関東大震災での朝鮮人虐殺のひとつ烏山事件と漫画「日本沈没」

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一色登希彦 @ishikitokihiko

三重県の関宿 飲食店モーティヴ @douze_coffee 店主 2011年まで東京で漫画を描いていました(「日本沈没」「モーティヴ」「ダービージョッキー」等) 移住後に三重県で「道瀬食堂」→徳島県で「すずみ食堂」→また三重県 オートバイに乗ります

instagram.com/ishikitokihiko…

一色登希彦 @ishikitokihiko

震災の混乱で朝鮮人をはじめ数多くの人が各地で虐殺された。下の島田さんの昔のツイはそのひとつ「烏山事件」と呼ばれるものだけれど、拙版『日本沈没』6巻でひとりの青年が死に至る話は、この烏山の出来事をモチーフにして描いた。(このツイ自体にも「虐殺はウソ」というクソ返信がぶら下がってる) twitter.com/Shimatorax/sta…

2018-09-02 13:02:41
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ぼくの母親は現在の世田谷区烏山で生まれ育ったのだが、関東大震災時に朝鮮人を殺した人間を知っていた。徳富蘆花の『みみずのたはごと』にも出てくる虐殺だ。母親が生前「あそこのおじさんは朝鮮人を殺したんだよ」と言ったのを覚えている。「あそこ」がどこかは訊きそこなった。遥か昔の話ではない。

2013-09-01 01:01:06
一色登希彦 @ishikitokihiko

烏山事件を僕が知ってモチーフにして描いた、その随分あとに出た加藤直樹さんの『九月、東京の路上で』に、烏山の詳細も載っている。どこを拾い読んでもひどい話しかないのだけど、「烏山神社に鎮魂として植樹された13本の木」というのがあって、著者はそれを元に最初は「死者13名」と考えた。が、

2018-09-02 13:11:59
一色登希彦 @ishikitokihiko

が、よく調べたら殺された朝鮮人の死者は1名らしい。さらに調べたら、虐殺の廉で起訴された地元の人間が12人(ほどなく保釈)居て、その12人の「ご苦労」を労う、罪滅ぼし、ケガレ払いの為に12本の木が植えられた(「死んだ」犠牲者の為にも1本植えられた)ので、13本の植樹がされたそうな。

2018-09-02 13:21:07
一色登希彦 @ishikitokihiko

千歳烏山の地誌には当時を知る老人の言葉として「この地から不幸にも12人が起訴されたが、援助の手を差し伸べ続けた結果、全員が戻ってきたことは喜びだ。記念に12本の植樹をした。」「誰がどう殺した等と2度と問うてはならない。全ては震災と行政の怠慢と情報不足の不幸に過ぎないのだ」(要約)と

2018-09-02 13:27:34
一色登希彦 @ishikitokihiko

この社会の、「間違っていても(犯罪者だとしても)身内をかばう」、典型中の典型。僕も、本に書かれたこの烏山事件の空気感を、その何年も前に現場を歩いて経験した。写真はその当時に撮った千歳烏山の「虐殺の現場」。すぐ近くの、その植樹された烏山神社で、ひとりのおばあちゃんに会った。 pic.twitter.com/Ex2pxxg5ZA

2018-09-02 13:34:22
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一色登希彦 @ishikitokihiko

境内の碑や説明文を眺める様子が珍しかったのか、おばあちゃんは僕に話しかけてきて、僕は「昔、この辺で外国の人が殺されたって聞いたんですけど(←湾曲表現)」と尋ねた。するとおばあちゃん「亡くなったかどうか、大けがしたとも聞いたんだけど、とにかく此処で昔、悲しい出来事があってね」と。

2018-09-02 13:41:21
一色登希彦 @ishikitokihiko

「それで、2度とこんなことがありませんように、という願いを込めて、この神社に木を植えたらしいのよ」と。おばあちゃんに何の罪の意識も無いのがわかる。「2度とこんなことをしません」ではなく「2度とこんなことがありませんように」なのだ。自分の悪行が、自発行為ではなく「災い」に還される。

2018-09-02 13:47:53
一色登希彦 @ishikitokihiko

いや。「罪の意識が無い」というのはウソで、あのおばあちゃんには無意識レベルで罪の意識がある(あった)と思う。「外国の人が殺されたって聞いたんだけど」という僕の問いに彼女はビビッドに反応した。「亡くなったかはわからない」と強めに断った後で、知っていることを饒舌に話してくれたもの。

2018-09-02 13:52:54
一色登希彦 @ishikitokihiko

そこには「話したくてたまらない」「聞いて欲しい」という感情を感じた。田舎の噂話、井戸端会議、王様の耳はロバの耳…の井戸。自分の背負っている「罪」「嫌なこと」を、無関係な他人に話して穢れを晴らしたいという感情を感じた。その様子に触れたことで、僕は『沈没』で「殺される青年」を描いた。

2018-09-02 13:57:37
一色登希彦 @ishikitokihiko

千歳烏山で殺された朝鮮人は、当時日本に強制連行されたひとりで、その時は労働者として動員されて、被災した京王線笹塚駅の修復を命じられて、大勢で現場に向かう途中だった。先の写真の場所が川の石橋だったのだけど、そこで乗ってた車がスタックしている所を、地元自警団に因縁をつけられ殺された。

2018-09-02 14:03:31
一色登希彦 @ishikitokihiko

追記します。殺害された朝鮮人の記述に関して「当時日本に強制連行された」と書いたのですが、 twitter.com/ishikitokihiko… 「強制連行」の言葉が適当かどうかの確認が不足しています。スレッド全体の大意が大きく歪められて受け止められる様子であれば、訂正削除等対応しようと思います。ご指摘感謝。

2018-09-03 21:07:00
一色登希彦 @ishikitokihiko

僕は、烏山神社のその椎の木を見ておばあちゃんの話を聞いて、大橋場の跡(殺戮現場跡)に立ったその時に、「あの時あの場所」に繋がってしまった。僕は「何の罪も無い朝鮮人を熱狂してリンチして殺した12人のひとり」になったし、「異国で意味もわからないまま殺された”洪其白(ホンギベク)”」だった。

2018-09-02 14:14:27
一色登希彦 @ishikitokihiko

東京の惨劇を描いた『沈没』6巻で描いた場所は、全て自分の足で歩いて取材した。連載のさなかに、よくもあれだけ歩いたと思う。杉並から中野新宿に至る戦前からの木造建築住宅街を歩いて全部炎で焼き尽くしたし、その果ての東京都庁を「カマド」に見立てて関東大震災でも生じた火災旋風を再現した。

2018-09-02 14:21:57
一色登希彦 @ishikitokihiko

伊勢丹らしき百貨店で被災して帰宅困難者になる女の子、それを助ける通りがかりの青年と共に、山手通りを下り、目黒川を渡り、碑文谷の自宅に送り届けた後に自転車で故郷を目指し北上する途中で、通りがかった烏山で殺され埋められた。そのルートを、全部歩いて見て経験して、それを描いただけだった。

2018-09-02 14:28:25
一色登希彦 @ishikitokihiko

時間の向こうや、今いる場所の向こうだと思っていることは、実は全てがビックリするくらいに地続きだ。私たちはそれを忘れている。身近で直近のはずの多くの記憶を失ってしまっている。何度も何度も繰り返すしかないのだけど、私たちは、忘れてはならない。忘れるから加害者のくせに被害者ヅラをする。

2018-09-02 14:36:00
一色登希彦 @ishikitokihiko

もしも、興味と、486円をお持ちだったら、第6巻だけでも読んでやっておくんなさい。もう少しだけ、読むことを求めているけどまだ出会ってくれていない人が居るように思う。/日本沈没 6巻 一色 登希彦 amazon.co.jp/dp/B00XP23EZI/… @amazonJPさんから

2018-09-02 14:53:23
日本沈没 6巻

一色 登希彦