異世界トラベルした先々で自分のウンコがバカ売れして大儲けする話 【後編】

男だったらウンコを売れ。
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前の話

まとめ 異世界トラベルした先々で自分のウンコがバカ売れして大儲けする話 【前編】 自分の世界ではなんでもないものが、異世界では突然宝になる。そういうことなんですよ。 ウンコが売れたら最高やん。 6542 pv 15

本編

帽子男 @alkali_acid

◆◆◆◆ これまでのあらすじ。 なりゆきで闇の国の王になったゴブリンの若者ボルボは、領内で異世界へ通じる門を発見。くぐりぬけた先ではウンコが人気商品としてバカ売れ。あっという間に大儲け。ウハウハの毎日が始まった。 異世界トラベラーよウンコを売れ。ぶりぶり出したウンコで成り上がれ。

2018-10-07 10:56:05
帽子男 @alkali_acid

◆◆◆◆ 「ギヒヒ、どうもどうも」 小鬼の盗賊は、新たに出会った異世界人にむかってこめつきバッタよろしくぺこぺこしながら、不吉な予感に背筋を寒くしていた。 強いものに逆らわず、弱いものだけを襲う種族の本能が告げる。眼前にいるのは姿形こそ華奢な少年だが、内実は厄介きわまる存在だ。

2018-10-07 11:00:16
帽子男 @alkali_acid

蔦の髪に緑がかった肌、高貴なエルフの少女を思わせる優容。 おっとりとした物腰には、別の次元から迷い込んだ旅人を警戒したり威圧したりするようなそぶりはいささかもないが、しかし見ていると冷や汗が出る。 「ギヒ」 ボルボは、さりげなく利き手の指を反対の手でなぞった。

2018-10-07 11:04:31
帽子男 @alkali_acid

大粒の黄玉をつけた輪がはまっている。今やはるか遠くにある闇の国で、知り合いのエルフから盗みとった宝だ。つけていると知らない言語や文字をたちどころに覚えて、さまざまな知識をすばやく身に着けられる。 おかげで岩に刻まれた死せる古語を学び、異世界へ通じる門を目覚めさせられたのだ。

2018-10-07 11:07:48
帽子男 @alkali_acid

「ギヒヒ…」 目の前にいる気味の悪い子供から離れるには、同じ方法を使うに敷くはない。先だって門をはたらかせた手順を繰り返す。頭に浮かんだでたらめな座標を無言で読み上げるのだ。 だが何も起こらない。 「ギッ…」 「どうされました?」 「いや…その」

2018-10-07 11:11:15
帽子男 @alkali_acid

相変わらずおっとりとした態度で、蔦の髪をした美童、確かリトリトと名乗った小さな異世界人が話しかけてくるのを、ゴブリンは卑屈な笑みを顔にはりつけたまま後ずさった。 「ギヒ」 「こちらにはどういったご用でいらしたんですか」 「ギ…ギ…と、取引で…」 「ご商売なんですね」 「ギヒ」

2018-10-07 11:14:27
帽子男 @alkali_acid

リトリトの悠揚せまらざる接し方のひとつひとつがボルボの不安を掻き立てる。過去出くわしたどんな難敵よりも恐ろしいという勘がはたらく。人間、エルフ、ドワーフ、トロール、オーガ、いやドラゴンよりも。だが乗り切らなくては。

2018-10-07 11:17:08
帽子男 @alkali_acid

「ギヒヒ…実は…おいら、ちょっとした品物を扱ってましてね…お坊ちゃまにご興味がおありならご説明いたしますが」 「ぜひおねがいします」 小柄な子供と小柄な大人は、漆黒の闇が支配する洞窟の中で、和やかに商談を始めた。

2018-10-07 11:19:24
帽子男 @alkali_acid

茸の松明が投げかける頼りない光の輪の向こう、牙を思わせる石筍の列のかなたでは、時折きしるような叫びと、羽ばたきの音がして、暗がりにあってなおわずかに輪郭が見て取れる翼の影が飛び交っていたが。

2018-10-07 11:21:02
帽子男 @alkali_acid

◆◆◆◆ 闇の国の廃墟の都の外に広がる平原。 塩の柱と化した人馬の群があまた立ち並ぶ一角で、三人の女が働いていた。

2018-10-07 11:24:08
帽子男 @alkali_acid

一人は銀髪銀眼、白い肌、輝く甲冑に身を固めた騎士、シルヴィア。 一人は黒髪黒目に褐色の肌、ゆるやかな紅衣をまとった剣豪、ルーナ。 一人は黄色い肌に切れ長の瞳、黄杉をまとった道姑、ツィーツィー。 いずれも闇の国の妃だ。 つき従うのは跳ねまわる骸(むくろ)の奴僕。

2018-10-07 11:25:42
帽子男 @alkali_acid

キョンシー。角のある骸骨、竜や巨人の屍など、滅びた地に眠る異形、魔性の髑髏に再びかりそめの命を与え傀儡として操る、東洋は无屍民国の霊幻道士の術である。指揮をとるのは暁の妖精、ドーンエルフの娘であるツィーツィー。

2018-10-07 11:28:02
帽子男 @alkali_acid

死せる巨人が、可憐な主の命じるままに、驚くべき怪力を発揮し、倒れた岩の柱を立て直し、毀たれていた環状の列石を元通りにする。 反対側では死せる竜がやはり遺跡の修復に働いていた。 「さあ、これでいいアル…あとは…ウチのお札も残り少ないアルが…仕方ないアルな…」

2018-10-07 11:31:13
帽子男 @alkali_acid

道姑は、ところどころひび割れ、砕けた岩の柱に呪符を貼っていく。びっしりと表面に彫ってある文字が途切れている部分を、うまく紙に書いた同じ内容で補うのだ。 「…気(チー)が巡り始めたアル…大昔のしかけなのに…この異世(ことよ)への門を作ったやつ…古き闇はすごい力を持ってたアルね…」

2018-10-07 11:33:56
帽子男 @alkali_acid

エルフが感嘆の言葉を述べると、かたわらで浅黒いおとめが頬に指をあてる。 「その古き闇のしかけを壊すほどの力をもつ…紫鱗の龍。どれほどの怪物だったのでしょう」 やや離れたところに立つ銀髪の娘が、環状列石の中央、何もない空間をにらみ、かぶりを振る。 「さあな。異なる世界の存在だ」

2018-10-07 11:38:52
帽子男 @alkali_acid

作業を終えたツィーツィーが振り返って、シルヴィアに励ますように声をかける。 「大丈夫アル小姐。旦那様が今どこにいたとしても、"取引の掟"が守ってるから、傷ひとつ負ってないはずアル。きっと無事に小姐のもとに戻ってくるアル。そんな悲しそうな顔しちゃ駄目アルよ」 「…私は…」

2018-10-07 11:41:55
帽子男 @alkali_acid

鎧を鳴らして身をこわばらす騎士に、赤い袖をなびかせた剣豪が近づき、ものなれたようすで肩に腕をまわす。 「あんまりシルヴィアさんが落ち込んでいると、私達気になってボルボさんの心配もしていられませんわ」 「だが私が…ちゃんとあいつを止めていれば…」

2018-10-07 11:44:47
帽子男 @alkali_acid

「ゴブリンはいつだって悪事を企みますのよ。さあ今は、どうやって異なる世界に迷い込んだおちょうしものを連れ戻すかを考えましょう」 「む…ツィーツィー。もう一度、この門と取引の掟とやらについて教えてくれ」 「承知アル」 三人の女は寄り集まる。

2018-10-07 11:47:30
帽子男 @alkali_acid

「宮殿の書庫にあった本を信じるなら、取引の掟は、古き闇が、門をくぐって異なる世界へ出かける闇の国の斥候を守るためにかけた、強い魔法アル。斥候は必ず、貿易や商売ができる相手のもとにたどりつき、交渉がまとまるまでいかなる攻撃にも遇わないアル」

2018-10-07 11:49:59
帽子男 @alkali_acid

「便利な術ですのね」 「そうアルな。でも代償として、斥候は取引をまとめるまで闇の国へ戻ってくることも、さらに別の世界へ移ることもできないアル」 「商売が下手ならずっと同じ土地に釘付けか。古き闇は配下に酷だな」 「魔法は代償を大きくするほど効き目が強くなるアルから」

2018-10-07 11:53:08
帽子男 @alkali_acid

「ボルボさんなら出会ったものを騙して契約をさせるのは難しくないでしょう…でも取引って何を売り買いするのかしら」 ルーナが首をかしげるのに、シルヴィアが咳ばらいする。 「あいつと一緒に…宮殿から運んできた便壺がなくなった」 「便つ…え?じゃあ…ご不浄を…?」

2018-10-07 11:55:31
帽子男 @alkali_acid

「ええ!?いくら旦那様がずる賢くても、異なる世界で初めてあった人にウンチを売りつけるのは難しくないアルか?」 ツィーツィーがすっとんきょうな声をあげる。三人はやや下品な会話になったのを意識してしばらく黙る。 「ともかくだ。交易の品は持っている。そこは心配ない。問題はほかにある」

2018-10-07 11:58:11
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