くまくん劇場その3〜喚ぶ声

今回のくまくん劇場は、怖い話だよぉ。 ってか、いいかげん俺の名前勝手に使うのやめてよねぇ!
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おまんじゅうと時々遊ぶ朔間凛月 @ritz_tokidoki

くまくん劇場始まるよ~♪ みんなアンケートとったの忘れてるかもしれないけど、今回は「都会の怖い話」だよ

2018-08-15 18:50:24
おまんじゅうと時々遊ぶ朔間凛月 @ritz_tokidoki

都会っていうより、中都市って気もするけど、気にしない気にしない……♪

2018-08-15 18:51:18
おまんじゅうと時々遊ぶ朔間凛月 @ritz_tokidoki

いつものように、どこかで聞いたような名前が出てくるけど、あくまでフィクションなので、よろしく~♪

2018-08-15 18:53:04
おまんじゅうと時々遊ぶ朔間凛月 @ritz_tokidoki

さて、セッちゃんは故郷を離れ、とある都会で暮らしていました 仕事もプライベートも充実した毎日です。故郷のことを思い出すこともありませんでした

2018-08-15 19:12:12
おまんじゅうと時々遊ぶ朔間凛月 @ritz_tokidoki

実家からは、お盆ぐらいは帰ってくるようにと連絡が来るのですが、セッちゃんはお正月には帰るからとごまかしました。しかし、お正月にはお盆には帰るといって、のばしのばしにしているのでした

2018-08-15 19:17:46
おまんじゅうと時々遊ぶ朔間凛月 @ritz_tokidoki

そんなある日、セッちゃんのもとに中学校のクラス会の招待状が届きました。今は誰とも連絡をとっていないのですが、実家に届いたものをお母さんが送ってくれたのです

2018-08-15 19:22:02
おまんじゅうと時々遊ぶ朔間凛月 @ritz_tokidoki

幹事の名前は、セッちゃんも覚えがありました。特撮ヒーローが好きなので、セッちゃんはヒーロー馬鹿と呼んでいました。 セッちゃんは欠席に○をつけ、明日ポストに投函することにしました

2018-08-15 19:34:07
おまんじゅうと時々遊ぶ朔間凛月 @ritz_tokidoki

その日の夜、セッちゃんは夢を見ました。 まわりはうすぼんやりとした霧のようなものではっきりと見えません ──おに……ちゃ……いず……お……にぃ…… 小さい子供の声が聞こえました

2018-08-15 19:37:41
おまんじゅうと時々遊ぶ朔間凛月 @ritz_tokidoki

どこかで聞いた声のような気もしますが、途切れ途切れのため、よくわかりません。何よりセッちゃんは独りっ子です。 ──たす……け……ずみ……おにぃ……ちゃ……

2018-08-15 20:08:27
おまんじゅうと時々遊ぶ朔間凛月 @ritz_tokidoki

セッちゃんが目覚めたときは、汗でグッショリと濡れていました。 自分に助けを求めている、小さい男の子の声。 少なくとも、今のセッちゃんの生活のなかで子供と関わることはありません。 果たして誰の声なのだろう。セッちゃんは不思議に思いました

2018-08-15 20:38:19
おまんじゅうと時々遊ぶ朔間凛月 @ritz_tokidoki

それから、セッちゃんが眠るたびに、小さな男の子の声が助けを求めてくるのでした ──いずみおにいちゃん……たすけて……いずみおにいちゃん…… 声はしだいにはっきりしてきましたが、姿は霧のなかで見えません

2018-08-15 20:47:18
おまんじゅうと時々遊ぶ朔間凛月 @ritz_tokidoki

もしかして、子供時代の友達だろうか。セッちゃんは思いました。心当たりがあるわけではないのですが、他に考えられません。子供時代のものはすべて実家にあります。 セッちゃんは、お盆に実家に帰ることにしました

2018-08-15 21:31:04
おまんじゅうと時々遊ぶ朔間凛月 @ritz_tokidoki

セッちゃんは、数えるのも面倒なくらい何年かぶりに故郷に帰りました。 久しぶりの故郷は、すっかり様変わりしており、駅前にはデパートや家電量販店などが立ち並んでいました 駅まで迎えに来ると言う家族世申し出を断っていたセッちゃんは、一人で家に向かいました

2018-08-16 22:41:52
おまんじゅうと時々遊ぶ朔間凛月 @ritz_tokidoki

「おっ、瀬名じゃないか!」 声のしたほうに振り向くと、そこにいたのは中学生のときのクラスメートでした 「誰かと思ったらヒーロー馬鹿じゃん」 「瀬名は相変わらずだな!」 あっけらかんと笑いながら言う姿は、記憶のなかと同じでした

2018-08-16 23:02:16
おまんじゅうと時々遊ぶ朔間凛月 @ritz_tokidoki

二人は、駅前のファーストフードに入りました。ヒーロー馬鹿は大盛りのフライドポテトを注文しましたが、セッちゃんはウーロン茶を頼みました。 「どうだ、駅前もすっかり様子が変わっただろ?」 「うん、そうだねぇ。少しは都会らしくなってるじゃん」

2018-08-16 23:09:50
おまんじゅうと時々遊ぶ朔間凛月 @ritz_tokidoki

「中学校の裏手の何もなかった草むらも宅地造成して住宅街になったしな」 「へぇ、けっこう開けてるんだ」 「沼地も埋め立ててマンション建てるぐらいだからな」 「……沼地?」 ──いず……おにいちゃ……ん……

2018-08-16 23:21:38
おまんじゅうと時々遊ぶ朔間凛月 @ritz_tokidoki

「ああ、沼地なんて地盤がゆるいから、地元のやつは住まないだろ。なにも知らないやつらが引っ越してくるんだろうな」 「……今は基礎工事も進化してるんじゃないのぉ?」 「それでも俺は住みたくないな」 それから四方山話をして、二人は別れました。

2018-08-16 23:26:37
おまんじゅうと時々遊ぶ朔間凛月 @ritz_tokidoki

「沼地」という言葉がずっとセッちゃんの頭の中に引っ掛かっていました。 立ち入り禁止の有刺鉄線に囲まれていた沼地があったのは、何となく覚えています。以前は釣り堀になっていたような気もしますが、定かではありません。

2018-08-16 23:37:12
おまんじゅうと時々遊ぶ朔間凛月 @ritz_tokidoki

その日の夕食は、セッちゃんの好きなエビフライでした。 両親は故郷にもどって所帯をもてとしきりに言います。それが煩わしくて帰郷を避けていたのでした。 話の矛先を逸らすために、セッちゃんはヒーロー馬鹿にきいたマンションを話題に出しました

2018-08-16 23:40:28
おまんじゅうと時々遊ぶ朔間凛月 @ritz_tokidoki

ヒーロー馬鹿と同じことを両親も口々に言いました。どうやら話題を逸らすのには成功したようです。 セッちゃんの部屋は、家を出る前のままになっていました。セッちゃんはアルバムを見てみました

2018-08-17 21:00:13
おまんじゅうと時々遊ぶ朔間凛月 @ritz_tokidoki

順番にアルバムのページを見ていきましてが、声の主とおぼしき男の子の写真はありませんでした ──泉お兄ちゃん! 遊ぼう! セッちゃんは振り返りましたが、もちろん誰もいません

2018-08-17 21:28:05
おまんじゅうと時々遊ぶ朔間凛月 @ritz_tokidoki

あれは、いったい誰なんだろう 。ベッドに入ったセッちゃんですが、気になってなかなか寝つけません。 ──泉お兄ちゃん! 夢でなら、会えるだろうか。何のヒントもないのに考えてもしかたありません。セッちゃんは無理やり目を閉じて眠ることにしました

2018-08-17 21:44:26
おまんじゅうと時々遊ぶ朔間凛月 @ritz_tokidoki

セッちゃんは、いつもと同じように霧のなかを歩いていました。 ──泉お兄ちゃん、遊ぼう! その声とともに、サーッと霧が晴れました。 ゆうくん! セッちゃんは、思い出しました。そう、思い出してしまったのです。

2018-08-17 22:28:37
おまんじゅうと時々遊ぶ朔間凛月 @ritz_tokidoki

それは、セッちゃんが小学一年生のときの出来事でした。 セッちゃんが公園で虫捕りをしているときに、ゆうくんが声をかけてきたのです。 ゆうくんは、一つ年下の男の子で、お盆でお母さんの実家に遊びに来ていると言っていました。

2018-08-17 22:39:45
おまんじゅうと時々遊ぶ朔間凛月 @ritz_tokidoki

独りっ子のセッちゃんは、兄弟に憧れていました。泉お兄ちゃんと慕ってくるゆうくんと遊んでいると、弟と遊んでいるような気持ちになりました。 いつもはお母さんと食べているパ○コも、ゆうくんと二人で食べるともっと美味しく感じられました

2018-08-17 23:06:12