物価連動型の債権債務契約の普及による、経済不安定化効果
- motidukinoyoru
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物価連動型の債権債務契約が普及した経済について、以前までは「価格硬直性の低下圧力になるので、経済調整がスムーズになるのだろうか?」程度の検討しかしていなかったのだが、MMTの水平分析等を考慮すると、むしろ経済を不安定化させ得るものだという風に考えが転回した。
2018-11-18 21:34:37まずは、拙コラム「なぜ生産性ショックによるインフレ(所謂スタグフレーション)は「許容」すべきなのか」ameblo.jp/shingekinosyom…の おさらいから。 このコラムの議論では、まずMMTの水平分析にあたるCT(貨幣循環理論)、貨幣の信用理論とも呼ばれるものを前提にしている。
2018-11-18 21:48:15CTの詳説については、『「お金」「通貨」の実態・正体』note.mu/motidukinoyoru…や、『CT(貨幣循環理論)からMMT(現代金融理論)へ』ameblo.jp/nakedcds/entry…をご一読頂きたいのだが、端的に言えば、信用貨幣経済における生産は、借入→投資→生産→販売→返済というサイクルを持つという理論だ。
2018-11-18 21:58:54『なぜ生産性ショックによるインフレ(所謂スタグフレーション)は「許容」すべきなのか』ameblo.jp/shingekinosyom…では、このCTの理論から敷衍して、広範な生産性ショックが貨幣性生産サイクルに与える影響を考察している。 生産性ショックによる実質付加価値生産の低下があった際に、
2018-11-18 22:17:57物価が据え置きであると、企業は返済資金を販売で調達することが出来なくなり、貨幣性(信用性)生産サイクルは破綻することになる。 勿論、個々の信用サイクルを取り上げれば、通常経済でも破綻する信用サイクルはいくらでも存在し得るわけだが、広範な生産性ショックの場合は個別論では済まない。
2018-11-18 22:20:53広範な生産性ショックによる、多数の信用サイクルの破綻は、当然ながら信用不況を惹起することになる。 これに対し、生産性ショックによる物価上昇を"許容"して、名目所得(及び名目所得成長)を維持することで、信用不況を回避する必要があると議論したのである。
2018-11-18 22:27:21ところが、物価上昇の許容による名目所得の維持が信用サイクルの破綻防止に繋がるのは、事前の債権債務契約が名目的に固定的であるという前提に基づいている。 もし物価連動型の債権債務契約であれば、物価上昇による名目所得維持があっても、その分返済が増加し、信用サイクルの破綻を免れ得ない。
2018-11-18 22:29:56もしそこで信用サイクルの広範な破綻を防ごうと思えば、さらに名目所得を拡大する必要があるが、これはさらなる物価上昇を惹起するため、物価連動型の債権債務契約がこれに"反応"してしまい、まさにいたちごっことなってしまう。 この場合、信用不況か、際限のないインフレか、どちらかを強いられる。
2018-11-18 22:32:08上記により、物価連動型の債権債務契約の普及は、生産性ショックに際して、経済不安定性を爆発的に増幅させてしまう構造を持っていることになる。 生産性ショックに対する致命的な脆弱性があるわけだ。
2018-11-18 22:35:11なお、物価連動型「国債」の場合は、政府が実質的な通貨発行者なので、既述のような信用不安の惹起は無いが、物価連動型国債の規模が大きくなれば、インフレ発生時に物価連動によって政府による返済額が増加するという構造上、名目所得の加速→さらなるインフレの加速を促す危険があるかもしれない。
2018-11-18 22:38:37