ピエール・パシェ『母の前で』読書メモ集

ピエール・パシェ『母の前で』(根本美作子訳、岩波書店、2018)の読書メモをまとめました。Pierre Pachet, Devant ma mere, Edition Gallimard, 2007.
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荒木優太 @arishima_takeo

シモンドン訳にならぶ今年の人文書界最大の事件をついに手に入れたぞ。 pic.twitter.com/QfPbgnZR8P

2018-10-13 17:41:00
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荒木優太 @arishima_takeo

孤独は意識のすべての内容を単一的な内なる論理に流し込んで均質化してしまい、その論理に異を唱えるものをなくしてしまおうとするが、そうした孤独の有害性、孤独の危険と彼女は戦っている。見分けがつかなくなる傾向にあるものを、自分の力で区別しようとしながら。byパシェ『母の前で』

2018-10-14 05:09:11
荒木優太 @arishima_takeo

子供たちは気分のいいとき(あまり遠くないところに大人がいて、その人が他のことをしているのが聞こえながらもいつでも自分の相手をしてくれるのが感じられるとき)、しゃべる。子供はそうやって自分自身に連れ添ってやり、退屈しない。byパシェ『母の前で』

2018-10-14 05:10:43
荒木優太 @arishima_takeo

自制力を失った言葉はその口元から溢れ出し、もはや完全には言葉ではなくなり、他者性を作り出すことを止め、孤独そのものと化している。byパシェ『母の前で』

2018-10-14 05:11:52
荒木優太 @arishima_takeo

パシェ『母の前で』。ガタリがでてきた。ラボルド病院にも出入りしてたようだ。 pic.twitter.com/QsisdY97O0

2018-10-14 06:35:29
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荒木優太 @arishima_takeo

他の人と会話することによって得られること(もしかしたら彼らが黙っていても、彼らが動物であってもやはり同じように得られるものがあるのかもしれない)、それはしゃべることそれ自体の可能性を保ち、それを一段と豊かにし、新たな息吹を与えることだ。byパシェ『母の前で』

2018-10-14 06:38:38
荒木優太 @arishima_takeo

いつでも、頭のなかには、言葉があるものだ。それは完全な、あるいは部分的な表現ではないかもしれない、単語でも、半単語ですらないかもしれない、頭のなかで自分で形作ったり、勝手に形成される文の勢いのようなものだ。byパシェ『母の前で』

2018-10-14 07:16:02
荒木優太 @arishima_takeo

しゃべるということは、倉庫のようなところに行って、そこに収納された単語や表現を探しだし、頭のなかにあるフレーズの組み合わせ教本(「文法書」)に従ってそおれらを組み立てることではないだろう。byパシェ『母の前で』

2018-10-14 07:18:41
荒木優太 @arishima_takeo

ふつう、しゃべるとき、ひとに促されて応えるにしても、自分からしゃべりだすにしても、衝動が働くような気がする、それもやや盲滅法でリスクを伴うような衝動だ。byパシェ『母の前で』

2018-10-14 07:23:51
荒木優太 @arishima_takeo

わたしが感じるのは、観察者として感じるのは、だれだかわかるということは、ある種の空虚のようなものに身を投じることを前提としているということだ。それは人と人のあいだの空虚だ。それは、この空虚がそれとわかることであると同時に、その空虚を頭で構成できることだ。byパシェ『母の前で』

2018-10-14 08:43:35
荒木優太 @arishima_takeo

忘れるということがどういうことなのか、正確には覚えていないかもしれないが、「忘れる」という動詞は覚えていて、きちんと使う。そのことに気づき、それを覚えていなくてはならないのはわたしだ。byパシェ『母の前で』

2018-10-14 09:48:39
荒木優太 @arishima_takeo

私自身、孤独や悲嘆にとらわれて友人に電話するとき、それは必ずしもなにか言うためではなく、言葉に自分を委ねるためだ。byパシェ『母の前で』

2018-10-14 09:58:56
荒木優太 @arishima_takeo

考えてみればわたしたちの人間性は、部分的には、まさにオートマティズムから成っていて、わたしたちはそうしたオートマティズムを習い、それに服し、それによって深く人間化され、欲動や本能の束縛から解放されたのだ。byパシェ『母の前で』

2018-10-14 10:01:45
荒木優太 @arishima_takeo

わたしはやや無理矢理、彼女につまらないことを言って自分で笑ってみせようとする。この笑いを、彼女は自分のものとし、それに伝染されたのだ。赤ん坊のように彼女はわたしに笑い返しながら、その笑いを自分のものにした。二人のあいだで幸せがこみあげてくる。byパシェ『母の前で』

2018-10-14 10:08:49
荒木優太 @arishima_takeo

歩くということは、とても信じられないほど危険な動きに四肢を委ねることであり、おまけに転んではいけないのだ。byパシェ『母の前で』

2018-10-14 10:18:03
荒木優太 @arishima_takeo

いずれにせよ、言葉は吐き出されるもので、言葉が要請する空にそれは投げだされる。言葉は空のためにあるのだ。「内的」といわれる言葉で、声に出された言葉に根ざしていないものなどあるだろうか。byパシェ『母の前で』

2018-10-14 10:24:46
荒木優太 @arishima_takeo

ピエール・パシェ『母の前で』読了。一〇〇歳をひかえて重度の認知症で自分(息子)が誰だか分からなくなった母親をそれでも見舞いに行く介護記録。老いから見えてくるのは、ある能力をもつということ、とりわけ、言葉を喋れるとはどういうことなのか、という深い問いかけ。素晴らしい。必読。

2018-10-14 10:45:46
荒木優太 @arishima_takeo

私が外国語の原書で読み通したことのある本は数少ないのだが、パシェ『母の前で』はその一つ。もう忘れているのと当時の(いまも?)フランス語力のせいでずいぶん新鮮な読書だったが。訳者のいうように、流れで読んで初めて感慨深いのでぜひ。ほかのパシェ作も訳されるようになってほしい。

2018-10-14 10:49:36