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katouyujin
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日本語教師には当たり前ですが、日本語教育でどういう順番で文法が教えられるかを述べていきたいと思います。 日本語教育で提示される文法・文型は、順番も含め、*媒介語を用いない**直接法(ダイレクト・メソッド)での授業計画にパーツとして嵌め込める情報と機能の複合体です。
2018-11-24 10:05:33
まず次の文型から導入されます。 ・X ハ Y デス この文型の機能は Y に未知の音形を使うことで学習者の語彙を増やしていく、というものです。X, Y に適切な名詞句を入れることで自己紹介など人に関する情報提供・情報収集に使えます。 「です」であって「だ」「である」でないのにも理由があります。
2018-11-24 10:14:52
もちろん、学習目的によって導入される表現の優先順位は変わります。危険が伴う作業従事する学習者には、危険を回避するためのコミュニケーションが優先されます。もっとも、雇用者や指示者が学習者の母語でコミュニケーションを取れるのがこの段階では一番いいのですが。
2018-11-24 10:17:45
「だ」「である」ではなく「です」というポライト・フォーム polite form で導入するのは、丁寧・ぞんざいの区別を習得していない段階ではコミュニケーション上安全です。はじめはしばらくポライト・フォームのみで述部が導入されていきます。
2018-11-24 10:21:53
デスを デスカ(疑問) ジャアリマセン(否定) で置き換えると、平叙肯定文の他、疑問文、否定文もこの段階で導入できます。
2018-11-24 10:25:47
文例と、それを使ったアクティビティを見てみましょう。 ・X ハ Y デス の、まず述部だけ用いると ・名前 デス として たなかです。 リです。 トラン(チャン)です。 アグバヤニです。 のようになります。別途「はじめまして」「よろしく(おねがいします)」を導入し、自己紹介ができます。
2018-11-24 10:33:22
次に ・X ハ Y デス の ・X ハ で おなまえは? ごしゅっしんは? おしごとは? を疑問音調、オ-、ゴ- と無しのものの区別を導入します。
2018-11-24 10:37:00
はじめは ・X ハ Y デス 全体を無理に口頭練習してもらう必要はありません。主題部と述部を別に口頭練習してもらい、細かな段階を設けてできる言語技能を拡大していきます。 例えば アーキアンジェリです ↓ はじめまして アーキアンジェリです ↓ はじめまして アーキアンジェリです どうぞよろしく
2018-11-24 10:41:43
これを使って自己紹介をやってみるなどします。 次に おなまえは? の口頭練習→他の学習者に質問、次に 名前 デスカ? の口頭練習と、 ハイ 名前デス イイエ 自分の名前デス 次に他の学習者に質問…… と授業を進めます。
2018-11-24 10:48:54
指示詞(コソア)の導入です。 ・X ハ Y デス の X に使う ・コレ、ソレ、アレ を導入します。まずはコレとソレの対立を優先させて、アレは後回しにします。 コレは話し手の領域(私は概ね両手を広げた円の中と教えます)にある物、ソレは聴き手の領域にある物を指示するのに使われます。
2018-11-24 10:54:44
例えばこんなイラストを使いながらでもいいかもしれません。 pic.twitter.com/68RXbuktqk
2018-11-24 12:34:12

*境遇性はどの言語にもあり、はじめは教師の「それ」を学習者がおうむ返しするかもしれませんが気にする必要はありません。**レアリアを使ったりしながら、指示物が存在する領域と話者の関係を理解してもらえば十分です。 *境遇性:話者が替わると指示物が替わること。 **レアリア:実物。Cf. 生教材
2018-11-24 12:40:27
コレ・ソレと ・X ハ Y デス を組み合わせます。 「これは〜です」 「それは〜です」 これらの文を活用するために、絵カードやレアリアを使って口頭練習で使う語彙を予め導入しておきます。媒介語を用いる場合、次のような学習者の母語が書いてあるカードを用意しておくのもいいかもしれません。 pic.twitter.com/m6Wfqketrm
2018-11-24 12:54:22


*代入練習を行い、その後、wh 要素のナニ/ナンを導入し 「これはなんですか」 「それはなんですか」 を口頭練習、そして学習者同士で質問しあうなどします。 「いえ、……は〜です」 と学習者が訂正するよう促すのもいいでしょう。 アクティビティとして**インフォメーション・ギャップを使うのも。
2018-11-24 13:00:53
*代入練習 substitution practice 提示された文の一部を、***キューの情報で置き換えて言う練習。 例 提示文「領事館へ行きたいんですが何駅で降りたらいいでしょうか」 キュー「モンゴル料理を食べる」 練習「モンゴル料理が食べたいんですが何駅で降りたらいいでしょうか」
2018-11-24 15:26:50
**インフォメーション・ギャップ 学習者同士で質問しあったり、調べて完成させるタスクのための、情報を欠落させた副教材。 例 「バザーで模擬店を開く、その母国の料理のメニュー」 ***キュー cue 学習者の発話練習のきっかけとなる、対象言語の断片。
2018-11-24 15:32:03
指示詞ココ・ソコ・アソコと動詞マス形(存在文)。数詞と助数詞。主題マーカーのハ。 ①存在文 ・X ニ Y ガ 存在動詞 で動詞がマス形で初めて導入されます。この時に、マ-、+ス(平叙肯定)、+セン(否定)とマスカ(疑問)も。 ②日本語のコソアの体系:場所。 ③「〜はここにあります」など主題文。
2018-11-24 15:43:41
④数詞と助数詞 和語と漢語の数詞を一度に教えるのではなく口頭練習に必要な数詞を助数詞「階」ごと導入する。 いっかい ik-kai にかい ni-kai さんがい saN-gai よんかい yoN-kai ごかい go-kai ろっかい rok-kai ななかい nana-kai はっかい hak-kai きゅうかい kyū-kai じゅっかい juk-kai
2018-11-24 15:51:36
すでに日常で〜ハと〜ガをきいたことがある学習者で早いひとは英語とかで、この直前ぐらいに「ハとガってどう違うんですか?」と質問してきます。答えられれば学習者が納得するまで十分説明しても、または口頭練習で出てくるまで待ってね、と言っても、どちらでも大丈夫です。
2018-11-24 15:56:53
⑤「ウナギ文」の扱い 「僕は鰻だ」「私珈琲」のようないわゆる「ウナギ文」はまだ扱いません。そのため 「本屋は七階です」 のような文は意識的に避けます。 ウナギ文については「省略分裂文」説や「ダ代用形」説などがあります。前者は ・(僕が注文するのは) 鰻だ の括弧内を省略した、とするもの。
2018-11-24 16:43:10
後者は奥津敬一郎の説で ・僕は 鰻 <を注文する> の <を注文する> をダが代用している、という説です。『みんなの日本語 初級編』では説明としてこれを採用していますが、同様の立場の場合、助詞と動詞がもう少し導入されてからでないと口頭練習の課題とするべきではありません。
2018-11-24 16:47:21