内を走り回った。 5

2018-09-06 22:11:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」ヤモトのカラテシャウトが響く。彼女は施設内のクローンヤクザを次々に蹴散らしてゆく。「「「ザッケンナコラーーーッ!」」」BRATATATATA!ヤモトを狙い、銃弾の雨が浴びせられる!だがヤモトは止まらない。なお速く!振り回すカタナで銃弾を切り捨てながら、廊下の壁を走った! 6

2018-09-06 22:15:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」ヤモトの革靴は重力すら無視するように、壁にぴたりとグリップする。右足が重力に囚われる前に左足、さらに右足。カラテが高まる。彼女は天井へ、そして反対側の壁へ。マフラースカーフの残光で螺旋軌道を描きながら、目にも留まらぬ速さで廊下を駆け抜け、桜色のカタナを閃かせた! 7

2018-09-06 22:19:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」「「「アバババババーーーーッ!」」」ヤモトがクローンヤクザの背後へ到達しザンシンすると、敵は一斉に緑色の血を吹き出し倒れた!「急いで!食料は最低限でいい!水を確保したら、全員の避難を!」ガゴンプシュー!ヤモトは緊急ロック解除ボタンを叩きながら叫んだ! 8

2018-09-06 22:23:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ガゴンプシュー!ロックドアが次々開く!「「「ヤッターーーー!」」」オリガミ労働に従事していた屋内女子高生たちは、仲間に連れられ、一斉に外に飛び出した。脱出路の近くには、足を挫き逃げ遅れたミラがいた。それを見つけたテマリは、反射的に駆け寄った。そうせずにはいられなかったからだ。 9

2018-09-06 22:28:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ミラ=サン、早く!」「テマリ=サン! どうして!? ……私、なんかに……」ミラは一瞬躊躇し、差し伸べられた手を恐れた。だがテマリは彼女に強く微笑みかけた。「最初はミラ=サンが私を助けてくれた。現実の重みを教えてくれた。だから今度は、私があなたを助けるよ。一緒に出よう!」 10

2018-09-06 22:32:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「うん」ミラは頬を赤らめ、手を握り、立ち上がった。2人は他の女子高生とともに必死で走り、トーチカ状巨大施設から、荒野の採石場へと無事に逃げ出した。ヤモトは未だ施設内を駆け、クローンヤクザを皆殺しにし、脱出が遅れていた女子高生たちを最後の一人まで助け出していった。 11

2018-09-06 22:37:17
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ゴーン、ゴーン、ゴーン、ゴーン……。終業時間を告げる鐘と繁華街の呼び込みを連想させる退廃的な電子合成音楽が、無人の女子高生収容所に鳴り響く。もはや誰がために鳴るのかも知らず。 13

2018-09-06 22:42:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ゴーン、ゴーン、ゴーン……ZGOOOOOOOOM……KA--DOOOOOOOOOOOOOOM!七度目の鐘とともに、あたかも自らの存在の無意味さに気づきセプクするかの如く、女子高生収容施設は内側に向かって崩れ落ちてゆき……その直後、破滅的な大爆発が起こった。 14

2018-09-06 22:49:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

もう二度とあそこへ戻ることはない。採石場へと脱出を終えていた数百名の女子高生たちは、爆炎を背に、キャニオンの荒野を決然と歩んだ。吹き寄せる爆風で髪やセーラー服が乱れても、決して振り返りはしない。水を飲み、保存食をかじり、地平線に太陽が沈んでもなお、彼女らは粛々と歩き続けた。 15

2018-09-06 22:53:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

そのエクソダスめいた神話的光景において先頭を歩むのは、桜色のカタナを灯火のごとく掲げるヤモト・コキ。その横にはテマリ。そしてテマリに肩を借りて歩くミラがいた。女子高生たちは皆、汗を拭い、言葉少なに励まし合い、長い列を作って、ネオサイタマの外縁部へと続く果てなき荒野を歩いた。 16

2018-09-06 22:56:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

皮肉にも、女子高生収容所での労働と健康的な食事、そして規則正しい生活が、この過酷な徒歩の旅を可能にせしめたのだ。……無論この先、ネオサイタマに戻った自分たちが、現役女子高生に復帰できるかどうかは解らない。 17

2018-09-06 22:59:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……社会における自らの居場所について、この収容期間がもたらしたごく短い老いと失敗について、彼女らは毎夜のように恐怖を抱いていた。だが今の彼女らにとっては、あの虚無の墓へと戻るくらいならば、この程度の苦しみや恐れなど、どうということはなかった。女子高生たちは歩き続ける。 18

2018-09-06 23:00:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

完全に陽が落ちると、野盗団を警戒するヤモトは、オリガミを折るよう女子高生たちに呼びかけた。女子高生たちがその場に座って折鶴を折ると、オリガミは幽かな桜色の燐光を放ち、ゆっくりと浮かび上がった。そして彼女らの周囲を守るように浮遊し、付き添った。闇を照らす無数のチョウチンの如く。 19

2018-09-06 23:05:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

実際何度か、改造バギーに乗った野盗団の斥候が彼女らの列へと接近してきたが、ヤモトはオリガミ・ミサイルを発射し、これを払いのけて、女子高生たちを歩かせ続けた。超自然のオリガミによって攻撃を受けた野盗団は恐れをなし、もう二度と脱走女子高生のエクソダス列には近づこうとしなかった。 20

2018-09-06 23:09:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

それを除けば、静かな夜だった。荒野のまったき闇と、ヤモトの奥ゆかしいサクラ・エンハンスメント・ジツの光が、長い強制収容所暮らしで荒みきった女子高生たちの心を癒していった。それは暗黒の死の世界から現実へと渡り戻る女子高生たちの心を癒すための、超自然のセラピーめいていた。 21

2018-09-06 23:13:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

どれ程歩いただろう。テマリが2つ目の丘を登りきり、後ろを振り返ると、桜色のチョウチンの群れが、視界いっぱいに広がっていた。テマリとミラはそれを見て、息を飲んだ。 22

2018-09-06 23:15:46