フリージング・フジサン ＃１

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

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【フリージング・フジサン】#1

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「デイリだ！デイリだ！」「ドシタンス！」「ソウカイヤか？」「スッゾ……なんかわからねえ！」「ヤバイ！」過冬の漢字ノレンをくぐり、ヤクザ達が事務所から路上に飛び出した。彼らが目にしたのはしかしソウカイヤではなかった。「ザッケンナコラー！」「スッゾオラー！」海の男たちだ！　1

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「グワーッ！」「アバーッ！」衛兵ロシアンクローンヤクザ達は既に打ち倒され、緑の血だまりに倒れていた。「エッ？海の男？」「クローンは？」「じゃあ俺達が？」「チャルワレッケ？」ヤクザ達は蒼ざめ、ドス・ダガーを手に取りながら顔を見合わせた。海の男たちが殺到する！「ウオーッ！」　2

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「グワーッ！」「グワーッ！？」ドスを構える猶予もなく、襲い掛かった海の男たちは錨タトゥーも勇ましい腕でヤクザを殴り倒し、ショウジ戸に叩きつけた。KRAAASH！カドマツ無惨粉砕！「テメェら！過冬に楯突いてどうなるかわかっとんのかい！」血塗れのワカモノはチャカを向けて凄むのがやっとだ。　3

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「ウオーッ！」「グワーッ！」赤銅色に日焼けした海の男がチャカヤクザを殴り倒した。「わかっとるわ！この寄生虫どもが！」「燻蒸消毒だコラー！」「ヤッチマエ！」ナムサン！第二波！それは海の男ですらない。この地区の市民！巨大な木槌を手に手に持ち、ヤクザ事務所の柱を攻撃する！KRAASH！　4

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「イヤーッ！」KRAASH！木槌！フラストレーションの爆発だ。これは冷徹な事実を示す。数の上で過冬のヤクザは当然市民よりもずっと少ない。同じ人間一人一人が怒りに燃えれば不利なのは過冬の側だ！だが、モータルでなくばどうか？「イヤーッ！」「グワーッ！？」事務所内からスリケン飛来！　5

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「イヤーッ！」「グワーッ！」「イヤーッ！」「グワーッ！」スリケンは猛った海の男や市民を無惨に殺す！たちまち事務所の包囲が崩れ立った。中から酷薄なニンジャが進み出た。「うるせェゴミ虫ども」赤く巨大な盃のサケを飲み干し、円盤めいて構える。「俺に首を刎ねられてェ奴はどいつだ」　6

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「どけ、どけい！」緊迫する市民を掻き分け、ねじりハチマキとメンポを装着したニンジャが進み出た。「ドーモ。タイダルテンペストです」屈強なニンジャはアイサツした。過冬のニンジャは応えた。「ドーモ。レッドゴブレットです。ソウカイヤのニンジャか、テメェ」「誰だって？ナメるんじゃねえ」7

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タイダルテンペストは波濤タトゥーの腕にカラテを漲らせた。「こちとら一年の360日は遠洋漁業よ。忙しさにかまけて家を疎かにすりゃこのザマだ。テメェらをブチのめすのが俺様の反省よ」「なにィ……？」レッドゴブレットは殺意に猛り、盃ソーサースリケンを構えた。「ウオーッ！」市民が歓声！　8

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「イヤーッ！」レッドゴブレットは盃ソーサースリケンを投擲！首を狙った刃をタイダルテンペストは両腕を盾に防ぐ！骨にまで達する盃スリケン！血飛沫！市民たちが悲嘆に喘いだ。だがタイダルテンペストは突き進む！「腕がダメなら脚だろうが！イヤーッ！」ミドルキック！「グワーッ！」脇腹！　9

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ボキボキと肋骨を軋ませ、レッドゴブレットは目から血を噴く。そして殴り返す！「イヤーッ！」「グワーッ！」「たかが魚取りカタギに過冬の誇り高きヤクザがナメられっかオラーッ！」「イヤーッ！」タイダルテンペストは頭突き！「グワーッ！」「こちとらお天道様に胸張って働いとるわドヤクザが！」10

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「イヤーッ！」「グワーッ！」「イヤーッ！」「グワーッ！」殴り合う血みどろのニンジャ二人を交え、市民と海の男が事務所に雪崩れ込んだ。ナムサン！そうした争いの波が、港湾地区から徐々に内陸へと浸食しつつあった。KABOOM！KABOOOM！あちこちであがる花火！暴力の応酬！　11

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「ナムサン」「今度は何だ」窓際で市民が眉をしかめる。所詮、人口比率にすれば僅かな者達の争いに過ぎぬかもしれない。だがそれはこの地の闇と暴力の世界を何者に属させるか…マッポー世界のパワーバランスを定める重大な戦いであった。事務所が倒壊し、「む」や「め」「大漁」のマトイが屹立した。12

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「アタシの強烈な対物兵器を食らいたいか！」サイバネアームのスージーが物騒なマシンライフルを構えて凄むと、観念した過冬ヤクザが膝をついてホールドアップした。「畜生め……ニンジャが戻ればテメェどうなるか！」「未練たらしい腰抜けだね。こちとら失うものはないよ。フジミはメチャクチャだ」13

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「そうだテメェ！ま……負けねえぞ」レニとマティスがボーや消火斧を手にして凄んだ。「ニンジャがなんだってンだよ……兄貴がそんな連中はまとめてやっつけるぜ！」KABOOM！呼応するかのように、海の方角、シトカ港湾取引管理ビルの高い影が火と煙を噴いた。「な！？」ヤクザが慌てた。　14

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シトカに国家は無い。ただ力と金が支配する。即ち過冬のヤクザニンジャとエメツ経済が全てだ。港湾取引管理ビルは過冬の居座る物流の心臓。ひとたびその力が弱みを突かれ、覆されれば……。「こんなの聞いてねえぞ！」ヤクザは呻いた。「イヤーッ！」スージーが蹴り倒す！「ムン」ヤクザは気絶！　15

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「あれ、きっと兄貴だ」レニが呟いた。「そうだな」マティスは頷き、笑顔になろうとしたが……なれなかった。ビルの近くにはタイ・ジイ（太極）の形に光が欠けた太陽が浮かんでいる。異常な太陽だ。弱々しいその光では、街を覆うオーロラを消し去ることはできない……。　16

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「イヤーッ！」KRAAASH！ホローポイントは扉を蹴り壊し、廊下にエントリーした。やはりそこにも傷つき倒れたロシアンクローンヤクザの姿がある。「何だ、こりゃあ……」彼はガーランドを振り返った。「気に入らねえ」「先客が誰であろうと目的は変わらん」ガーランドは進み出た。　18

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港湾取引管理ビルは過冬経済の要。速やかにこの地を抑え、屋上にクロスカタナの旗を立てれば、過冬のメンツは地に堕ちる。シンウインターの居場所は今の時点ではわからぬ。だが、何処に居ようが、他所のヤクザにシノギの拠点をファックされれば、自らが出て来ざるを得まい。19

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中央区でのイチモ・ダジン攻撃を阻止したのち、ガーランドとホローポイントはインシネレイトらと合流。再度のブリーフィングを行い、港湾地区に向かった。ガーランド自身は打倒過冬よりも重大な目的を秘めている。シンウインターを引きずり出し、娘のオリガを確保する事だ……。　20

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KABOOM！上階で物騒な爆発音と震動があった。ガーランドは……慣れたくもなかったが……それに慣れ、よく知っている。インシネレイトのカトン・エクスプロージョンだ。テレビ放送局じみて迷宮めいた構造をもつこの港湾地区。彼らとインシネレイトたちは二手に分かれて上階を目指していたのであるが。21

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「やれやれ野郎め」ホローポイントはインシネレイトを評した。「それはいい。アレでよく働く」ガーランドは言い、先に進んだ。進むほどに、ロシアンクローンヤクザよりも、地元市民とおぼしき装いの者らの死体比率が増えてくる。今このシトカは騒々しい。何らかの理由で激しい争いが起きている。　22

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ガトリングガンヤクザの死体の前には、折り重なるように複数の者達が倒れている。無謀ともいえるが、勇敢に怒り狂っている。BLAM！KRAASH！いきなりホローポイントが窓に向かって銃を撃った。「消えろ」ホローポイントは呟いた。それが付近の敵の注意を引いた。「イヤーッ！」会議室から飛び出す影！23