「異次元緩和をしても企業の内部留保になるだけ」の嘘 / リバーサル・レートの話
- motidukinoyoru
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今、ミッチェルの「量的緩和にいかに意味がないか」って記事を翻訳中なんですが、これを理解するには金融政策/金融調節のかなり核の部分を掴まないと駄目なんですね。 少なくとも、「中央銀行はお金を刷るところ」みたいなリフレシンパレベルの理解では全然ダメ。
2018-10-02 20:36:39ミッチェルの記事はお世辞にも「初心者に分かりやすいもの」とは言えないので、私なりに噛み砕いて説明しようと思います。 まず、『中央銀行は、政策金利を目標に短期金利を誘導する部門』という理解がポイント。字面だけならわかっているという人も多いでしょうが、実態を完璧に理解するのは難しい。
2018-10-02 20:38:20では中央銀行はどうやって短期金利誘導しているかというと、「国債の売買を通じて」というのが重要ポイント。 この意味で国債というのは、準備預金の調達コストを一定化するための金融政策手段でしかない、=純粋な意味での財源調達手段ではない。「国債は財源調達手段ではない」という事実が超重要。
2018-10-02 20:41:20まさにtwitter.com/criticalmind_E…で解説したポイントなんですが、中央銀行が直接自己の証券を発行して金融調節≡短期金利誘導をしてもいいところを、わざわざ国債を通じて財務省と協同的に行っているというのが現行の金融財政制度の構造なんです。この構造はレガシーの産物なので、却って理解が難しい。
2018-10-02 20:45:23とりあえず押さえてほしいのは、中央銀行は国債を「準備預金の投資先」として扱うことで短期金利誘導をしているということ。 これによって民間金融機関は、国債投資より低い金利で準備預金を融通することはなくなります。これによって短期国債金利は裁定的に銀行間準備預金融通金利の最低値になる。
2018-10-02 20:49:41裏を返せば、ある政策金利を設定する場合、フラットな状況から(決算期の到来等によって)準備預金需要が増加すれば、そのままの準備預金-国債バランスだと、準備預金融通金利(≡短期金利)と短期国債金利がパラレルに上昇してしまうので、準備預金需要に対して受動的に中央銀行はオペを行う。
2018-10-02 20:51:45準備預金融通金利≡準備預金を調達するコスト≡短期金利を一定値に保つオペをするということは、準備預金需要の変動に応じて、準備預金と国債のバランスを中央銀行が適宜変更するということに他なりません。
2018-10-02 20:54:13これは必然的に、中央銀行は、準備預金需要が強まれば、必ず(短期)国債を流動性に変換するということを約束しているということを意味することになるわけです。 この意味で(短期)国債は、中央銀行によって一定価格(≡一定金利)に固定され、その価格での交換が約束されている資産に他なりません。
2018-10-02 20:55:38ということは一旦政策金利が底≡ゼロ近傍にまで落ち込めば、国債はそもそも適宜ほぼ等価で流動性(準備預金)と交換可能な資産に過ぎない代物となるわけです。 この意味で、国債と準備預金はほぼほぼ等価交換となります。なぜなら国債は、「元々ほぼノーコストで準備預金と交換される資産」ですから。
2018-10-02 20:57:56「中央銀行は、短期金利誘導政策を行う限り、それに基づいた一定価格で国債と準備預金の交換を約束する機関である」と理解すれば、ひとたびゼロ金利政策に突入すれば、「中央銀行は準備預金と(短期)国債を等価で交換する機関」ということになり、量的緩和は無意味な政策だと確定することになります。
2018-10-02 20:59:49うーん、まず、具体的に現金がどこに流れていったのか、を追いかけないと、答えは出ないと思ってるんだけどなぁ。企業の内部留保の形で積みあがってるというのが答えに近いと思ってるけど。
2018-10-02 22:53:31@BugbearR いえ、普通に超過準備として積まれている、でいいです。 「準備預金積み上げはインフレ促進的ではない」econ101.jp/%e3%83%93%e3%8…というミッチェルの記事という記事によくまとまっているのですが、端的に言えば、準備預金と(ほぼ)ゼロ金利の短期国債は等価物なので交換しても何も起こらないんです。
2018-10-02 23:27:33@BugbearR なぜ等価物かというと、中央銀行の金融調節≡短期金利誘導というのが、事実上国債の市場価格誘導になっていて(∵裁定取引)、ゼロ金利への誘導というのは、国債を額面と同等の準備預金との等価物へ誘導するのと同じになるからってところですね。
2018-10-02 23:28:49@BugbearR もっと簡単に言えば、「元々いつでも同額の準備預金に交換できる資産」(≡ゼロ金利の短期国債)を準備預金と交換したって、銀行の行動が変化するわけないでしょうってことなんです。 もし仮に銀行の行動が変化するとしたら、準備預金がリスク資産と交換されたケース(信用緩和、質的緩和)か、...
2018-10-02 23:31:55@BugbearR ... フォワードガイダンスが発生したケースだけだっていう話になるんです。っていうのが、twitter.com/criticalmind_E…とかの議論に関わってくるわけです。
2018-10-02 23:32:05@BugbearR そもそも企業が積み上げる内部留保と、中央銀行-商業銀行間で(国債とバーターで)発生する準備預金には直接の関係がないですからね。 企業が内部留保を、つまり純貯蓄を積み上げるとすれば、それはそれ以外の主体のキャッシュフローの赤字を反映しています。となると、それはむしろ"財政赤字"ですね。
2018-10-02 23:34:00あと、追加の超重要ポイントは、(海外部門を脇に置いて)、民間部門が金融純資産を形成する場合は、必ずその裏で政府が金融純負債を形成しているのであって、それは必ず財政赤字という形で形成されるということですね。 金融政策はというと、統合政府負債(国債+ベースマネー)の"内訳"を弄るだけ。
2018-10-02 23:44:17財政政策が、民間の金融純資産の水準を増減させる(財政支出によって民間金融純資産を”増やし”、徴税によって民間金融純資産を”減らす”)一方で、金融政策は民間の金融(純)資産の水準を変化させない(統合政府負債内で準備預金とMBの比率を変化させるだけ)というわけなのです。
2018-10-02 23:46:18金融政策と財政政策のそれぞれの実態が分かると、例えば「異次元緩和によってお金が増えたが、その大部分は大企業の内部留保になってしまった」みたいな言説が完全に誤りだということが分かります。 金融政策は、統合政府負債のうち、国債と準備預金の比率を変更しているだけで、...
2018-10-03 15:59:01...民間金融(純)資産を増加させないからです。 もし民間金融(純)資産が増加するとすれば、繰り返しになりますが、それは財政政策(財政赤字)によるものです。 金融政策は統合政府負債の組成を変えて流動性調達コストを操作し、財政政策は統合政府負債≡民間金融(純)資産の水準自体を操作する。
2018-10-03 15:59:30先日、「金融政策は民間金融(純)資産を増やさない。統合政府負債=準備預金+国債の内訳を弄るだけ」、「民間金融(純)資産を増やすことが出来るのは財政政策」というお話をしたわけですが、さらに踏み込んで、中央銀行が金融機関から有利子資産を買い上げることの経済的帰結の話をしましょう。
2018-10-04 17:57:56中央銀行が金融機関から有利子資産を買い上げて、代わりに流動性を供給することによって、流動性の調達コストが減少し、信用拡大が促されるというのがオーソドックスな金融政策の構造です。しかし、あまりに短期金利が下がれば、それ以上の利下げによる恩恵はほとんどなくなってしまい、それどころか、
2018-10-04 18:11:51金融機関にとって収益手段となるはずの有利子資産が買い上げられることで、金融機関の利益が著しく毀損し、経営悪化による信用不況を却ってもたらすことになり得ます。いわゆるリバーサル・レートの議論です。nomura.co.jp/terms/japan/ri…
2018-10-04 18:12:00「中央銀行の利子収入が国庫に納入される」という話はよく知られていると思いますが、統合政府レベルでこれを表現すると、統合政府が保有する資産の利子収入は、事実上民間に対する徴税として機能するわけです。 つまり、金融機関からの有利子資産購入は、当該資産の利子を徴税で召し上げたのと同じ。
2018-10-04 18:17:13この意味で、少なくとも一面的には、金融機関からの有利子資産購入は金融機関に対する徴税として機能するわけです。だからこそ、信用不況の原因となり得る。 もちろん、流動性調達コスト低下も平行するわけですが、既に金利が低ければその恩恵も小さい。民間の信用需要が不況ゆえに弱ければ尚更です。
2018-10-04 18:19:46