フリージング・フジサン #6

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

◆異邦人は手を叩いて笑った。嬉しくてならないようだった。それから不意にその者はゾーイに向き直り、顔を近づけ、アイサツした。「ドーモ。サツガイです。嬉しいが奇妙な気分でもある! キミは今どんな気分だね……? 同じかね?」◆

2018-10-30 17:07:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「嫌だ!」ゾーイは叫び、サツガイを拒絶しようとした。サツガイは彼女の手を掴んだ。「邪険にすることはない。俺達は友達みたいなものだ。わかってるんじゃないか?わからない?」「離れろ……離れろ!」「困ったな」サツガイは恥ずかしそうに顔をしかめ、シンウインターやザルニーツァを垣間見た。1

2018-10-30 17:11:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「いや、本当なんだ。俺はずっと探していたんだよ。俺と同じ<洞窟の影>を。ずっと探していた。お前ら風に言えば、運命が決めた事というか……BWAHAHAHA!いや、運命はそもそも俺やコイツの事かな?どうでもいいな」「AAAARGH!」ゾーイは悲鳴を上げる。サツガイは溜息を吐く。「悲しいなあ」 2

2018-10-30 17:14:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ゾーイは憎しみに顔を歪めた。0と1のノイズが周囲に出現し、逆にサツガイを攻撃しようとする。サツガイは苦痛に顔を歪めるが、拒絶するには足りなかった。「俺達は神の破片、アヴァター、黄金の光が照らす影だ。セトの奴が言うにはな。影が合わされば、より濃くなるぞ。素敵な事じゃないか」 3

2018-10-30 17:18:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アタシは……アタシはゾーイだ……!」「それを言うなら、俺はサツガイだよ。だが、それが何なんだね?」サツガイはゾーイをじっと見た。「お前は何故生まれて来たんだね?それをわかっているかね?俺達は何故今この地に生まれ落ちた?わからんだろう?ならば、俺達の自我に意味はないじゃないか」4

2018-10-30 17:21:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

0と1のノイズがサツガイにまとわりつき、無色の衣を形成する。「アイエエエ!」ゾーイは叫んだ。助けを求めるようにザルニーツァを見た。ザルニーツァは凍りついた。ザルニーツァはシンウインターを見た。シトカの王は何でもない事のように頷いた。サツガイはゾーイを衣で包み込んだ。悲鳴は消えた。5

2018-10-30 17:25:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

0100101……0100010011……無色だった衣は今や砂漠の色、黄色の上衣だった。俯いていたサツガイは顔を上げた。フードを目深にかぶると、その顔は光ささぬ闇そのもので、星めいた小さな輝きが不断にその位置を変えていた。「ありがとう。シンウインター=サン。そなたにエテルの導きあらんことを」 6

2018-10-30 17:27:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

次にサツガイは、うずくまるウキヨ……ミギに触れた。「さて。お前たちの事が少し気になっていた。これでどうなるかな」ミギの身体が微動した……そしてさけびだした。「アイエエエエエ!アバババーッ!アバババババーッ!」「うん、大丈夫だ。いいぞ」次に彼はヒダリに触れた。「こっちはどうだ?」7

2018-10-30 17:31:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アバババババッ!アバッ!アバババババーッ!」「いいぞ。お前達もニンジャになれるんだ。楽しめ」それからサツガイはシンウインターの前を通り過ぎ、ザルニーツァのもとへやって来た。「お前は既に入っているんだな。ま、問題ないだろ。サービスだと思いなさい」サツガイはザルニーツァに触れた。8

2018-10-30 17:34:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

白く吹き飛ぶ意識が、過去の光景を垣間見せる。彼女は母を思った。その顔を思い出す事はできなかった。微かに聞こえてくるのはサツガイの声だった。(やったじゃないか!お前にふさわしいソウルが当たったと思うぞ……)(さてシンウインター=サン、約束通り、シトカで色々と試してくるよ……) 9

2018-10-30 17:39:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイエエエエエ!」彼は悲鳴をあげて起き上がった。自分が寝かされていたのは長方形の窪みだった。「アイエエエエ!」「アイエエエエ!?」彼は周囲を見渡した。同じように悲鳴を上げている者達がいた。延髄に違和感。「ウワッ!」チューブが繋がっている。反射的に引き抜いた。 11

2018-10-30 17:46:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「夢……夢か?」彼は痛む頭を押さえた。どこだろう。ボンボリ薄明かりに照らされた冷たく白いコンクリート。荒地も、黒いトリイもない。あれは夢だった。だがここはどこだ。「夢じゃない!アイエエエエエ!」彼は穴から這い出し、闇の中へ走った。躓いて転びそうになった彼を、誰かが受け止めた。 12

2018-10-30 17:48:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

受け止めたのは、暖かい女性だった。「大丈夫。もう大丈夫です。多分……」「エ……」明るいオレンジの髪で、タキシードを着ている。「自分の名前、言えますか?」「ダグ……ダグ」「ダグ=サンですね。わたしはコトブキです」「コトブキ=サン……ここは……これは……ここはシトカ?」「近いです」13

2018-10-30 17:51:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「い、今、おかしなモノが見えなかったスか?」眼鏡の女がコトブキに声をかけた。「黒いトリイとか……消えたけど……」「見えましたね」コトブキは表情を曇らせた。「何スかね?」「わかりません」「ゲーッ」カラスが肩の上で羽ばたいた。コトブキはダグを真っすぐ立たせた。「動けますか」「多分」14

2018-10-30 17:53:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「とりあえず、岸に出ないと」眼鏡の女が言った。「その……この人たちをどう逃がすかとか、色々問題ありますけど、ここに放置するのも……」「ゲーッ!」カラスが警告するように叫んだ。その視線の先!「ザッケンナコラー!」「スッゾオラー!」駆け付けたのはクローンヤクザ集団だ! 15

2018-10-30 17:56:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

BLAM!BLAM!BLAM!BLAM!容赦なく発砲されるチャカ・ガン!「グワーッ!」「アイエエエエ!」何人かが被弾し、何人かは血を流して倒れ込んだ。「ハイヤーッ!」コトブキは躊躇なく走ってゆき、彼らを迎え撃つ!「ゲーッ!」カラスが黒く輝く羽根矢を放つ!「グワーッ!」「グワーッ!」 16

2018-10-30 17:59:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ハイハイッ!ハイッ!ハイヤーッ!」「グワーッ!」「グワーッ!」コトブキは列になって向かってくるドス突進ヤクザ、抱き着きヤクザ、チャカヤクザを次々に的確なカンフー・カラテで倒してゆく。驚愕と恐怖がダグの衰えた身体に血液を循環させる。「スッゾ!」アブナイ!ヤクザ! 17

2018-10-30 18:02:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「グワーッ!」カラスに目を抉られたクローンヤクザが取り落としたチャカが、ダグの手元に転がって来た。朦朧とした消耗状態の中、野良犬じみたストリート・チルドレン本能が彼に銃をとらせた。BLAMN!「グワーッ!」「ハイヤーッ!」「グワーッ!」蹴り飛ばされたヤクザが穴に落下! 18

2018-10-30 18:08:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……その大混乱の光景は、管理室で拘束されたイータも監視モニタ越しに目の当たりにしていた。彼は奇怪な荒地のビジョンを訝しんだが、状況はそれどころではない。「全く困った」彼は脱臼寸前までもがき、急ごしらえの拘束を機材の尖りに擦りつけ、ついに脱した。「こういう事があるから嫌なんだ」 19

2018-10-30 18:11:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

覚醒したオマーク被検体は無知なシトカ市民に過ぎず、自分が何をされていたかはわかりようがない。アダナス社員として彼が速やかに為すべき事は明らかだった。彼はUNIXに取り急ぎLAN直結し、取得データの保全と、証拠隠滅プログラムの準備に取り掛かる。「本当、現場に皺寄せが来るんだから参るよ」20

2018-10-30 18:15:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」ニンジャスレイヤーの連続カラテは怒りと性急さを伴い、ウィトルウィウスの鉄壁の古代ローマカラテ式ガードを破壊し、メンポを砕いた。彼は相棒のプブリウスのインタラプトを期待したが、「イヤーッ!」「グワーッ!」22

2018-10-30 18:20:45