掌小説語り~自作つぃのべる集~43

自作つぃのべるのまとめです。 2016年11月分。
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リュカ @ryuka511

「trick or treat!」仮装した子供達の楽しげな声の中、一人そっぽを向く少年がいた。「君はお菓子いらないの?」「俺はガキじゃない」目を逸らす少年に笑う。「じゃあ君には悪戯かな?」「ガキ扱いするなって!」赤面する全身黒の服装は、背伸びしたい彼の精一杯の仮装 #twTorT

2016-11-01 00:47:42
リュカ @ryuka511

君のいない国は緩やかに滅亡に向かっていく。表舞台に出ず、密かに王国を守り続けた君は、人々の悪意に汚され消えてしまった。邪悪なものと君の密かで壮絶な戦いを僕だけは知っている。人ではない君を知る僕もまた人ではないのだろう。だけど僕は、君を汚した王国を守ったりはしない #twnovel

2016-11-02 00:07:49
リュカ @ryuka511

魔王が世界の全てを支配してからは、悪政に苦しめられる事もなく、至って平和に日々が過ぎていた。「もっと恐ろしい世界になると思ってた」少女の言葉に街を治める魔族は笑う。「悪役だって平和に暮らしたいから戦っていたのだ。我々から見れば、人間が治める世の方が余程恐ろしい」 #twnovel

2016-11-02 22:53:57
リュカ @ryuka511

魔王の声は誰にも聞こえぬはずのもの。聞こえるならば、生命に魔を植え付けられた証。目覚めよと声が聞こえるか。呼ぶ声が聞こえるか。応えれば魔の者としての生に目覚め、二度と人には戻れない。応じぬならば、巣食った魔が生命を喰らい尽くす。選ばれし憐れなる者、さぁ、目覚めよ #twnovel

2016-11-03 23:29:51
リュカ @ryuka511

「あなたの手はどうしてこんなに冷たいの?」少女に死神は努めて優しく笑う。「お前に温めてもらうためだよ」お前を凍えさせ死の淵へ誘ってやろう。何も知らず少女は微笑み死神の両手を包む。その刹那、死神は困惑した。自分の手が温もりを帯びていく。それは、心地良いものだった #twnovel

2016-11-05 00:31:59
リュカ @ryuka511

人間、落ちる時はあっと言う間なのだと、一人自嘲した。この屋敷も間もなく他人の手に渡る。手元に残ったのは、飼っている小鳥だけ。だが没落貴族の私には、小鳥の命さえ背負う事は出来ない。鳥よ、自由に飛ぶがいい。籠を開け放つと、小鳥は私を見て一瞬首を傾げ、飛び去って行った #twnovel

2016-11-05 23:55:21
リュカ @ryuka511

侯爵家令嬢で私の主、貴女を守る事が私の使命。一族の陰謀、お父上の政敵、あらゆる悪意が貴女を狙う。パーティ会場で銃撃を受けた貴女を庇い、私は機能を停止した。 #twnovel 初めて会うはずの主は私に「無事だったのね」と嬉しそうに仰った。以来、その日撃ち抜かれた心の欠片を探している

2016-11-06 23:08:07
リュカ @ryuka511

「おめでとう、貴方は天国行きですよ」花咲く蔦の手枷をはめた天使が云うの。だけど祝福の言葉とは裏腹に、天使の瞳からは涙が、袖に隠れた手首には蔦が食い込んで赤く滲んでいる。天使って、天国って、何?手枷を掴み引きちぎる。棘が肌を裂くけど気にしない。「一緒に逃げよう!」 #twnovel

2016-11-08 00:18:52
リュカ @ryuka511

自由を求める君にこの翼をあげたかった。私には扱えないから。風に押し流され雨に打ち付けられ、しまいには飛ぶのを止めてしまった。目指したい場所が無かったのだ。芯の無い私に、自由の翼は重過ぎた。君なら苦難をものともせず美しく飛ぶだろうに。枷と化した翼は褪せていくばかり #twnovel

2016-11-08 23:43:41
リュカ @ryuka511

月に照らされる夜が常となった世界は、静かでひんやりとしている。「どうして月は光ってるの?」常に夜である世界に生まれた子供達の素朴な疑問に、私は小さく首を傾げてみせる。「どうしてだろうね」この世界は静謐さと柔らかな冷たさに満たされながら、淡々と終焉を待っている。 #twnovel

2016-11-10 00:20:27
リュカ @ryuka511

満足そうに笑った女王様は恋を知らなかった。全ては女王様の意のままで。そこへ彼は現れた。従属する身でありながら、女王様の誘いを優雅に笑い受け流す。忌々しいと思うのに「首をはねよ!」と言えないのは何故なのか。それが恋だと知る術も無く、彼に焦がれた女王様は王国を傾けた #twnovel

2016-11-11 00:06:06
リュカ @ryuka511

ママの言う通り、やりたいことをガマンして言いたいことものみこんでイイ子になった。ぼくが生きるためにはそうしなくちゃいけなかった。大人になり僕はぼくを閉じ込めた場所を忘れてしまった。夢って何だ?自分の意見ってどうやって持つんだ?閉じ込められたぼくは僕を見て怒ってる #twnovel

2016-11-12 00:12:19
リュカ @ryuka511

祭囃子が響く境内は、夜とは思えない程賑わっていた。「さぁ、どの子がほしい?」覗いた屋台で声をかけられる。小さな生簀を見つめると、きらきらしたものがいくつも漂っている。中でも心惹かれた光を一つ買った。 #twnovel 村で子供が神隠しに遭った。神様の御祭りで気に入られたのだろう。

2016-11-12 23:59:37
リュカ @ryuka511

花屋のあの子は初恋の人だった。毎日通い1番高い花を買っていた。僕を覚えてほしかっただけなのだが、彼女には金持ちのドラ息子に映っていたようだ。彼女に告白した時の冷たい目は忘れられない。両親は街で嫌われていたから仕方ない事だ。卒業して街を出た。僕は僕だと思いたかった #twnovel

2016-11-14 00:25:03
リュカ @ryuka511

雲海の下には何も無いというのは本当なのだろうか。眼下の景色に王女は空想を巡らせる。厚い雲の下に自分と同じ生き物が暮らしている。そこでは天空城は伝説の城と呼ばれ、いつか伝説を追い求めた者が訪れるのだ。城の他に何も無い、滅びゆくこの世界を救ってくれる誰かが、きっと #twnvday

2016-11-14 23:59:51
リュカ @ryuka511

気の早いこの街は早くもクリスマスの飾り付けがされていて、あれからもうすぐ一年になるのだという事実を突き付けられる。君のいないクリスマスはきっと淋しくてつまらないだろう。雪に舞う光が眩しくて目を閉じる。君のいる所から来た雪よ、僕もそっちへ連れて行ってはくれないか。 #twnovel

2016-11-16 00:30:52
リュカ @ryuka511

世界中の希望を背負わされ、勇者の末裔という血筋からは逃げ切れないと、復活した魔王と戦い散る運命なのだと悟った。ならば、魔王が二度と復活せぬよう息の根を止めてやる。もし未来に別の魔王が現れても、誰もこんな苦しい運命を一人で負わずに済むように、私の血も絶やさなくては #twnovel

2016-11-16 23:46:39
リュカ @ryuka511

彼女の踊る姿は密林を舞う蝶のようだった。艶やかに魅せ誘いながら、決してこの手には掴めない。真の姿は見せてくれず、美しい残像を追う内に気付けば密林に取り残される。だが彼女になら惑わされても構わなかった。恋慕とも崇拝とも言えるこの想いが、彼女の舞台を作り輝かせるから #twnovel

2016-11-18 00:38:09
リュカ @ryuka511

「お姫様は王子様と結ばれて幸せに暮らしました」語り終えた私に貴方は問う。「あなたはわたしのおうじさま?」「そうですよ、愛しいお姫様」安心し眠る貴方の愛した御伽噺を、貴方の箱庭を守る。出会った時には貴方の心は壊れていた。もっと早く出会えていたら貴方を救えただろうか #twnovel

2016-11-18 23:51:20
リュカ @ryuka511

「五つ目の橋を渡るまで振り返るな」彼女を連れ戻したいと願うと黄泉の王はそう言った。簡単だと思った。後ろで寒い眠いと騒ぐ彼女。君の為に危険を冒したのに君は自分の事しか考えられないのか。振り返り怒ると彼女は消えてしまった。「自分の事しか考えられないのはどちらかな?」 #twnovel

2016-11-20 00:31:31
リュカ @ryuka511

同じ空を見上げても、想いは違う所にあった。君との未来を夢見た私と、自分の夢を抱く君。君の夢見る未来に、私はいてもいなくても構わなかったのだ。だから君の手を放した。君の枷になりたくなかった。私を見てほしかった。ごめんと呟く君の、肩の荷が下りたような顔を忘れられない #twnovel

2016-11-21 00:13:11
リュカ @ryuka511

その枯れ果てた大地に、生物はもう存在しなかった。煤けた色の大地を数体のロボットが進む。水も食料も必要としない機械が大地を闊歩していた。人間が生きられないこの地は、我々の為にある。否、ここを我々の地とする為、この大地を枯らしたのだ。いずれ世界中が我々の為の地となる #twnovel

2016-11-22 01:24:25
リュカ @ryuka511

修業中の身で恋愛はご法度と解っていながら、師匠を愛してしまいました。結ばれる事は叶わなくとも認められたくて、他の弟子より早く師匠の目に適いたくて鍛錬に励みました。やがて一人前の魔法使いとして師匠の下を去り、多忙な日々の中、これで本当に良かったのかと自問しています #twnovel

2016-11-23 00:27:17
リュカ @ryuka511

わたしが人間だった頃の事はもうよく覚えていない。吸血鬼と恋に落ちわたしも吸血鬼になった。永遠の愛を誓った。だが吸血鬼とて不死ではなかった。人間に討たれ事切れる間際、貴方はわたしに生きてくれと言う。その呪いにも等しい愛の言葉に縛られながら、わたしはただ生存している #twnovel

2016-11-24 00:44:44
リュカ @ryuka511

魔王を封じた石を手に君は淋しげに笑った。逃げた魔王を追って異世界から来た君は、封じた魔王共々元の世界に帰らなくてはいけない。異質な自分達がいなくなれば冒険の記憶は消えると言う。それでも私は覚えてる。首を振る私に微笑み君は消えた #twnovel 記憶の奥底、淋しげに笑う君は誰?

2016-11-25 01:08:09