2018年京都SFフェスティバル 飛浩隆先生のレポートツイート その4

飛浩隆先生による詳細な京フェスレポートその4です。ゲンロン創作講座受講生の作品へのアドバイスを中心とした創作論。からなんと『零號琴』第五部をめぐる作者と編集者との攻防へ。そして実は! これを無料で読めるのはめちゃくちゃすごいことなんじゃないですか、もしかして。 『零號琴』は10月18日発売です。 その1はこちら→https://togetter.com/li/1274530 その2はこちら→https://togetter.com/li/1275697 続きを読む
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飛浩隆 TOBI Hirotaka @Anna_Kaski

はい。前言撤回して京フェスレポートは新スレッドを立ち上げます。しかし俺、なんでこんなに詳細なレポをしているのであろうか……(虚空を見る)。で、麦原氏の近日配信開始「逆数宇宙」についてであり、大森望が麦原に改稿のアドバイスをしたところからでしたよね。えーっっと(思い出し中)↓

2018-10-15 20:58:55

ちなみに麦原遼さんの「逆数宇宙」はこちら。
https://school.genron.co.jp/works/sf/2017/students/mhrx/1980/

飛浩隆 TOBI Hirotaka @Anna_Kaski

「逆数宇宙」の前半は、文明育成もの(!)なのですが、たしか大森さん、そこで育成される側の生物をもうちょっと魅力的に、みたいな話をしたんですよね。そこで「じゃあどんな手が考えられるか」をゲンロンの連中と話していて、はたと気づいた。待てよ……よ。↓

2018-10-15 21:03:47
飛浩隆 TOBI Hirotaka @Anna_Kaski

あるいはこういう指摘もされたのよね。ややネタバレめくけど終盤で展開される「あるもの」の分裂、というか複数化というか。これについてもありふれているという。(念のため言っとくと大森さんは「逆数宇宙」ぜんたいは高く評価してますよ。)なるほどなるほどそうかもしれない……しかし待てよ ↓

2018-10-15 21:07:58
飛浩隆 TOBI Hirotaka @Anna_Kaski

覚えてますかね。俺はちょっと前に「逆数宇宙」についてこういうツイートをしているのだ。 twitter.com/Anna_Kaski/sta… ↓

2018-10-15 21:10:15
飛浩隆 TOBI Hirotaka @Anna_Kaski

面白いのは、テキストのサーフィスはプレーンなのに、なんかその下に「ダマ」が感じられるのよね。みがいたコンソメやよく濾したヴィシソワーズじゃなくて、オーツのポリッジみたいな。そこが後続作でどうなるかも読みたいなあ。

2018-10-03 19:10:28
飛浩隆 TOBI Hirotaka @Anna_Kaski

ハードSFとしてはもっとプレーンでスムースなテキストが適しているかもしれないんだけど、そこに十分に計算されたものではない「むら」、不整地な感じがあって、たとえば冒頭から提示されるあるものの二重構造は、このプロットに必須ではないが、しかしそこから導かれたひとつの場面は、↓

2018-10-15 21:20:40
飛浩隆 TOBI Hirotaka @Anna_Kaski

名場面とはいえないけれどたしかに「何か」ではあったような印象を得た。そこだけ取り出して単体で計量したらどってことないページではないかもしれない。ではそこはローラーで整地してよいのか。もしかしたらそれはなにかの「芽」かもしれないのだ。さて、私はこの書き手になんといえば良いのか?↓

2018-10-15 21:26:59
飛浩隆 TOBI Hirotaka @Anna_Kaski

結論、というほどのことではない。口からでまかせで、しかしごくごく当たり前のことを(管をぶんぶん巻きつつ)言った。「指摘はちゃんと聞け」「しかし真に受けて、そのまま直す必要はない」「(できることなら)むしろ裏切れ」である。↓

2018-10-15 21:34:37
飛浩隆 TOBI Hirotaka @Anna_Kaski

まず「聞け」というのは「言うことを聞け」の意味ではなく、「何と言っていたか聞いて理解しろ」ということ。大森さんクラスの読み巧者、あるいは信頼のおける編集者なら、そこに「なにか(過剰であったり、不足であったり、平凡さであったり、流れの途切れであったり、理解しづらさでったり」を↓

2018-10-15 21:45:46
飛浩隆 TOBI Hirotaka @Anna_Kaski

感じ取ったのだ。編集者はいろいろ文句をつけるけれど、その部分の問題を芯で捉え得ているかと言ったらそりゃはまあ限界がある。でもとにかく「そこに何かひっかかるものがある」ことは察知する(ひともいる)。「なにかが検出されました。ルーペを使いますか?」というレポートして受け取れ。↓

2018-10-15 21:50:30
飛浩隆 TOBI Hirotaka @Anna_Kaski

そしてそのメモを畳んで胸ポケットに入れとけ。そういう意味である。指摘にとびついてパクっとやる必要はない。だって編集者が見ているのは二次元のテキストでしかない。作者は(書いてる途中の作品の)もっともっと豊かな総体から、たまたまある時点で切り出した、その断面しかかれらは見ることが ↓

2018-10-15 21:54:36
飛浩隆 TOBI Hirotaka @Anna_Kaski

できない。こっち(作者)は、そこに書かなかった/書けなかった/その時点ではまだ気がついていなかった/事柄を大量に持っているのである。三次元の、不確定の、ぶよんぶよんした、でかくてあやしいものを持っているのだ。↓

2018-10-15 21:56:48
飛浩隆 TOBI Hirotaka @Anna_Kaski

(てにをはが完全に崩壊してますけど、高速で読めば大丈夫かもしれません)

2018-10-15 21:59:00
飛浩隆 TOBI Hirotaka @Anna_Kaski

話は戻るけど、つまり編集者が出してくる修正意見は、その一断面の中から拾ってきた(ひどい場合はその人物のこれまでの見聞から導き出された)アイディア以上のものにはならない。なので作者はその意見に対して「?」と感じる。なんだか説得力もあるので、真に受けてその提案を実装しようとする。↓

2018-10-15 22:37:08
飛浩隆 TOBI Hirotaka @Anna_Kaski

もちろんそれでうまく行くこともあるのだ(なかったら編集者の存在意義はないよ)。ただ言うまでもなく、待てよ、と立ち止まる権利が作者にはある。作者の側にはもっと大きなその作品の「実質」があるのだ。多くの場合、作品に敷き詰められた一連の文章は、その「実質」とのあいだに繊細な ↓

2018-10-15 22:39:24
飛浩隆 TOBI Hirotaka @Anna_Kaski

対応関係を持っている。他者から提案された修正意見はプラクティカルなものだが、「実質」が持っているのは、もっとなまなましい、作者の内面にある複合体に由来している。そいつが「?」と首をひねってはいないか。納得していないのではないか。もしそうならその修正に「乗る」必要はない。↓

2018-10-15 22:42:25
飛浩隆 TOBI Hirotaka @Anna_Kaski

(とこう書いてみたけど、作者は、居直る権利はあるけれど居直ったその結果は自分で引き受けなければいけませんからね。俺は責任とれませんからw)↓

2018-10-15 22:45:54
飛浩隆 TOBI Hirotaka @Anna_Kaski

で、麦原氏にはこういうたとえ話をした。ある科白がなんだか不自然で、そこをこう直しては、という提案があったとする。なるほどたしかにこの科白、自分でもなんだか収まりが悪いと思っていたんだよね。じゃあ言われたとおりに直してみましょうか、あれれ、そうするとそのあとの文章への ↓

2018-10-15 22:48:03
飛浩隆 TOBI Hirotaka @Anna_Kaski

つながりがぎくしゃくしちゃうぞ、う〜ん、ではこう直すか、いやいやもっと妙だ。ええっと、あれ? どうすりゃいいんだ? ↓

2018-10-15 22:49:30
飛浩隆 TOBI Hirotaka @Anna_Kaski

……となることがある。たぶん、その科白には「なにか」がある。流れがよどんでいるのか、そこで言われるべき情報を伝えきっていないのか、科白を発した人物のキャラクターにそぐわないとか。それを編集者は見咎めた。なるほど。 でも、 直さなきゃいけないのはその科白とはかぎらないよね? ↓

2018-10-15 22:51:54
飛浩隆 TOBI Hirotaka @Anna_Kaski

もしかしたら真の問題は二、三行前や十ページ前の記述にあるかもしれない。そこにちょっと手を入れたら「ああ、そりゃこういう科白が出てくるよな」となる。あるいは話者はとなりにいる別の人物であるべきだったのかもしれない。なんなら科白を丸ごと削除してしまった方がよい、って事もある。↓

2018-10-15 22:55:13
飛浩隆 TOBI Hirotaka @Anna_Kaski

編集者からの提案に、それを上回る別の提案をすること。それができたときは気持ちがいい。言われたとおりに直すよりも、ずっとずっとよいもの(と作者が信じるもの)になるからだ。あーなるほど、この作品はここでこう語りたかったんだ、というものが掘り出せるから。↓

2018-10-15 22:59:09
飛浩隆 TOBI Hirotaka @Anna_Kaski

それはむしろ作者にとってこそ、とても新鮮で、目の前の風景がいきなりいろどり豊かになるような瞬間なのだ。だから(くりかえすが)言われたことには一応耳を傾ける。そして ↓

2018-10-15 23:01:12
飛浩隆 TOBI Hirotaka @Anna_Kaski

「なぜあいつは、ここを直せと言うのか?」「あいつはここに何を感じたのか」「その違和感はこの俺様が受け止めるだけの価値がある提案か?」「あいつがここに違和感を抱く『その真の原因』はどこにある?」これを咀嚼する、徹底的に考える、そして「敵」の裏をかいて、あっと驚くような ↓

2018-10-15 23:03:51