掌小説語り~自作つぃのべる集~41

自作つぃのべるのまとめです。 2016年9月分。
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リュカ @ryuka511

ぼんやりと煙管を吹かす。立ち上る紫煙が冬の空へ漂って行った。誰の影になるのか知らないが、主を呑み込むような強い影は作っていないつもりだ。影は物体がそこに存在する事を証明するもの。影の無い私が他者の影を作る。その矛盾を考えないように、ただぼんやりと煙管を吹かす。 #twnovel

2016-09-02 00:17:41
リュカ @ryuka511

あの頃私は正義と信じたものの為に戦いました。多くの命を奪った末に、信じたものは間違いだったと気付きました。贖罪すべく奉仕活動をしています。私は果たして許されるでしょうか。多くの人が私を憎んでいます。許しを求める事も許されない程、私の罪は重いのだと思い知りました。 #twnovel

2016-09-02 23:47:31
リュカ @ryuka511

ここにはたくさんの魂の残骸が漂っている。主にヒトのものだ。闇の中で儚く煌めいている。私はそれらをたくさんたくさん繋いで、新しい魂を生み出す。穢れを落とし形を整え、そっと此岸へ流す。悩んでも間違っても、存分に生きて。決して、また魂がここへ流れ着く事のないように。 #twnovel

2016-09-04 00:23:42
リュカ @ryuka511

王女は魔女の呪いで魔物に変えられた王子を見舞う。隔離された王子の声を聞き王女は部屋に飛び込んだ。「愛せないなら殺せと聞こえたので」自分の胸に短剣の切っ先をあてた。「二度とそのような事を仰らないで。呪いは私が解いてみせます。例え解けなくとも、私は貴方を愛します」 #twnovel

2016-09-05 00:35:24
リュカ @ryuka511

最初の瞬間は、生を得た絶望を抱きながら。光は眩しすぎ希望は煩すぎ幸せは遠すぎた。それでも生を捨てずにいたのは、あなたがいたから。厭う光の中のあなたに、届かないと知りながら焦がれた。最後の瞬間は、あなたを思いながら。ありがとう。あなたには意味が解らないだろうけど。 #twnovel

2016-09-06 00:11:29
リュカ @ryuka511

「今更、俺を愛しているとは笑わせてくれる」黒く染まった翼が怒りに震える。誰も自分を愛してはくれなかった。目の前の2人はその最たるものだ。幸福の絶頂から突き落とされたあの日、彼の運命は変わった。「でも私達は」開かれた口元に剣を突き付ける。裏切りを前に、愛は響かない #twnovel

2016-09-07 00:26:37
リュカ @ryuka511

理不尽な運命を負わされた貴方を守るためならば、私など死んでもいいと思っていた。だが、魔王の渾身の一撃から貴方を庇って、貴方の絶叫を聞いて、それは間違いだと気付いた。治癒術より魔王にとどめを。そう言おうとして、貴方の泣き顔に躊躇う。そうだね、救った世界を共に行こう #twnovel

2016-09-07 23:25:02
リュカ @ryuka511

政略結婚で嫁いだ相手は、親子ほど歳の離れた人だった。いい人だが、それ以上の感情は抱けない。私の困惑を感じとったのだろう、「無理に愛さなくて良いんだよ」と微笑んでくれた。ほっとしていると彼は綺麗に微笑んだまま囁く。「貴方には他に行く所など無いのだから、愛しい人」 #twnovel

2016-09-09 00:12:38
リュカ @ryuka511

魔王を封じるのみで、その息の根を止める事は先代の勇者にも出来なかった。代々、勇者の生命をもって魔王を封じ、束の間の平和が訪れる。そして新たな勇者が蘇った魔王と対峙した。封印が解けるまでの僅かな平和のための犠牲。勇者はふと笑う。「死ねないお前もある意味犠牲者だな」 #twnovel

2016-09-10 00:01:09
リュカ @ryuka511

「わかった」君の別れ話を脳内で噛み砕いて吐き出した。君の心が離れてると薄々察してはいた。それでも君を失いたくなかった。泣きたいのは僕なのに、君は謝りながら泣く。ずるいね。それでも君を憎めない愚かな僕は、君が泣き止むのを待たず立ち去る。綺麗なさよならは出来ないから #twnovel

2016-09-11 00:23:52
リュカ @ryuka511

「光の船は定員数に達しました。出発までしばしお待ち下さい」アナウンスに安堵し窓から外を見る。闇に飲まれ滅びゆく世界。自分は助かったのだと改めて感じる。シートに身を沈め出発を待つ内に眠りに落ちていた。「お待たせ致しました。これより安らぎの終焉へ向けて出発致します」 #twnovel

2016-09-11 23:33:20
リュカ @ryuka511

神はこの世界を捨て、新たな世界を創造し始めた。何と無責任な。残された者達はどうすればいい。私の問いに神は面倒くさそうに振り返った。「勝手に増殖したのはそっちだろう。私の知った事ではない。言っておくが、私が愛した者は私が生み出した最初の生命のみ。他の者など知らん」 #twnovel

2016-09-12 23:35:22
リュカ @ryuka511

私が助かる道は二つ。愛する王子と結ばれて本当の人間になるか、王子を殺して人魚に戻るか。だけど王子は隣国の王女と婚約している。破棄すれば戦になるだろう。私か王子の死は避けられない。短剣を握り王子の寝室へ。ひとおもいに心臓を突く。愛しています、王子。共に逝きましょう #twnovel

2016-09-13 23:21:33
リュカ @ryuka511

暴漢から助けた女性に名を問われた。「名乗る程の者じゃありません」と告げ踵を返す。名前とは、誰かに愛された者か、誰かに所有される者が持つもの。どちらでもない私に名など無く、また必要性も感じなかった。ずっとそうして生きてきたが、今初めて、それを淋しいと思った。 #twnvday

2016-09-15 00:11:35
リュカ @ryuka511

隣国へ嫁ぐ姫様を乗せた馬車が国境沿いの街に着きました。馬車から姫様は降りようとなさいません。そっと声をおかけすると「今行くわ」と、か細い声が返ってきた時、私は見てしまったのです。月光に照らされた姫様の頬をつたう涙。姫様は何を願い今夜の月を見ておられたのでしょうか #tw月の友15

2016-09-16 00:09:06
リュカ @ryuka511

過去へ行ったり少し先の未来へ行ったり、何度も時空を駆けた。けど君は諦め顔で静かに笑う。どう足掻いても、結末は変わらないの。私は死んで、貴方は壊れる。誰も運命には逆らえないのよ。君の肩を揺さぶる。君はそれでいいの? 運命を変えるより、君の諦めを取り除く事が先だ。 #twnovel

2016-09-17 00:58:15
リュカ @ryuka511

庭に咲く沢山のバラ、その一つ一つの名前をあの人は教えてくれた。名前を知れば、バラでしかなかった花は全く違う花になる。お嬢様も同じですよと微笑んだ目尻の皺を今も思い出す。家柄、しきたり。私でなくとも構わないと思ってた。今なら解る。この家の主は私でなければならないと #twnovel

2016-09-17 23:56:56
リュカ @ryuka511

手を尽くしても荒れていく王国に疲れ果てた王は世界の安定を願った。願いは叶い、王国から全ての問題が取り除かれた。安堵した王はやがて気付く。自分が居なくても王国は安定しているが、王である事は辞められない。安定を手にした対価は、存在意義を見失った中で狂いそうな程の退屈 #twnovel

2016-09-19 01:13:59
リュカ @ryuka511

お嬢様は晴れた日の庭で読書をなさるのがお好きでした。今日も木陰から白いドレスの裾が揺れ動くのが見えます。午後のティータイムにはクッキーをご用意しましょう。お嬢様の邪魔をしないようそっと紅茶とクッキーを並べます。 #twnovel お嬢様はここにいらっしゃいます。天国などではなく。

2016-09-19 23:56:38
リュカ @ryuka511

彼はいつも三揃いのスーツ姿で扉の前に立っていた。白いものが混じる口髭で微笑む彼に安堵する。今起きている恐ろしい事態は夢なのだ、彼が悪夢の出口なのだ。優雅な仕草で開けてくれた扉を抜ける。彼は決してこちらへは来ない。目が覚めれば忘れてしまう、悪夢の番人。あの人は誰? #twnovel

2016-09-20 23:46:03
リュカ @ryuka511

僕が生まれる時、魔王を討つ宿命の子だと予言されたらしい。それを知った魔王は僕を探し出し呪いをかけた。やがて僕は魔王討伐の旅に出る。魔王城を前に胸の小さな疼きに顔をしかめた。魔王を倒せば、もっと強大な存在が目醒める。魔王を倒せる程に成長した僕が、次代の魔王として。 #twnovel

2016-09-22 00:38:26
リュカ @ryuka511

「助けて頂きありがとうございました」旅の剣士に礼を言うと「助けたつもりなんてない」と剣士は目を伏せ背を向けた。「私の目の前で人が死ぬのはもう見たくなかった、それだけの事だ。礼を言う暇があるなら、生きろ」その悲しげな声に言葉を飲み込む。貴方も、どうか生きて下さい。 #twnovel

2016-09-23 00:27:35
リュカ @ryuka511

幸福の値段を決めていた。小さな幸福にはささやかな、大きな幸福にはそれなりの対価が必要だ。それなら金持ちだけが幸福だって?対価が金銭だとは言ってない。欲張れば身を滅ぼし、卑屈過ぎても同様。その末路がこれだ。もう幸福にも不幸にも価値は無い。 #世界もう滅ぼしたい協会 #twnovel

2016-09-24 01:35:26
リュカ @ryuka511

老練な大臣達の甘言に乗せられ、若き王は道を誤っていく。王弟として私は兄を諌めるべきだ。だが私もまた若輩者。暴君と化す兄を傾く王国を、止められない。ならば。「陛下、貴方の思うままに」剣を抜く。「私をお使い下さい」罪は私が。「敵はすぐ傍に」兄を傀儡にした大臣に制裁を #twnovel

2016-09-25 00:00:22
リュカ @ryuka511

剣術では敵わないから槍術を学んだ。間合いを詰めさせなければ槍が圧倒的に有利。今度こそ勝てると思った。お前と対峙するまでは。震える手を伸ばす、槍を構える。瞬く間に間合いを詰められる。「勝負あり!」剣を引くお前の言葉が刺さる。「お前は僕じゃなくお前自身に負けたんだ」 #twnovel

2016-09-25 23:53:36