「フラグメンツ・オブ・エピック：ディープ・オーダー」「ナバルの章：ワット・イズ・ザ・ヴァリュー・オブ・ライフ？」＃３

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「フラグメンツ・オブ・エピック：ディープ・オーダー」シリーズより 「ナバルの章：ワット・イズ・ザ・ヴァリュー・オブ・ライフ？」＃３

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

(これまでのあらすじ：「海中に出現する巨大な何か」を追いかけるリカルド・吹雪師弟の前に純白の深海棲艦ナバルが現れた。途中ディープ・オーダーのライオンハートの乱入もありイクサ騒ぎとなるものの、紆余曲折を経てナバルの口から「何か」に関する情報を得る)

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

(だが、情報を聞き終えた途端。リカルドは大いに取り乱した。そして何故かナバルに協力を申し出たのだが……？)

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

――――数時間後！ 1

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

既に日が傾き始まり、オレンジ色に海と空が染まる。夜の帳は今まさに降り来たらんと太陽を追い立てる。これよりは闇の時間。魔の者たちの時間であると。そう謳うかのように、海を縦断する深海棲艦の群れ。 2

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

彼の者らは皆一様に、その眼に青紫色の霞を纏わせる。ネクロマンサーの外道のジツ、ネクロマンス・ジツの哀れなる犠牲者達。その証左。傀儡の群れは一糸乱れることなく進んで行く。何処かへと。主の目的を果たすために。 3

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

BRRRRRRRRRRRR！邪悪に静まり返った夕暮れの海を、引き裂くエンジン爆音が群れを一文字に引き裂く。「「「グワーッ！」」」吹き飛ばされ、宙を舞う哀れなる深海棲艦が数隻。無事な深海棲艦はそのアンブッシュ者を目で追った。それは無数のロケットブースターを搭載した奇怪な水上バギーだった。 4

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

半ば本能的に、深海棲艦達は砲を構え、アンブッシュ者へと向けた。その時、群れの中心部に影が掛かる。ふと、誰かが見上げた。鉄の塊が落ちて来ていた。それがその者にとっての最期の光景であった。「イヤーッ！」「アバーッ！」 5

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

深海棲艦、軽巡ヘ級を真っ二つに引き裂き、黒と赤の影が落ちて来た。それは十の角を王冠めいて頭に頂き、青い目に怒りを湛え、赤いマントを翻す深海棲艦のようであった。間近の深海棲艦達はこの闖入者へと視線を向けようとした。「イヤーッ！」「アバーッ！」更なる断末魔！ 6

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

深海棲艦、軽巡ト級が真っ二つになって死んでいた。深海棲艦達更なる闖入者を見た。それは白黒セーラー服に伊賀袴、左目を緑色に燃やす異形の艦娘であった。彼らは全く同じタイミングでオジギをし、アイサツする。「ドーモ、ディープ・オーダーのライオンハートです」「ドーモ、艦娘・吹雪です」 7

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

そしてアイサツ終了からコンマ1秒後、殺戮の嵐が吹き荒れた。「イヤーッ！」「アバーッ！」まず躍りかかったのはライオンハートだ。鉄塊を思わせる巨大な剣を肩に担ぐように構え、最小の円運動で振り回す！BLAM！BLAM！そして斬撃に合わせるように背から伸びる触手主砲が砲撃牽制。寄せ付けぬ！ 8

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「「「イヤーッ！」」」BLAM！BLAM！深海棲艦達は砲撃を放つ！「イヤーッ！」ライオンハートは跳躍回避！そして複雑な横回転を経て、着水！「イヤーッ！」SLAAASH！「「「アバーッ！」」」横薙ぎ斬撃で薙ぎ払う！そして背から6本の触手主砲の牽制射撃！「「「グワーッ！」」」 9

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

巨剣の間合いから離れていた深海棲艦達は距離を取り、ライオンハートの周囲を包囲せんと動き出す。その動きは極めて統率が取れていて、迅速であった。やがて包囲を完了させ、深海棲艦達は一斉に砲を構えた。狙うは訳の分からぬ鉄の塊を嵐めいて振り回す同胞、ライオンハート！ 10

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

傀儡に堕ちた彼の者達に、同胞を撃つ躊躇いは無い。狙いは定められ、引鉄は落ちんとした。その時だ！「イヤーッ！」「グワーッ！」KRAAASH！鉄を砕く鈍い音と、鮮烈なカラテシャウトが轟いた。深海棲艦らはその者を見た。四角い箱めいた軽巡ホ級を蹴り砕き、その残骸に立つ者を見た。 11

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

それは吹雪であった。艦娘。深海棲艦の敵。深海棲艦を殺す者。その眼は緑に燃え盛り、真っ直ぐに深海棲艦を見返した。その眼はただ雄弁に殺意のみを語り掛ける。自我持たぬ虚ろなる深海棲艦たちは怯まない。ライオンハートへと向けられていた砲が吹雪へと向けられようとした。 12

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

その動きは実際 素早かった。だが、死には追い付けぬ。吹雪はホ級を蹴り、跳んだ。黒鉄の籠手、フナクダキが死神のカラテを受け、熱を持ち、空を焼く。装甲の隙間から緑の炎光が迸った。そして吹雪は深海棲艦たちに肉薄した。チョップが振りかぶられ、振り下ろされる。死神が獲物を刈り取るが如く！13

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「イヤーッ！」「アバーッ！」「イヤーッ！」「アバーッ！」「イヤーッ！」「アバーッ！」チョップの嵐が吹き荒れ、刈り取られ零れ落ちる落穂めいて深海棲艦の首が千々に千切れて飛んでいく！深海棲艦達は恐れることなく、ライオンハートに向けていた包囲の半分を吹雪へと差し向けた。 14

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

BLAM！BLAM！BLAM！BLAM！BLAM！そして放たれる一斉射！「アバーッ！」「アバーッ！」数発がまだ息の合った深海棲艦へと突き刺さるが、大部分が吹雪へと殺到する！吹雪は砲弾で黒く染まる空を睨み、構えた。 15

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「スゥーッ…ハァーッ…」僅か一呼吸。カラテが練り上がり、酸素と共に血へと沁み込んだ。観察を終え、己の調律が終わる。なれば為すべきは一つ。吹雪はカラテを解き放つ！「イヤーッ！」CRASH！「イヤーッ！」CRASH！「イヤーッ！」CRASH！「イヤーッ！」CRASH！「イヤーッ！」CRAAASH！ 16

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

殴り砕き、引き裂き、蹴り返し、突き進む！カラテの籠らぬ砲撃なぞ、死神のカラテを阻むに能わず！吹雪はチョップの嵐を再び振るい、深海棲艦の密集地帯へと飛び込んだ！深海棲艦はチョップの嵐に飲み込まれる。コンバインに刈られる麦めいて！ 17

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「イヤーッ！」「アバーッ！」「イヤーッ！」「アバーッ！」「イヤーッ！」「アバーッ！」「イヤーッ！」「アバーッ！」「イヤーッ！」「アバーッ！」「イヤーッ！」「アバーッ！」「イヤーッ！」「アバーッ！」「イヤーッ！」「アバーッ！」「イヤーッ！」「アバーッ！」 18

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

……やがて、最後の深海棲艦の首が刎ね飛ばされ、殺戮の嵐は吹き止んだ。「終わったか」ライオンハートは駆逐イ級に突き立てた巨剣を引き抜き、肩に担ぐ。イ級の亡骸は海へと沈み、瞬く間に見えなくなった。吹雪は周囲を見渡し、言った。「そのようですね」 19

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「まずは第一段階…」ライオンハートは喋りかけて、黙った。その視線の先、海面が隆起し、新たる深海棲艦がエントリーした。紫色の燐光を纏うそれは、潜水棲姫ネクロマンサーであった。彼の者は震える声で言った。「バカな…私の下僕達が全滅？数分足らずでだと？」 20

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「どうやら第二段階まで成功のようだな」「そのようで」「貴様ら、何者だ！」ネクロマンサーが二人を指差して怒鳴り散らす。彼らは意に介さず、アイサツを繰り出した。「ドーモ、ディープ・オーダーのライオンハートです」「ドーモ、艦娘・吹雪です」 21

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

先制アイサツを打たれたネクロマンサーはしかし臆さず、アイサツを返した。「ドーモ、ネクロマンサーです…ネームドの深海棲艦と、艦娘が徒党を組んで何の用だ」「友達を助ける為だ」ライオンハートは即答した。「トモダチ？」「君は、私の友達の友達を虐めていると聞いた」「それがどうした」 22