エレン先生と中学数学

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uroak_miku @Uroak_Miku

第六部第四章へ。都立高校入試英語の分析その2。 ① 英語圏からの留学生(か英語圏への留学生)が必ず出てくる ②「どこそこへ行こう」「いいね」が出てくる ③ 電子メール文面が出てくる ④ プレゼンが出てくる ⑤ プレゼンの話の切り出し方が必ず「Do you know ~ ?」 ほかいろいろ

2018-10-29 22:26:32
uroak_miku @Uroak_Miku

⑥ クールジャパンねたは必須 ⑦ would を極力避けたがる 大阪府立入試はまた少し違う特徴がみられる。 全国の公立高校入試英語(と国語)の過去5年分の分析…うわ285(後期の類は除外)もあるやん、ネット公開したら面白かろうに。

2018-10-29 22:29:37
uroak_miku @Uroak_Miku

ここで確認しておきましょう。いわゆる受験産業がこれほど華やかな国なのに、入試や学校教材の英文がおかしいと声が上がらないのは、いったいどういうことなのか?大阪大の物理問題にエラーがあると複数の予備校が指摘してはいても、英語問題についてはそういう話を目にも耳にもしないのが不思議。

2018-10-29 22:31:41
uroak_miku @Uroak_Miku

ときどきいわれる、「オックスフォードとかで、非英語話者のための学習教材がいろいろ開発されているし、ああいうのを日本でもっと積極的に使うべきではないか」と。 私は反対です。理由はいろいろあって、たとえば冠詞の使い分けひとつ、あの手の教材はうまく説明できていないし。

2018-10-29 22:47:51
uroak_miku @Uroak_Miku

母語を石垣にして外国語を学んでいくのが、やはりある年齢を越えてからは王道なのです。 しかし日本ではこの方法論による教材で、これというものがない。どうしてか。

2018-10-29 22:49:21
uroak_miku @Uroak_Miku

敗戦の衝撃をなお引きずっているのが背景としてあります。戦前昭和期に、いわゆる「外地」で「日本語」が生まれ始めていた。「内地」では「国語」、「外地」では「日本語」という二重規範構造が生まれていた。

2018-10-29 22:51:19
uroak_miku @Uroak_Miku

東アジア(つまり中華文明とその周縁文明)を大日本帝国が統べる、いわゆる大東亜共栄圏構想実現のためには、ちょうど英語が世界の公用語としてまわっているように、日本のことばが東アジア公用語にならねばならなかった。 しかし「国語」にはその任は重すぎた。

2018-10-29 22:55:13
uroak_miku @Uroak_Miku

そこでもっと合理化された「日本語」が必要になった。

2018-10-29 22:55:55
uroak_miku @Uroak_Miku

ジャズはかつて黒人の音楽でした。黒人の文化、黒人の身体、黒人の価値観を土壌にして育まれた音楽。しかし高度に理論化され、黒人の身体を有さなくても演奏できるし作曲できるものになっていった。日本のワタナベやヤマシタがジャズ世界の貴公子となったように。

2018-10-29 22:59:34
uroak_miku @Uroak_Miku

ジャズは西洋和声の血がたっぷり入っています。それと同じように、日本の「国語」も西洋言語とりわけ英語の血が入っています。英語の書類や書物を手際よく訳出するためには、翻訳メソッドとして新たな言い回しを用意するしかなかった。「今、私は書類を読みつつある」の「~つつある」もそう。

2018-10-29 23:02:06
uroak_miku @Uroak_Miku

英語の現在進行形を手際よく日本のことばに置き換えできるよう、「~つつ」と「ある」という既存のことばを組み合わせて「~つつある」を作り上げ、英語の翻訳に使い倒し、それがやがて「国語」の一員となっていった。

2018-10-29 23:03:37
uroak_miku @Uroak_Miku

「国語」が黒人ならぬニホンジンの身体を伴わざるをえなかったのにたいし、「日本語」はそうではなかった。私たちがイングリッシュを学んで使いこなすのに、別に英国や米国で育たねばならないわけではないように。

2018-10-29 23:05:37
uroak_miku @Uroak_Miku

つまり私たちニホンジンには、母語が二種類あるわけです。「国語」と「日本語」。後者は育ちかけていたところで大日本帝国が大惨敗して、「外地」に置いてきぼりにされた。いや実際は内地に入ってはいるのですが学校の教室空間からは永久追放された。「アジア侵略の鬼子め!」と。

2018-10-29 23:07:46
uroak_miku @Uroak_Miku

中学数学で、この定理を習いませんでしたか。これの証明には二通りあります。 ひとつは補助線を使う「幾何的証明」、ひとつは数式を使う「解析的証明」。 前者は中学数学で語れるけれど、後者は高校数学でないと語れない。そのかわり一度習えば、ほかの定理の証明にもばんばん応用できる。 pic.twitter.com/ntbbITFDM5

2018-10-29 23:13:01
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uroak_miku @Uroak_Miku

「国語」は幾何的証明で、「日本語」は解析的証明というところでしょうか。 外国人向けの日本語教科書に目を通すと「どこの物理の教科書だよ!」とげんなりしてしまうのですが、そのかわりものすごく応用が利く。

2018-10-29 23:14:52
uroak_miku @Uroak_Miku

「日本語」は解析的ゆえに、普遍性がとても高い。数学が苦手だった方でも、小学校の算数の問題なら解けるはずです。中学で習った連立方程式(塩水の濃度がどうたらこうたらのアレ)を知っていれば、赤子の手をひねるようにして小学校算数の問題なんて解けてしまう。

2018-10-29 23:16:53
uroak_miku @Uroak_Miku

外国語学習についても同じことがあてはまる。その言語のネイティヴさんは幾何的思考をしているので、説明を受けても「その補助線、どうやって思いつくん?!」とため息をついてしまう。 しかし解析的説明をしてもらえれば「ああそうか、三角関数のあの公式を使えば解けるのか!」と腑に落ちる。

2018-10-29 23:19:23
uroak_miku @Uroak_Miku

「日本語」という解析的な語学を石垣にして、外国語を解析的に教えてくれる教材なり教授法が確立されれば、中学英語は劇的に変わるわけですけど――

2018-10-29 23:21:13
uroak_miku @Uroak_Miku

小学生に「日本語」を教えるのは簡単ではない。ちょうど小学生に中学の数学を教えるのと同じ困難が伴う。 たとえばこれを小学生に教え込むのは難しい。 pic.twitter.com/1ve1n8fYwi

2018-10-29 23:23:35
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uroak_miku @Uroak_Miku

これは解析のフィールドだから。 幾何は、解けるかどうかはともかく、どういう問いなのかを子どもらは理解できる。

2018-10-29 23:25:52
uroak_miku @Uroak_Miku

この葛藤はルネ・デカルトまでさかのぼるお話なのですがここでは省略。

2018-10-29 23:26:29
uroak_miku @Uroak_Miku

うーむ大阪府立高校の入試英語の論評をしているうちに、どんどんすごいところに思考が進んでしまったぞ。 先日、高校入試の数学にも目を通して、いろいろ思うところがあったし。

2018-10-29 23:28:03
uroak_miku @Uroak_Miku

江戸時代にも幾何学の本はいちおう入っていた(教科書の漢訳が中国大陸から輸入されていた)のだけど和算家たちは目を通して「直線とは果てしなくまっすぐ続く線のことなり?だと…んなもんあったりまえじゃんか」と放り投げてしまった。いわゆる「公理」の考え方がニホンジンには異質すぎたのです。

2018-10-29 23:30:32
uroak_miku @Uroak_Miku

明治になってからですね幾何学が本格的に日本で学ばれるようになったのは。ほら日本は軍事力の強化が国策だったし、軍事技術は数学あってこそ成り立つから、西洋数学の摂取は急務とされた。

2018-10-29 23:32:08
uroak_miku @Uroak_Miku

そして数学教育の整備が急がれた。向こうで使われている教科書が研究された。 当時のヨーロッパでは先端数学の研究者たちが初等教育にもあれこれ口を出していて、それを日本の教育界は信奉した。

2018-10-29 23:33:52