【ソウルミュージック、秋】福間健二 #k2fact203

これ、楽しいはずなのに義務のようになっている。不満だけを言う人が立ったプラットフォームからの演技。脱げるだけ脱いで思い出した。好きだった。ずっと一緒にいたかった。そんなこと言うなという顔の、三階だての建物たち。どれもエレベーターないだろう。(ソウルミュージック、秋1)#k2fact203
2018-10-03 10:23:27
醜さ、着せられた、というのは本当か。そうでなくても、人。人であるために汚れている。三階の窓から見る青空が怖い。学園通り、強いられた選択としてのオールドスクール。約束を裏切り、雲の出てきた空を背負った。その日。その雲。だれの視線を避けたのか。(ソウルミュージック、秋2)#k2fact203
2018-10-04 08:45:23
月と銀色に光る木々、あっても遺跡のような感じの通りをトボトボ歩き、なんだと思ってきたのか。生きること。滴、こぼしてはいけないことなどない。血、汗、涙、それ以外のものも。アニー・ロリーとか、つい、いいなと溝をたどり、黒くなれば必死の苦味と甘味。(ソウルミュージック、秋3)#k2fact203
2018-10-05 10:10:14
内側の、奥の、遠いあらし、どうなったのか。途中までのニュース。何を守りたい。人を愛して、でも目立たないようにしながら。ウサギは見た。茶色のほう。賢いほうだ。東四丁目、食材宅配サービスの車がよく停まっていて、さわってくる手に困った正確さがある。(ソウルミュージック、秋4)#k2fact203
2018-10-06 11:03:06
ウサギを見たら祈りなさい、ではなかった。寒い朝に死んだ詩人の言葉。その耳や目のために祈ることができて、ゆっくりと動かす手はウサギになる。賢くないほうの白いウサギだが、きみはどうする。ぬるい風。そんなに、この世への執着。何を取り返したいのか。(ソウルミュージック、秋5)#k2fact203
2018-10-07 09:55:12
季節はずれの、なつかしい住所。焦がした構成を泣きながら後戻りして、出血する手でドアをたたく。泣くのはおなじでも、失ったもの、手に入れられなかったもの、あきらめてないのがソウルミュージックだ。デイヴの説明。心を打った。発光する芯、あると思った。(ソウルミュージック、秋6)#k2fact203
2018-10-08 12:32:48
だれでもそれはあって、停滞して抱きしめたウサギの息を確かめるはずだ。でも、ないやつがいる。遊んでない。命令を聞いて嘘をつき、監視する目になる。だから、ね。朝にだけ有効な魔法を使う女性郵便局員の物語の隅にちょっと消えて、歌う前の呼吸を整える。(ソウルミュージック、秋7)#k2fact203
2018-10-09 08:38:23
呼ばれたら会いに行く。高い山も、低い谷も、広い川も、じゃまできない。タミーとマーヴィンの歌。半世紀たっても引き渡されていない天使たち。きょうは撫でる。あすはつかむ。次の日にはまた別なこと。では、だれが悪いのか。わかっても言わずに弁当食べる。(ソウルミュージック、秋8)#k2fact203
2018-10-10 11:31:40
八百ぎんの弁当。おかず七品、ごはん大盛りで、四五〇円。許せるという以上のものだ。缶ビールかチューハイで祝いたいこともあったが、二人の友の命日。窓をあけて静かな手紙を書いた。save meと訴えない。地図にピンも刺さない。反発力、トロンボーンに。(ソウルミュージック、秋9)#k2fact203
2018-10-11 12:00:51
天使でも悪魔でもないが、老い方カッコいいトロンボーン奏者。どうしたかな。最後は東四丁目からNY経由で帰る中蒲原郡、埋立地のサルサ。歌いながら、地面に割れ目つくって生えてくる草たちに挨拶する。この秋、とくになにか足りないというわけじゃないよね。(ソウルミュージック、秋10)#k2fact203
2018-10-13 08:55:59