けいおん!英語SS翻訳「愛が孵化する冬」
- yuri_no_meikyu
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K-ON 百合SS title: Winter Makes Love Warmer auther: silentmusic16 m.fanfiction.net/s/12591638/1/W… けいおん!百合SS翻訳 「冬は愛を暖める(仮)」
2018-10-15 21:03:05青白い光が閉じたブラインドからほんのりと漏れ、やがて夜明けの陽光が壁に大きな影を映し出した。…そこはベッド、こっちは室内灯、そっちはテーブル。 だが、影が一つ、太陽が動いてもいないのににゅっと上に伸びた。一本の腕が思いっきり伸びをしたのだ。 1
2018-10-15 21:07:44半分眠ったまま、長い夜の果てにすっかり二日酔いになってしまった田井中律の、それは疲れ果てた腕だった。だが細かいことは、サイレンの魔女の歌声のような頭痛と胸にこみ上げる嵐のようなむかつきのせいで思い出すこともできない。 2
2018-10-15 21:11:21よろけながらベッドから転がり落ちて頭痛薬を求める律には、冷えた足裏に伝わるカーペットの感触と壁についた手だけが頼りだった。目を開けようとはしたものの、曇りがかった空の鈍い陽光ですら脳が焦げ付きそうに眩かった。 3
2018-10-15 21:17:11律は目をつぶったままバスルームに入った。今度は床のタイルの冷たさが伝わってきた。まるで封印でもしたかのようなまぶたをようやく片方だけ必死でこじ開けると、律は洗面鏡の裏の薬瓶のラベルが読めるようになった。 5
2018-10-15 21:29:09薬瓶を取りだそうとしてうっかり何本かをシンクに落としてしまったが、手を伸ばして薬瓶を拾い上げるのもしんどく思えてしまった。 6
2018-10-15 21:32:31「アスピリン…アスピリンは…」とつぶやく律だったが、唇が渇いてベトベトするので、頭はズキズキしたままだったが、とりあえず歯を磨いてから、ようやくお目当ての薬瓶を見つけた。台所でグラスを取るのももどかしく、栗毛の少女は二錠を口にすると、バスルームの蛇口から直接水を飲んだ。7
2018-10-15 21:47:40手の甲でさっと口を拭うと、律はヨロヨロと寝室に戻った。まだ脳内の削岩機が稼動中だったので、律はまた目を閉じて、そろそろとベッドに横になろうとした。急に動くと吐いてしまいそうだったから。8
2018-10-15 21:52:40半覚醒状態でベットに横になったその時、律はハッと気づいた。 めちゃくちゃ寒い。 毛布をつかんで開いた目が、驚きで少し大きく見開かれた。 素っ裸だ。どうしてこうなったかは記憶からすっぽり抜け落ちてしまっているが。9
2018-10-15 22:06:01頭痛の厚い雲の向こうに律は答えを求めて探し回ったが、だんだん目が覚めてくればくるほど、頭はますます混乱するばかりだった。 10
2018-10-15 22:07:13そんな律がベッドの上で寝返りを打った瞬間、朝の二日酔いも完全に吹っ飛ぶものを目にしてしまった。11
2018-10-15 22:09:49長い黒髪が枕の上に優雅に広がっていた。柔らかく艶やかな肌は健康と若さに輝いていた。美そのものの裸身は規則正しく息づいていた。律の横で、ベッドにしどけなく横たわっていたのは、律の親友である秋山澪その人だった。汚れなき背中を律に向けて、澪は深い眠りに落ちていた。 12
2018-10-15 22:29:22ドラム少女は悲鳴をあげそうだった口を手で押さえ込んだ。 澪は私のベッドで何してたんだ?どうして二人とも素っ裸で?昨日の晩、何があった?混乱してるとはいえ、これって私がずっとこうなりたかったってことなの? 13
2018-10-15 22:41:16まず最初に何をすればいいか、律にはわからなかった。澪を起こすか?ダメだ、そんなことしたら恥ずかしさのあまり澪はショック死しちゃう!念のために、とりあえず服を着ておこうか?そうこうしているいちに、いつしか澪を見つめていた律は、昨晩何があったかヒントを求めて脳みそを絞っていた。 14
2018-10-15 22:54:09何があった? こめかみを押さえた律は、頭痛を起こしていたのを思い出してたじろいだ。 いったい、何があった? 15
2018-10-15 22:55:57「ムギ、あのお茶に何入れたんだよ!きっつ!」 「だいじょうぶよ、律っちゃん!だって今日は私たちのホリディコンサートの打ち上げだもの!」 「すっかり酔っ払っちゃ…あ、梓、手を貸してくれてありがと!」 「律さん、あの電車スゴく早いです!ああ、灯りがスゴくキレイ」 17
2018-10-17 19:01:33「唯先輩、あれに乗っちゃいます?」 「憂ちゃん、澪と私は大丈夫だから、みんなを送ってやってくれる?憂ちゃんはホントに頼りになるなあ」 18
2018-10-17 19:44:37子供のお絵かきパレットの絵の具のように、いくつもの断片が一つに流れて混じり合っていった。ハッキリしているのはとにかくアルコールのせいだということだが、目下苦しめられているひどい二日酔いも確かだ。でなければ、もうちょっと何か思い出せるだろうに。 19
2018-10-17 19:51:45律はベッドの上でゆっくり身を起こし、室内を見渡した。竜巻の後のように、床一杯に自分の服が散乱している。澪の服も同じように散らばっている。律はいきなり親友も自分同様に全裸であることを思い出してしまった。 20
2018-10-17 19:56:00その滑らかな背中と、床のカーペットの上で自分のパンティの横に落ちているストライプ柄のパンティが誰のものかが、その事実を否応もなく畳み込んできた。 21
2018-10-17 22:10:25床に落ちていたパンティを見るうちに、昨晩のことが次第に思い出されてきて、やがて律は突然に今の状況に至るまでがハッキリわかってきた。 22
2018-10-17 22:19:08*** どういうわけか、視界が異様に明瞭なようにも気分良く曖昧なようにも思いつつ、律は家の鍵を差し込んで玄関扉を開けた。電車を降りて駅から歩いてきた律と澪にとって、寒すぎてこれ以上一刻も外にはいたくなかった。 23
2018-10-17 22:27:18律がよろめきつつ中に入ると、その後ろからすっかり酔っ払った澪が顔を赤らめてヘラヘラ笑いながら続き、玄関扉を閉めた。律の家は外の冬景色に比べれば最高の暖かい別天地だった。 24
2018-10-17 22:31:50