ドラゴン・インストラクション #1

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(これまでのあらすじ:アラスカの都市シトカは、邪悪なるニンジャ「シンウインター」を首領とするヤクザニンジャ組織「過冬」の支配下にある。隠者めいた暮らしを送っていたシルバーキーと共に暮らす少女ゾーイはその神秘的な力をシンウインターに狙われ、シトカにさらわれた)

2018-09-11 22:00:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(ゾーイを救出すべく、ニンジャスレイヤーことマスラダ・カイはシトカに突入。過冬との激しい戦闘を開始した。彼の恐るべき赤黒のカラテは、僅かな時間のうちに凄まじい数の過冬ニンジャを爆発四散せしめた。雪とオーロラの停滞に劇薬が投じられたがごとく、ニンジャ達は行動を開始する)

2018-09-11 22:04:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(シンウインターに誇りを奪われ、堕落した日々を過ごしていたスーサイドは今再び反逆に心燃やす。ネオサイタマからはソウカイ・シンジケートのニンジャ達が現れ、抗争の火蓋を切る。そして、かつてニンジャスレイヤーとして戦い、その人生を終え、サツバツナイトとなった男。フジキド・ケンジ)

2018-09-11 22:08:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(だがシンウインターは多数の敵を凄まじき力で圧倒し、ゾーイを再び手中におさめ、悠然と去る。彼の本拠、エッジカム火山へと。しかしニンジャスレイヤーの闘志は少しも翳ってはいなかった。見よ、港を埋め尽くす大漁旗を!かつてシトカを守っていた海の男たちの帰還!それは、反撃ののろしだ!)

2018-09-11 22:13:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【ドラゴン・インストラクション】#1

2018-09-11 22:13:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

船団には多種多様のダルマ・バルーンや大漁旗、凧が括り付けられ、水面にはイカを呼び寄せるネオンライトが照っていた。最もいかつい船の名は「一番美しいお前」号。甲板には二人の凄まじき存在が並び立つ。アフロヘアーに無精髭の男。もう一人は、長い髪に長い髭。片目片足の男である。 1

2018-09-11 22:20:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

前者はフジミ・ストリートを守る無頼漢にしてニンジャ、スーサイド。後者はこの船の主であり、そもそもこの船団の頭領、旧きニンジャ、オールドストーンである。左目は潰れ、右足は膝から下がない。過冬が……シンウインターが、彼をシトカの守護者の座から引きずり下ろす際、身体をそのようにした。2

2018-09-11 22:24:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ブオウー。ブオウー。汽笛が再びけたたましく鳴らされた。「大漁」「タフネス」「漁獲量を適切に」「安全確認」などの猛々しきショドーが刺繍された旗が風になびく中、オールドストーンは巨大なパイプを咥え、パイプ海藻の紫煙を吐き出した。煙はイタチ、髑髏、「勇」の漢字の形をとり、散ってゆく。3

2018-09-11 22:29:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

オールドストーンは爛々と片目を輝かせ、長い髭の奥で口の端を歪めた。彼とスーサイドは無言で視線をかわした。ブオウー。ブオウー。汽笛が繰り返される。カーン!カーン!更には大漁旗の柱の先端、カネを鳴らす者あり。それはダイタチ・メガミ号の船長デイビスの息子、悲劇からの生還者、エイブ。 4

2018-09-11 22:37:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

鐘を打ち鳴らしながら、エイブは滂沱の涙を流していた。彼はその理由を語りはしない。やがて船団は港にいよいよ迫る。「ザッケンナコラー!」「スッゾオラー!」海上警備ヤクザの高速船が回り込み、行く手を阻もうとする。「過冬」の旗が掲……KRAAASH!「アバーッ!」高速船破砕! 5

2018-09-11 22:39:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何か轢いたか?」オールドストーンはふざけたように呟き、スーサイドに笑いかけた。「さあな」スーサイドも笑った。オールドストーンは肩を揺すった。「始めるとしようや。情けねえお天道様もあがったぜ」東の空。オーロラ越しに、弱々しい太陽が上がろうとしていた。 6

2018-09-11 22:42:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

そして、見よ。港湾を走り込んでくる二つの色付きの影を。ひとつは赤黒。一つは黒橙。スーサイドはオールドストーンに頷いて見せる。敵ではないと。「「イヤーッ!」」二つの影は回転ジャンプし、「一番美しいお前」号の甲板に着地した。エイブは息を呑んだ。「ニンジャ……スレイヤー……」 7

2018-09-11 22:46:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

エイブが呻くようにその名を呟いたとき、二つの影は既に後続の船に向かって跳んでいた。「「イヤーッ!」」船から!「「イヤーッ!」」船へ!ブオウー!ブオウー!鳴らされる汽笛!エイブは狂ったように鐘を鳴らす!カーンカーンカーン! 8

2018-09-11 22:49:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

だが、見よ!船団の側面!巨大な獣の脇腹に食らいつく邪悪な蛇めいて、重装ヤクザ高速船が接近しつつあった。重装ヤクザ高速船には突撃槍めいた衝角が備わっている!そして武装甲板上で身構えるのは……過冬のニンジャだ!ナムサン! 9

2018-09-11 22:52:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイエッ……!」進行方向、船団の最も外側、「相当な疾風怒濤女神」号の船長が恐怖に目を剥いた。数秒後にはあの重装ヤクザ高速船の体当たりを受ける。そうなればこの漁船は貫通……破砕……!「キイヤハァー!」高速船甲板のニンジャが残忍な涎を垂らし、叫ぶ!「ネギトロ重点キマッタァー!」10

2018-09-11 22:55:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ナムアミダブツ!漁船爆発四散無惨……否!過冬のニンジャが残虐行為の予感に胸躍らせた時、「相当な疾風怒濤女神」号の甲板に二つの影が着地したのである!赤黒!黒橙!「「Wasshoi!」」決断的な叫びが重なり合う!……KRAAAAAASH! 11

2018-09-11 22:58:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……?」過冬ニンジャはコンマ1秒、訝しんだ。衝角突撃は船体を貫いていなかった。上に逸れていた。そして……何故……?衝角は、甲板上の赤黒のニンジャによって、抱え込まれていた。「え……?」過冬ニンジャは目を血走らせた。何があった?コンマ1秒過去の記憶が逆流してきた。 12

2018-09-11 23:02:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

SPLAAASH……重装ヤクザ高速船は衝突の瞬間、水面の水飛沫爆発によって強制的にウイリーさせられていた。それは赤黒のニンジャの隣、黒橙のニンジャが投じたスリケンが生み出した衝撃爆発であった。そしてその衝角を赤黒のニンジャが受け止め、抱え込んだ……!そういう事だ!「バカな!」 13

2018-09-11 23:05:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

KRAASH!赤黒のニンジャの背中に縄めいた筋肉が膨れ上がり、衝角が……ナムサン……船首諸共……剥がされ、引きちぎれた。「イヤーッ!」半壊状態の重装ヤクザ高速船は後ろに押し戻された。過冬ニンジャは狼狽え、カラテを構えようとするが、その側頭部にケリが命中!「グワーッ!」トビゲリ! 14

2018-09-11 23:10:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

黒橙のニンジャのトビゲリを受け、過冬ニンジャは甲板を舐めた。沈みゆく重装ヤクザ高速船上で泡を食って受け身を取ると、彼はこの二人のニンジャを驚愕と共に誰何した。「何者だ……貴様ら!」「イヤーッ!」黒橙のニンジャは反動で「相当な疾風怒濤女神」の甲板上に飛び戻る。二者は再び並び立つ!15

2018-09-11 23:13:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

KABOOOM!重装ヤクザ高速船のエンジンが限界を迎え、過冬ニンジャの後ろで爆発した。赤黒のニンジャは構わず、アイサツした。「ドーモ。ニンジャスレイヤーです」そして黒橙のニンジャが。「ドーモ。サツバツナイトです」過冬のニンジャは震撼し、小刻みに震えた。ニンジャスレイヤー……! 16

2018-09-11 23:15:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ド……ドーモ」過冬ニンジャは震えながらアイサツを返した。「コルウスです」つい1分前まで、彼は港に予告なく現れた不遜な漁師どもを圧倒的暴力で苛め抜く算段であった。何もかも彼の予期せぬ事態。敵のアトモスフィア。死を覚悟する覚悟すらできていなかった。 17

2018-09-11 23:21:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼が古代ローマカラテで応戦しようとした時、既にその身体は宙を浮いていた。もはやアイサツはとうに終わっているのだ。サツバツナイトが投じたフックロープが彼の首元に絡みつき、宙に身体を跳ね上げていた。「グワーッ!」ニンジャスレイヤーが甲板上で身を沈め、上体をひねり……跳んだ。 18

2018-09-11 23:25:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」「グワーッ!」垂直跳躍しながらの強烈な蹴りが、コルウスの顔面を叩き割った。「サヨナラ!」コルウスは爆発四散した。DOOOOM……!なかば海中に没していた重装ヤクザ高速船が爆発し、水柱が噴き上がった。ナムアミダブツ! 19

2018-09-11 23:28:02