【レフト・アローン】福間健二 #k2fact200

9月3日から12日まで。映画、六本目の長篇劇映画『パラダイス・ロスト』の撮影を8月23日から9月1日までにおこなった。その間、やはりツイート詩を書くことはできなかった。反省したいところもあるが、ぼくのような作り方では、映画は持てる力全部を注ぎ込んでも足りない。スタッフとキャストの力を借りて、限界の先の先までやって、やっとなんとかなるのだ。そして最後には、ひとりになる。孤独の底に突き落とされる。「レフト・アローン」のタイトルは、まず、そこからだ。9月4日に「現代詩手帖」の企画で蜂飼耳さんと対談した。新宿二丁目のルノワール。台風で大風の吹いた日だ。1960年代後半とそれ以後の詩の状況を考えた。その副産物として、自分が人の捨てたものを拾ってここまでを生きのびてきたという思いがつよくなった。それが3以降に反映している。 続きを読む
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福間健二 @acasaazul

局面、細部、糸くずとかシミが総決算を語る。そういう痛さ、そういう愚かさを、人生は夜遅く容器からこぼすことがある。ばかやろう。足をそろえて飛ぶ被害者たちをどうするんだ。無意識になんでも自分の机の上に持ってくる男が泣く。泣いて特権の股をこじあけている。(レフト・アローン1)#k2fact200

2018-09-03 11:38:49
福間健二 @acasaazul

自分らしくないことをする。課題である場合もあれば、追いつめられてやってダムを決壊させる場合もある。きみは醜い。だれとイチャイチャしてきたのだ。気がつくとびしょぬれになっている。大洪水、体を入れる装置は意地悪。命令に従うとそんなこと言ってないよだ。(レフト・アローン2)#k2fact200

2018-09-04 09:20:26
福間健二 @acasaazul

戦争は終わった。ちゃんと残酷に、戦争のあとの同情とぶちこわしも黒い幕に隠され、いつからか黒い破片でしかない。男は一枚の写真を見つめる。人間が写っている。だれもノーといわない。大風の吹く新宿二丁目。ノーと言わない。ここから駅までタクシー、四九〇円。(レフト・アローン3)#k2fact200

2018-09-05 10:06:00
福間健二 @acasaazul

進まない電車のなかの、主婦との会話。疲れていても他人の心配ができる。すてきだと思う。彼女は聞こえなくなった悲鳴をおぼえている。男は忘れていた。生まれなかった夏がある。恢復期、曖昧な処分をかさねる社会で人が捨てるもの、それで生きられると考えたのだ。(レフト・アローン4)#k2fact200

2018-09-06 09:17:20
福間健二 @acasaazul

人が捨てるもの。虹とタトゥーは色あせて、ニセモノどうし。とくに急ぐ理由もないカンバセーション。拾い、拾われる。どちらも疲労する。眠くはなるけど、もらって川を渡る孤独と病気はもうこの男の一部だ。足りないのは交感。飛び込む勇気。体はいやがってないのに。(レフト・アローン5)#k2fact200

2018-09-07 09:54:58
福間健二 @acasaazul

だから、レフト・アローン。長い廊下を歩いて改心することの、この小さな常習者。体温のあるもの、拒んでいないが、火の前に弱い。右の肩から左膝への斜めの線が最小限の炎にも反応して、折れる力を失う。情報社会。とろりとする。帰り道、どうなるのかわかっても。(レフト・アローン6)#k2fact200

2018-09-08 14:10:53
福間健二 @acasaazul

影を食べる。体半分。東四丁目、とうふ屋さんとその隣の家のドライヴウェイのあいだの、通り抜け可能な狭い錯乱。引きずる紐がね、ねじれるたびにかたちを変えるのさ。去りゆく動物。どういうことか知ったばかりの官能検査。雷には打たれなかった。流星は見た。(レフト・アローン7)#k2fact200

2018-09-09 08:30:44
福間健二 @acasaazul

この世の「善悪」の判断からこぼれる部分。郵便局にも花屋にも行きそびれてファミリーマートでなんとかしようという交差点にも、その実用の面。無彩で、ただ人を思うというだけの電気。しくみ、簡単にできている。でも、どうすれば。目がちくちく痛む。信号が変わる。(レフト・アローン8)#k2fact200

2018-09-10 09:58:18
福間健二 @acasaazul

名探偵。人に会って世間話をするのがその第一歩だったが、いまは失語症とたたかう。待ってくれない彼女たちへの、まだ停滞する八月を生きる胸への、電流。いいぞ。新しい、折れる力。しみるだろう。ブルーベリーの育つ保育園、黄色い帽子の園児たちに降る雨よりも。(レフト・アローン9)#k2fact200

2018-09-11 09:11:35
福間健二 @acasaazul

何度でもしたいこと。飽きるまで。匂いと音の補給。地下のプール。反響のなかでは、消費社会の夕暮れの嘘すらあばけなかった。そして黒い、苦い、とりかえしのつかない夜の三十分。そこまで。あとは老いない幽霊たちと。幸せな恋、ペンではなく鉛筆で描いてほしい。(レフト・アローン10)#k2fact200

2018-09-12 09:55:02