ストレイトロード:ルート140(37周目)

オリジナル短編「ストレイトロード」のコンビが毎日お届けしている、掌編という名の習作。今回は1801~1850。 6年目に突入しました。 今後も引き続き1日1組つぶやいていきます。 続きを読む
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Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya
幻の論文に繋がる手掛かりを得ないまま、藍は滞在予定を切り上げ帰ると言い出した。「理由はあの書き込みですか」「あれはわたしに向けた悪意じゃなかった」匿名の脅迫に屈した人々の態度を見て思うところがあったらしい。先払いの宿賃を取り返さないとの宣言は、壁の向こうを意識した言葉に聞こえた。
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140文字で描く練習、1801。悪意。
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「おねえちゃんは悪い魔女だってホント?」上目遣いで尋ねる子供達が誰から話を聞いたかは想像がつく。藍がそうだと言えば彼らは逃げ去るし、違うと答えても帰ってからまた何か言われるだろう。「出て行け!」箒が振り下ろされた。魔女は少年の勇み足を片手で受け止めた。「その時は悪い子も一緒にね」
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140文字で描く練習、1802。勇み足。
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya
「ウェンズが書いた論文って、これ?」藍が指した表題の下には、彼女と懇意にしている研究員の本名が出ていた。風の魔女の能力を探った実験の報告はよく書けている。だがそれは怪物の正体を追う学会誌への掲載で、前後には胡乱な学説ばかり並ぶのが気にかかる。「わたしも実験動物と思われてるかしら」
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140文字で描く練習、1803。胡乱。
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晴れた空の下、戦闘機の曲芸飛行が地上の観客を沸かせる。友人が乗る機体はすぐ判った。僚機が空に描いた螺旋の軌跡をくぐってみせる姿を、私は言葉もなく眺めていた。「いい加減起きて、もう昼よ」夢を見ていたらしい。いつからか絵空事と現実が逆転した世界は、雨上がりの匂いがする風に満ちていた。
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya
140文字で描く練習、1804。絵空事。
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高台に建つ家で奇妙な光景に出会った。庭にも屋根の上にも大小の桶や皿、焼き菓子の缶などが並んでいる。私達を出迎えた少女も頭に桶を載せていた。「何に使うの?」「雨を集めるのよ」少女は藍の問いに笑顔で答え、すぐそこの下り坂を指した。要約すると、川に流れ込む雨を少しでも減らす目的らしい。
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya
140文字で描く練習、1805。桶。
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山の端に輝く一際赤い光が火星だと教えると、藍は望遠鏡を慎重に動かした。「聞いたことある。人が住めるか実験してたんでしょ」悲しいことに、彼女の世代の常識では過去形になっている。一度は実現秒読みとも言われたが近年は話題にもならない。「でも必要かも。この星から出たいって人、多そうだし」
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140文字で描く練習、1806。火星。
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川縁に奇妙な石柱があった。私が柱を調べる間に藍は検索で答えを見つけた。「昔ここで災害が起きたとき、村同士でもめたせいで被害が増えたんだって」携帯端末には人が手を取り合う形をした石像の写真が表示されていた。同じ悲劇がないよう祈念して、と記された碑は新たな災厄に襲われ全壊したらしい。
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140文字で描く練習、1807。祈念。 忘れないために作ったこともいつしか忘れていく世界。
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彼の苦難に満ちた生涯で私達と出会った場面は最後の、それも一瞬に過ぎないはずだ。しかしその一瞬はこれまでに背負ったどの苦しみより重かったらしい。「先日あなたが告発した元市長、あなたを訴えると息巻いているそうです」「そう。脱獄しようと頑張るよりはマシね」藍は既に関心をなくした様子だ。
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140文字で描く練習、1808。苦難。 それは引き継がれないためにある言葉かもしれない。
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早々に就寝した藍が急に起き上がり、電話をかけ始めた。宿題の提出期限が翌日だと気づいたらしい。「ごめんなさい。わたしの方は順調なんだけど、ゼファールの体調が悪くて採点が遅れてるの」椅子から転げ落ちそうになった。通話の相手は母親のようだが、まさか私の仮病を仕立てるとは思わないだろう。
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140文字で描く練習、1809。仮病。
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大人の口論に辟易した私は別室に集められた子供達の様子を見に行った。既にほとんどの子は眠りにつき、藍だけが部屋の隅で本を読んでいた。携帯端末から子守歌が流れている。「ママがよくこうしてたの」藍の母親は自分で歌いたがるタイプに見えるが。「下手すぎてわたしがちっとも寝なかったんだって」
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140文字で描く練習、1810。子守歌。
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya
暴れる怪物の相手も大変な仕事だが、無事退去させてからも作業は残っている。かつて灯台として使われた建造物は怪物の巣になってから人の出入りが全くなかった。錆びて固まった扉は私達が二人がかりで引いても開かず、割れた窓から藍だけを中に送るのがやっとだった。「開かないわけね、鍵も錆びてる」
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya
140文字で描く練習、1811。錆びる。
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya
目当ての店に入ってみると、藍が狙っていた商品を「品切れ」の札が覆っていた。「さっきまで在庫あったのに」レジ係の仕草がおかしい。「あなたの車がもっと速ければ」「警察の前で速度超過なんて」「じゃあ他の手は」藍は文句を言いながらレジの奥へと入っていった。店員が品切れの札を持って続いた。
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya
140文字で描く練習、1812。品切れ。 それはある種のサインとも言えるもの。
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya
身体能力に個人差があるように、頭脳にも様々な差がある。車のワイパーに貼られた紙を見てそんなことを考えた。「何て書いてあったの」藍がレース模様に似た赤い文字を睨む。車体に巻かれ施錠された鎖もまた赤い。「謎解きであなたと勝負したいそうです」訳しはしたが、藍に解けそうな謎には見えない。
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