ライトノベル作家・扇智史の考えたまどかマギカラストエピソード妄想

最終話ネタバレ満載注意。
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バーチャル後方見守り女/扇智史 @o_g_s_t_

自分がどこの星にいるのか、いつの時代にいるのか、ほむらはとうに思い出せなくなっている。

2011-04-26 00:10:55
バーチャル後方見守り女/扇智史 @o_g_s_t_

思い返せばそもそも、前の世界からこうだったのだ。時間操作の魔法を幾度使っても、彼女はよけいに老いることはなかった。それが不自然だと気づいたのは、たぶん、今の時間で5年ほど経ってからだ。やせた体は成長を知らず、長い髪は切る必要がなかった。

2011-04-26 00:12:40
バーチャル後方見守り女/扇智史 @o_g_s_t_

他の魔法少女、ひいては他の人間と異なり、ほむらはこの世界に突然出現した。そのせいもあってだろうか、彼女の時間はついに、他人と同じようには流れなくなってしまったらしい。

2011-04-26 00:14:06
バーチャル後方見守り女/扇智史 @o_g_s_t_

記憶は古いものほど強く刻まれる。だから、まどかのことは当然として、杏子やマミやさやかのことは覚えていても、それからこの何十年、何百年、それとも何万年かの戦いの中で出会った人たちのことは、もう覚えていない。

2011-04-26 00:16:12
バーチャル後方見守り女/扇智史 @o_g_s_t_

この砂漠に浮かぶ太陽は、死を目前にした赤色巨星のように、破滅的に燃えさかっている。とはいえ、ワルプルギスの夜に比べれば恐るるに足りない。あれと何度も戦って何度も敗北していたころの、幼く弱いほむらではない。

2011-04-26 00:17:54
バーチャル後方見守り女/扇智史 @o_g_s_t_

経験的な事実として、星の終わりには魔獣が蔓延る。それは、種の終焉という巨大な絶望、取り返しのつかない世界に対する怨念の結晶だ。魔法少女・暁美ほむらは、その絶望をも砕く。この星に生まれた魔獣も、ついさっき、すべて滅ぼし終えた。もう、この星に絶望は宿らない。

2011-04-26 00:19:55
バーチャル後方見守り女/扇智史 @o_g_s_t_

幾多の星、幾多の文明の絶望を救ってきたほむらも、しかし、そろそろ限界のようだった。星間に拡大した文明が生み出す恨みは級数的に増大し、その多くと戦うことで、ソウルジェムの穢れはインキュベーターが処理可能な限界を超えていた。その上、彼女はあまりに長く生きすぎ、疲れすぎた。

2011-04-26 00:22:34
バーチャル後方見守り女/扇智史 @o_g_s_t_

文明が拡大するごとに魔法少女もその数を増していたはずで、ほむらはそんなに無理をしなくてよかったのかもしれない。しかし、彼女は突き動かされるように戦い続け、いくつもの星を救った。彼女自身が神と呼ばれたことも、一度や二度ではなかったと思う。

2011-04-26 00:25:22
バーチャル後方見守り女/扇智史 @o_g_s_t_

ずっとついてきた相棒であるインキュベーターさえも、百二十代目あたりからほむらを人と扱わなくなった。ある意味で”まどか”に近い、魔獣を滅ぼす概念に似たものとして、ほむらを見ていたのだろう。

2011-04-26 00:27:15
バーチャル後方見守り女/扇智史 @o_g_s_t_

現に、少しずつ、ほむらはまどかを近しく感じるようになっていた。酷似した超越性、ふたつの無限。同じスケールを持ち、決して重ならないけれど、どこかで重なっている。世界の抱え込んだふたつの矛盾が、まどかと、ほむらだった。

2011-04-26 00:29:33
バーチャル後方見守り女/扇智史 @o_g_s_t_

砂漠の真ん中、ほむらはたったひとり立ち尽くす。もうインキュベーターは姿さえ見えない。あいつはあいつで、小動物に擬態することをとっくにやめて、機構的な存在になってしまったようだ。あるいは、空に浮かぶあの衛星がインキュベーターだったような気もする。

2011-04-26 00:31:18
バーチャル後方見守り女/扇智史 @o_g_s_t_

焼けつく白い空を見上げて、ほむらはそのまま、砂の上に仰向けに倒れる。最後の時だ。右手には、あれ以来ずっと得物にしていた弓、左手には、真っ黒く濁ったソウルジェム。この時を待ち望んでいたような、それとも、ずっと来て欲しくなかったような。

2011-04-26 00:33:55
バーチャル後方見守り女/扇智史 @o_g_s_t_

「やっと会えたね」まどかの懐かしい声、懐かしい笑顔。それは、夢の中で会ったような、遠い追憶の出会い。

2011-04-26 00:35:37
バーチャル後方見守り女/扇智史 @o_g_s_t_

「ごめんね、ずいぶん長く、ひとりぼっちにさせちゃったね」「問題ないわ」言葉をずっと発していなかったから、のどが声を忘れたかと思ったけれど、心配なかった。あるいは、声ではない何かで通じ合っているのかもしれない。熱に浮かされたようで、もうよく分からない。

2011-04-26 00:37:45
バーチャル後方見守り女/扇智史 @o_g_s_t_

「まどかの作った新しい世界、なかなか悪くなかったわ」「良かった。もしも前より悪くなってたら、ほむらちゃんに怒られると思って、ちょっと怖かったの」「神さまなのに?」こんなに自然に笑えたのは、いつ以来だろうか。「だって」まどかが、昔のように、困惑気味の表情を見せた。

2011-04-26 00:39:36
バーチャル後方見守り女/扇智史 @o_g_s_t_

「だって、そしたら今度はほむらちゃんか、また別の誰かが、わたしの作った世界を作り替えちゃうかもしれないじゃない。それって……」不安そうなまどかを、ほむらは、つとめて落ち着いた声で慰める。昔みたいに。「その心配はなかったと思うわ」

2011-04-26 00:41:44
バーチャル後方見守り女/扇智史 @o_g_s_t_

「私の他に、時間を操作する魔法少女には出会わなかった、と思う。よくは覚えてないけれど」気づいて、ほむらは微笑む。「つまり、やり直したい、という強い願いは存在しなかった、ってこと……それはたぶん、前の世界より、幸福だったのね。ほんの少しだけでも」

2011-04-26 00:43:53
バーチャル後方見守り女/扇智史 @o_g_s_t_

時を遡って因果の糸を束ねる魔法少女も、束ねた因果の中心で神となりうる魔法少女も、この新しい世界にはいなかった。「だったら、良かった」まどかは心底ほっとしたように笑い、また、眉をひそめた。「じゃあ……ずっと、気になってたこと、訊くね。ほむらちゃんの願いは、叶ったのかなあ?」

2011-04-26 00:46:11
バーチャル後方見守り女/扇智史 @o_g_s_t_

「わたしがずっと叶えたかったのって、それで。……覚えてる、思い出せるよ、ほむらちゃんの最初の願い」「私も覚えてる。まどかとの出会いをやり直したいって。まどかを守れる私になりたい、って」

2011-04-26 00:48:05
バーチャル後方見守り女/扇智史 @o_g_s_t_

「守られてたよ、わたしは。ほむらちゃんがずっと魔獣と戦ってくれたから、わたしの作った世界は壊れずにすんだ。もしもこの世界が壊れるようなら、わたしは死ぬのといっしょだからね……」

2011-04-26 00:49:38
バーチャル後方見守り女/扇智史 @o_g_s_t_

「けど、それでよかったの? 結局、この最後の最後にしか、わたしはほむらちゃんと向き合えなかった……それでよかったの?」

2011-04-26 00:51:24
バーチャル後方見守り女/扇智史 @o_g_s_t_

「もちろんよ」ほむらは弱々しく、しかしはっきりとうなずいた。掌の上で、漆黒のソウルジェムは転がる。「出会いをやり直すのは、別に、重要なことじゃなかったから。ただ……私は、まどかといっしょに歩きたかっただけ。同じ時間を、ふたり並んで」

2011-04-26 00:53:08
バーチャル後方見守り女/扇智史 @o_g_s_t_

「その願いは、叶ったね」「ええ、たとえ無限の道のりでも、辛くはなかったわ。忘れずにすんだから。ずっとまどかを近くに感じていられたから。それに、約束通り、今この瞬間に迎えに来てくれると信じていたから」

2011-04-26 00:55:04
バーチャル後方見守り女/扇智史 @o_g_s_t_

目の前が暗い。まぶたを閉じても、赤色巨星の強い光が見えなくても、まどかの姿はすぐそばにある。いつかの昔、こうして、まどかとふたり並んで横たわったことがある。あの時は、ふたりとも魔女になりかけていた。それを救ってくれたのも、まどかだ。

2011-04-26 00:57:00
バーチャル後方見守り女/扇智史 @o_g_s_t_

あの日々の間は、いつもまどかに助けられていた。その永遠に思えた輪廻も今ははかなく、遠くあまりに遠く離れた世界の果て、まどかとずっと歩んだ旅路の果て、まどかに抱かれ、ほむらは眠りにつこうとしている。

2011-04-26 00:58:50
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コメント

@S_Nakatsu 2011年4月26日
神(システムor父)と戦う話って、《戦って負けました》デビルマンエンド、《戦って一時の勝利orシステム更新を得たけど、今後も永遠の闘争》百億の昼と千億の夜エンドの二つが定番。この解釈だと後者だけど、部分的にゴルディアス三部作的にエントロピーへの部分的勝利を謳っていて楽しいね。
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meeakat @meeakat 2011年4月26日
最終話Cパートの独自解釈的SS。悪くない。
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