フリージング・フジサン #4
「ハイヤーッ!ハイッ!ハイハイッ!ハイッ!ハイハイハイッ!」踏み込み!掌打!突き上げ!打ち下ろし!踏み込み!下段蹴り!右拳!左拳!右拳!コトブキの連続カンフーがラジエイターを激しく襲う!「チィッ!」ラジエイターは不快感に顔をしかめ、ウキヨの打撃をさばきながら後退する。侮れぬ! 1
2018-10-25 21:47:30「鬱陶しいぞ!オイランドロイドめ!」ラジエイターは吠え、ボトルネックカットチョップで反撃した。「イヤーッ!」だが、そのチョップの出がかり!「ゲーッ!」カラスが羽ばたくと、放たれた黒く輝く飛翔体が不規則軌道で襲いかかり、その勢いを殺す!首切断不可!後ろに転がり離れるコトブキ! 2
2018-10-25 21:50:24BLAM!BLAM!姿勢を下げたコトブキ越しに、シキベが49マグナムで銃撃した。ラジエイターはムテキ・アティチュードで銃弾を防いだ。彼はニンジャとしてはさほど精強な部類ではない。しかし非ニンジャを相手に後れを取る要素などなかった。確かにこの者らの戦闘能力は高い。しかし……。 3
2018-10-25 21:54:24「ゲーッ!」カラスが目を光らせ、大きく羽ばたくと、その影は三倍近い大きさにアトモスフィア強調されて映った。ラジエイターは悟った。最大の脅威はこのニンジャアニマル……否……ニンジャ……?「ヌウウッ!」バチバチと音を立て、ペイント弾じみて飛翔弾が破裂し、アティテュード集中を妨げる。4
2018-10-25 21:57:24「動物……しかし……否……!」ラジエイターは困惑した。彼のニンジャ第六感は単なる「危険な動物」以上の脅威を警告している。その動きには状況把握と行動予測、油断なきショーギめいたコントロールが伴っていた。彼はワイズマンの恐るべきカラテを目の当たりにしたときに似た畏怖をおぼえる。 5
2018-10-25 22:01:19カラス……実際カラス、三本足ではあるが、それはカラスだ。では何故、歴戦のニンジャ戦士めいた迫力を放つ?「ゲーッ!」ムテキするラジエイターにカラスが飛び来たり、構えた腕に止まった。カラスと目が合った。カラスはニヤリと笑う。その瞳の奥には、老獪さ、人生の重みと悲哀。 6
2018-10-25 22:06:13(俺みたいな弱っちい生き物相手に、何をムキになってやがるんだね?)「黙れ!」ラジエイターは幻聴を聞いたように思った。おののきながらカラスを振り払った。「ゲーッ」カラスが飛び離れ、この墓標じみた空間を旋回する。コトブキが……ワン・インチ距離だ。「ハイヤーッ!」「グワーッ!」 7
2018-10-25 22:09:22ラジエイターの腹部に、コトブキの両掌が衝突した。衝突の瞬間、彼女の身体は流水めいたカラテの流れを生じ、ラジエイターの肉体にダメージを与えていた。ラジエイターは唸り、後ずさった。「ウケテミヨヨロシク!」コトブキは追うように踏み込み、拳を突き出した!「ハイヤーッ!」「グワーッ!」 8
2018-10-25 22:16:45KRAAAASH!吹き飛ばされたラジエイターは柱に背中から衝突!「グワーッ!」コトブキはザンシン!「これが聖なるポン・パンチです……!」「アバッ……こんな」BLAMN!進み出たシキベが息を止め、少し顔をしかめながら、引き金を引いた。「サヨナラ!」眉間を撃ち抜かれたラジエイターは爆発四散した。9
2018-10-25 22:20:01「ゲーッ」カラスがシキベの腕のUNIXを嘴でプッシュした。「ゴウランガ」と。コトブキは恐縮した。「わたしだけでは勝てない相手でした」実際その通りではある。だがキンボシ・オオキイだ!シキベが銃をおさめ、促した。「い……行きましょう。管理室へ。他の奴が来たらまずいッスよ」 10
2018-10-25 22:24:10シキベの肩の上で、カラスは胸を膨らませ、満足げだ。シキベがコトブキに尋ねる。「何スか?聖なるポン・パンチって」「聖なるユンシェンの恐るべきカンフー・ヒサツ・ワザです。わたしがその域に達することなどできませんが……センセイや、サンスイの修行が必要な筈です」「そうッスか」 11
2018-10-25 22:32:45「旅先で幾つかの古代データ・ライブラリにアクセスしたのです。それらはわたしに新たな道を示してくれたと思います。ユンシェンは19世紀の記録です。もっと勉強しないといけません……アッ!」「シッ」二人は同時に警戒し、異様なノレンのかかった扉を前にして、反射的に物陰に隠れた。 12
2018-10-25 22:37:53「所長、どうッスか」シキベがカラスに確認した。カラスは目を細め、集中した。そしてシキベの腕のUNIXをタイプした。「ニンジャ ナイ」一度顔を上げ、また打ち込む。「オソラク」。コトブキは拳を握りしめた。「ダイナミックエントリーです」「援護します。所長がいれば、さっきのようにいく筈」13
2018-10-25 22:43:31……プロコココ……プロコココ……。陰鬱なモニタルームで、アダナスの出向社員イータは機械から抽出したブラックマッチャを啜り、微かに首を傾げた。ラジエイターの戻りが遅い。妙だ。彼は何らかの通信の見落としがないか確認した。それから定点カメラの映像を見てゆく。「……」 14
2018-10-25 22:49:30ザラついた映像品質は超常現象ホラーじみて、イータの心をそれなりに楽しませる。しかし彼は、ニンジャを薬物コントロールしたり、ニンジャに愉しみを与えてコントロールするほうが当然好きだった。その対象であるラジエイターが彼のコントロール外にあるのは気に入らなかった。 15
2018-10-25 22:51:25定点カメラ映像には海を挟んだシトカの街の光景も幾つか混じっている。彼の眉が動いた。「暴動ですか」マトイやハンマーを担ぎ、暴れまわる者達が垣間見える。「過冬」のノレンを掲げた建物が被害を受けている。「……これは大変ですね。参ったな」抑揚のない声で彼は呟いた。この騒ぎと何か関係が?16
2018-10-25 22:54:30映像内で、今度は黒い影じみた化け物たちが手前から奥へ、ゾワゾワと進んでゆくのが見えた。イータはこの存在を情報として知っている。カシマールの超自然の兵団である。なんとも破滅的な光景だ。気象情報を確認。月蝕?おかしなことだ。それを言うならば、オーロラも大概ではあるが……。 17
2018-10-25 22:58:18「ラジエイター=サン?許しませんよ?」イータはIRC通信をコールした。「応答なさい」応答なし。イータは舌打ちし、出入り口に向かおうとした。「ハイヤーッ!」KRAAAASH!「アイエエエエ!?」尻餅をついたイータは飛び込んでくる二人の女を見る!だがその視界を影が覆う!カラスだ!「ゲーッ!」18
2018-10-25 23:00:32「アイエエエ!」「ゲーッ!」カラスはイータを激しくついばみにかかる!「やめ……暴力は!おやめください!」「ゲーッ!」「貴方達!やめさせなさい!」しかしコートの女は……シキベは銃を構え、タキシードの女は……コトブキは、油断なきカンフー・カラテを構えたのである。 19
2018-10-25 23:03:53「ニンジャではありませんね、貴方」コトブキは確認した。「ゲーッ」カラスはシキベの肩に戻った。「当然です。何を言っているのですか。ラジエイター=サンはどこです?貴方がたは?何故銃を?」「ラジエイター=サンは死んだッスよ」シキベは暗く言った。「この銃が答えッス」 20
2018-10-25 23:06:19「何をバカな。ニンジャですよ」「こっちにもニンジャは居ますよ」「ゲーッ!」「襲撃……何という事だ」イータは状況を把握しはじめた。「参りましたね……サンシタであることは当然承知の上でしたが、こうまでブザマとはね」「その……なんかいけ好かないッスね、アンタ」「お構いなく」 21
2018-10-25 23:08:28「始めましょう。タキ=サン?準備はいいですか?」コトブキはUNIXをあらため、LAN直結した。キキーカリカリカリ……UNIX駆動音がせわしない。「アンタ、過冬の奴ではない、みたいスね」シキベが確認した。イータはホールドアップし、頷いた。そして側頭部のタトゥーを示す。「アダナスです」 22
2018-10-25 23:11:56「アダナス……!」シキベは眉根を寄せた。「このオマークの管理?出向社員ッて事スか」「仰る通りです。ヤクザにこのシステムは荷が重い。で、あなた方はどうやってここに侵入したのですか?まずあり得ない話です。過冬の防衛を突破したのですか?」「質問するのはこっち」シキベは冷たく言った。 23
2018-10-25 23:15:05