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韓国の“現実世界”チート小説

「高校時代に戻り、ゲームで手に入れたスキルで野球選手として活躍する主人公」「ステータスウィンドウを開いてスキルを駆使して手術を行うドクター」などの、翻訳家손지상氏による、韓国のWeb小説の人気ジャンル「回帰物」や「現実ファンタジー物」の紹介。
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손지상(孫 志尚, Son Ji-Sang) @doskharaas

トラックに跳ねられ異世界に行く乗って元ネタがどんなものだろう。90年代からブームだった韓国異世界ファンタジー小説では、ハンガン(漢江)の鉄橋から投身自殺したら異世界がクリシェーで、これは元々こういう自殺のケースが沢山あったからだが、日本は何だろう。ダンバインは跳ねられては無いし twitter.com/sigsawa/status…

2018-10-26 14:47:53
時雨沢恵一 @sigsawa

@sigsawa おまけ・異世界転生コーナーでは、入り口にて、VRでトラックに撥ねられることもできる。

2018-10-26 14:16:38
カスガ @kasuga391

交通事故で1945年の東ドイツにタイムスリップした大学生が、ソビエト連邦で世界発の有人ロケットの開発者になるかんべむさしの「還らざる彼ら」(1977年)が、「トラックにはねられて異世界転生」のルーツじゃないかと思う。 twitter.com/doskharaas/sta…

2018-10-26 18:15:53
손지상(孫 志尚, Son Ji-Sang) @doskharaas

@kasuga391 おお、かんべむさし先生の本は恥かしながら未読ですが、やはりそういうシーンが出る作品は存在したのですね

2018-10-26 18:38:13
カスガ @kasuga391

@doskharaas ただ、「還らざる彼ら」は、「交通事故で死んで転生」ではなくて、「交通事故の衝撃で生身の体のまま時間移動」なので、いわゆる「トラック転生」とはちょっと違うかもしれませんが。

2018-10-26 19:10:57
손지상(孫 志尚, Son Ji-Sang) @doskharaas

@kasuga391 え、日本はそんな感じですか?因みに韓国ではそういう場合、サブジャンルとして빙의물(憑依物)や환생/전생물(還生/転生物)として区別しがちです

2018-10-26 23:09:13
カスガ @kasuga391

@doskharaas 日本では、1990年代以前の「現実世界の主人公が異世界へ行く話」は、「主人公が生きたまま、今の自分の肉体を持って異世界へ行く」というパターンが多いです。 このパターンの話を、「(主人公が死んで異世界に転生する)異世界“転生”物」と区別して、「異世界“転移”物」と呼ぶこともあります。

2018-10-26 23:27:04
bookroad @bookroad1

@kasuga391 @doskharaas 少し別の話題ですが、@doskharaasさんの韓国でも「小説家になろう」や「カクヨム」のような、アマチュアが小説を投稿する場として「ここが有名な最大手!」みたいなメジャーな場はあるのでしょうか。 (これ「異世界チートもの」や「日常系推理もの」の有無なども含め、すべての国で聞いてみたいなあ)

2018-10-29 03:07:06
손지상(孫 志尚, Son Ji-Sang) @doskharaas

@bookroad1 @kasuga391 韓国では、90年代に入り、トールキンやロードス島やPCゲームの影響を受け、PC 通信を活躍の場とするファンタジー小説連載が人気を得て、「なろう」や「カクヨム」見たいな創作システムが90年代後半に確立し、「ドラゴンラザ」とかの人気作が次々出版され、売れました。(つつく)

2018-10-29 09:38:46
손지상(孫 志尚, Son Ji-Sang) @doskharaas

@bookroad1 @kasuga391 その後、2000年代に入りいろんな連載サイトが作られ、今も活躍中の「ゾアラ」、「ムンピア」みたいな大手はこの頃作られました。韓国の場合、元々推理があまり定着されなくて、「日常系推理もの」は作られなかったですが、「異世界チートもの」とかは寧ろ、(続く)

2018-10-29 09:42:37

ムンピア(문피아)

http://www.munpia.com/

ゾアラと共に韓国Web小説の主要な連載サイトのひとつである。最初はグンガンなどの武侠小説作家を中心に作られた「ゴムリム(고무림)」というサイトであった。武侠小説の読者の年齢層が30~40代と高い点と、自由連載と作家連載の分離など、様々な徹底した管理が行われていた。後にファンタジー作家や読者を大勢受け入れて名前を「ゴムパン(고무판)」に変えたあと、再び「ムンピア(문피아)」とサイト名を変えた。

武侠物の他にファンタジー、ロマンス、一般小説、ライトノベルなどのジャンルが存在するが、最も活発なのは武侠物だった。2010年代に入ってからは現代物が氾濫し、現代ファンタジージャンルが連載リストを蚕食している状態である。

ジャンル物の出版を狙うなら、ここで連載を試みるのが良いとされている。しかし、最近は有料連載の登場により、連載物のコメント欄に出版についての質問が載っても、出版しても利益が出ないから、そのまま有料連載を続けた方がいいという雰囲気が強い。
(出典:namwiki

ジョアラ(조아라)

http://www.joara.com/main.html

Web小説作家の登竜門。

韓国ではムンピアと並ぶ最大規模のサイトであり、国内の両班小説(※韓国の量産型ファンタジー小説の蔑称)やライトノベル作家は、ここで連載していた作品か、そうでなくともここ出身の者が多い。『ダンジョン・ディフェンス』や『ドラゴン×プリンセス×ブレード』のように、改稿は行っても、長期連載されていた作品がそのまま出版オファーを受けた例まである。当然ながら連載の途中で出版オファーを受けた場合は、諸々の都合によりジョアラでの連載が止まったり、作品が削除される場合もある。

誰でも簡単に小説を投稿できるというサイトの特性上、いわゆる地雷と呼ばれる低レベルな文章が多いが、文章量が多ければ読者も大勢集まり、一定のクオリティを保持できれば固定読者も生まれるため、この種の国内Web小説サイトでは読者が最も多い。

国内では最も多くのパロディ小説があるサイトであり、サイト内で最も活発なジャンルのひとつもパロディ物である。(ロマンス)ファンタジー、現代を舞台にしたゲームシステム物、パロディ、BL、ゲームなどが活発なジャンルである。全ジャンルで共通して人気のある素材は、永劫ループ物、転生物、異世界転移物。ゲーム系は評価数が高い作品はまだたくさん残っているが、新作で有名になったのは『ナイト・アンダーハート』が最後であり、これすらもライトノベル系に移された。ゲーム系やライトノベル系はどちらも全盛期よりも劣勢であるが、ゲームよりはライトノベルの方が、新作に限定すれば勢いが盛んである。そもそもライトノベル系は、国内では他に連載できるサイトがないという点も一役買っている。
(出典:namwiki

손지상(孫 志尚, Son Ji-Sang) @doskharaas

@bookroad1 @kasuga391 15年前「異世界もの」は「異界侵入もの」とよばれ流行ったもので、いろんなパターンが出尽くしてしまい、最近までは「古い」とまで言われました。韓国では近頃の5年前から日本で異世界モノが流行るのを知り、「今更?」「収斂進化?」と驚くくらいでした。(つづく)

2018-10-29 09:48:56
손지상(孫 志尚, Son Ji-Sang) @doskharaas

@bookroad1 @kasuga391 例えば、「ソード・アート・オンライン」や一昔の「.HACK」も当時、懐メロに認識されてました。 実はもう韓国のファンタジーはトーキンやC・S・ルイスみたいな正統派ハイ・ファンタジーとは全然似ていない物にガラパゴス進化してしまい、十年前から現実とゲームのシステムが完全に混ざって、(続く)

2018-10-29 09:52:26
손지상(孫 志尚, Son Ji-Sang) @doskharaas

@bookroad1 @kasuga391 例えばネット連載の野球小説で冴えない野球選手が絶望で自殺すると20年前にタイムスリップして(これは韓国で最近人気パターンに成った、回帰ものというものです。)しかも何の説明も、そして主人公も違和感も無く、MMORPGのステータス・ウィンドーが目に見え、チートスキルを持っていて、(続く)

2018-10-29 09:56:11
손지상(孫 志尚, Son Ji-Sang) @doskharaas

@bookroad1 @kasuga391 一から人生楽にやり直しながら、まるでMMMORPGや実況パワプロをチートでやるように、試合に勝つとか現実の山に登りなぜか出るモンスターを借りしたり、クェーストをやったりして、小説の中でステータス・ウィンドーを絵や表で書いて、ステ振りをしたりする、現代ファンタージー(現ファン)の(続く)

2018-10-29 09:59:35
손지상(孫 志尚, Son Ji-Sang) @doskharaas

@bookroad1 @kasuga391 スポーツものという物もあります。こういう風に医者として成り上がるとか(目の前にゲームウィンドーとかが見え、スキルでオペをやっちゃう)、モンスターハンターとして一般企業で成り上がるとか(株線の軍資金集めの為、ヤクザを傭兵として裏山に登り、なぜかあるモンスターをかって儲ける)しますね

2018-10-29 10:02:56
カスガ @kasuga391

@doskharaas @bookroad1 脇から読ませてもらいましたが、色々と面白い情報をありがとうございます。 もしよかったら、そのステータス・ウィンドウを開く野球選手の回帰物や、スキルでオペをやる医者物の小説のタイトルを教えてくれると嬉しいです。

2018-10-29 18:13:00
손지상(孫 志尚, Son Ji-Sang) @doskharaas

@kasuga391 @bookroad1 野球小説: ridibooks.com/books/18110296… 『레벨업 에이스(レベルアップ・エース)』です。 あらずし: PS4らしきゲーム機で最強の野球選手データを揃えたリ=セ・クァン(이세광)はひょんなコトで高校時代に精神だけ飛ばされ、ゲームデータそのままの能力を持って野球に再び挑戦する

2018-10-29 18:39:49
손지상(孫 志尚, Son Ji-Sang) @doskharaas

@kasuga391 @bookroad1 医療小説: mm.munpia.com/?menu=novel&id… 『레벨업 닥터 최기석(レベルアップ・ドクター・チョェ=キ・ソク))』 あらずし: 過去に生き返った医者がステータスウィンドーを見る能力と未来から持ってきた経験で最強の胸部外科医を目指す。

2018-10-29 18:54:02
손지상(孫 志尚, Son Ji-Sang) @doskharaas

@kasuga391 @bookroad1 尚、こういった小説は、現代ファンタジー >> 専門家もの と呼ばれます。ゲーム性やファンタジー設定を基本構造にし、毎話を痛快さと蘊蓄で持っていき、人気が有ると10巻以上はザラに続きます。

2018-10-29 18:56:59
カスガ @kasuga391

@doskharaas @bookroad1 日本でも、主人公の能力がゲームのような「レベル」や「スキル」で表されるファンタジー小説が増えています。しかし、そういった小説の舞台は剣と魔法の異世界に限られていて、現代の日本を舞台にすることは少ないです。だから、韓国の現代ファンタジーや専門家物の情報は、非常に新鮮でした。

2018-10-29 19:05:20
손지상(孫 志尚, Son Ji-Sang) @doskharaas

@kasuga391 @bookroad1 実を言うと僕もそうです。僕はそっちの流れを乗ったコトないのですが、95年からPCバン(pc방)のおかげで、男の子は全部MmORPGやネットゲーをやっててメジャーな物として今に至ります。eスポーツ強豪になるくらいに、そう言うゲームがリアリズムになり、一種のガラパゴス状態で分化された模様ですね。

2018-10-29 19:14:32
손지상(孫 志尚, Son Ji-Sang) @doskharaas

@kasuga391 @bookroad1 ゲーム・ファンタジーや現代ファンタジーと呼ばれる物では、ハンター物やレード物と言って、現代の韓国の現実でモンハンをやる様にモンスターを狩りして稼いで成り上がったりもしますし、ゲーム内でチートやスキルで稼いだ金がそのまま現金で使える世の中になっていたりします。

2018-10-29 19:17:10

おまけ

上で紹介されている韓国の現実世界チート野球小説『レベルアップ・エース』第2話「野球の天才の登場(1)」の序盤のみを日本語訳。

――システム・オペレーション。

 どこかから聞こえてくる声に、セグァンはハッと目が醒めた。次の瞬間、彼の顔に激しい驚きの表情が浮かんだ。

「な、なんだ?」

 セグァンは布団を蹴って起き上がった。空中に正体不明のホログラムが、次々と浮かび上がっていた。

――基本的な情報を表示します。

[ステータス・ウィンドウ]
名前:イ・セグァン
年齢:19歳
性別:男性
身長:181cm
体重:72kg
言語:韓国語、英語
職業:高校生
ポジション:投手/打者
投打:左打ち左投げ
コンディション:普通
負傷リスク:非常に低い
疲労度:0
――詳細な能力値を表示します。

[投手]
主ポジション:投手
タイプ:左手オーバーハンド、パワーピッチャー
投球フォーム:ダイナミック
成長性:S(OVERROLL 90~99まで成長可能)
オーバーロール:65
スタミナ:65
ピッチングクラッチ:65
第1球種:4Sファストボール
球速:88 球威:90 制球:70
――球種を追加するには、球種カードとトレーニングポイント500が必要です。

[打者]
主ポジション:センター
タイプ:左打ちクラッチヒッター
成長性:S(OVERROLL 90~99まで成長可能)
オーバーロール:55
左投げ相手コンタクト:50
左投げ相手パワー:65
右投げ相手コンタクト:53
右投げ相手パワー:70
バント:30
選球眼:50
バッティングクラッチ:75
攻撃:70
スピード:70
送球速度:85
送球精度:60
反応速度:70
盗塁:55
守備範囲:50

スキル
「全力投球」(LV1、アクティブ)
スキル発動時に全球種の球速と球威+1、制球-1(トレーニングポイント10消費)
「一発スイング」(LV1、アクティブ)
スキル発動時に左投手、右投手相手にパワー+1、コンタクト-1(トレーニングポイント10消費)

――スキルを学ぶためには、スキルカードとトレーニングポイント500が必要です。

残りトレーニングポイント:300

保有カード:なし

――インターフェースはいつでも呼び出すことができます。

「何だこりゃ? ゲームのやり過ぎで幻覚でも見えてるのか?」

 セグァンは馬鹿のように目をぱちくりさせ、手を振ってみた。しかし、ホログラムは少しも影響を受けずにその場に留まっていた。

「マジで、ゲームの中のキャラにでもされたっていうのかよ?」

 あまりにもありえない状況だったため、自分でも理不尽な言葉を吐いてしまった。もちろん、変化はなかった。

 いまだにホログラムはセグァンの視線に合わせて動き、存在感を誇示していた。

 セグァンは、このホログラムは鏡に映るのだろうかと思い、姿見の方を見た。

「ハハ、一難去ってまた一難か……」

 鏡を見たセグァンは乾いた笑いを漏らした。記憶とは違う自分の姿が、鏡の中に現れたからだ。

 今より10歳は若く見える顔だった。まるで、高校生の頃のように。

「誰だよ、お前?」

 すっかり若返った自分の姿が、とても不自然に感じられた。

 セグァンは夢かと思い、頬を殴ってみた。すると、たちまち激しい痛みが押し寄せてきた。夢ではない証拠だった。

 ぎこちなく顔を触っていると、ドアの外から声が聞こえてきた。

「セグァン、起きたの? 学校へ行く時間よ」

 聞きなれた声に、セグァンはドアを開けた。ドアの前には、やはり10歳は若く見える母親のキム・ミスクが立っていた。

「母さんなの? 母さん、今年は何年だっけ?」

 まさかと思っていた答えが返ってきた。

「今年? 今年は2016年よ。学生がそんなことも知らなくてどうするのよ?」

「2016年? 学生? なんだって!」

 2016年と言えば、正に彼が高校3年だった頃である。セグァンはもう一度訊ねた。

「本当に2016年なの? 俺は高校生なの?」

「何言ってんの、この子は? 何か変な物でも食べたの?」

「俺は本当に高3の頃に戻ったってか? そして、ゲームのステータスを持ってるのか?」

 夢というにはあまりに鮮やか過ぎる。だからといって、時間を移動した信じるなんてとんでもないことだ。

 頭が混乱したセグァンは、バスルームに向かった。

「俺……ちょっと顔洗ってくる」

 バスルームに入ったセグァンは、鏡を見て考え込んだ。常識では説明できないことが、自分に起こっていた。寝て起きたら、10年前に遡っているなんて……これは、一体どういうことなんだ?

 さらにとんでもないことに、ゲーム内の能力値をそのまま持ってきているのだ。セグァンは再びインターフェースを開いてみた。すると、例のステータスウィンドウがふわりと空中に浮かんだ。

「ここまで来たら夢じゃないみたいだし。10年前へ時間が遡るなんて……本当に、そんなことが起こるのかよ?」

 信じられないが、すべての状況がそう告げていた。まだインターフェースが彼の目の前に開いていた。

「ハハ、高校生だなんて……喜ぶべきだろ?」

 しばらく悩んでいたセグァンは、そう自分を慰めた。そうでもしないと、本当に気が狂ってしまいそうだった。

「うん! 夢ならいつかは終わるだろう。それまでは、楽しみながら生きていこう。俺に与えられた能力なら、十分野球選手として成功できるだろう。メジャーリーグに進出してMVPになるのも、決して夢じゃないさ」

 投打の両方でS級の成長性を持つのは、歴代級の才能だった。まだオーバーロールは65しかないが、今後うまくいけば、成長次第では大リーグ歴代最高の選手になれるかもしれない。

「ところで、トレーニングポイントはどうやって手に入れるんだ?」

 そう疑問を抱いた時だった。

――トレーニングミッションを付与します。

条件:セミョン高校野球部の監督を訪ねて入部テストを受ける。
報酬:トレーニングポイント獲得。

(後略)