rsbs日誌#48

艦これ二次創作SS。 胡散臭い女提督と脛に傷持つ艦娘たちの狂った御伽噺なり。 一部性的表現並びに残虐的表現を含むため未成年の閲覧を禁ず。 「我は海の子」
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﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌 ……そう遠くない過去でもなく、果てしない未来でもない時間の中……

2018-11-25 12:13:57
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#rsbs日誌 とある時、とある場所、とある港町に不思議な少女が居た。少女は生まれつき体が弱く、謎の病魔に冒されていた。村人達は口を揃えてこう言った。「なんて可哀想なのだろう」「なんて妙な病だろう」「あな恐ろしや、あな恐ろしや」「まるで人魚のようじゃ」「いいや、魚じゃ」

2018-11-25 12:14:18
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#rsbs日誌 少女は酷く、肌が弱かった。水を欲していた。それも海水を。まるで海魚の様に。少女はその毎日の殆どを、水桶の中で過ごしていた。海水に満ちた水桶の中で。少女は、極端に肌が乾くと言う奇病に冒されていたのだ。その肌は真水よりも、海水を好んだ。海魚の様に。

2018-11-25 12:15:09
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#rsbs日誌 あくる日の事、少女の下に医者だと言う、まるで少女の様な…酷く胡散臭い人物が現れた。看護婦を引き連れて。その医者は奇病を患った少女に何も臆する事無く、診断をゆっくりと続けた。「お前さん。外の世界は見た事があるかね?」医者はぽつりと呟いた。少女は首を横に振る。

2018-11-25 12:15:20
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#rsbs日誌 「ふむ、そうか。無理も無い。だが、世界は美しくもあり、醜くもあり、そして素晴らしい物だ。この病が治った時、是非とも外の世界を見ると良い。世界はお前さんを待っているのだから」そう言うと医者は水晶球を取り出し、彼女の目の前に差し出してやった。其処には世界があった。

2018-11-25 12:15:50
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#rsbs日誌 美しくもあった。醜くもあった。だがそれは世界を、何も知らぬ少女にはとても魅力的で、誘惑的だった。「もっと…見たい…世界を、見たい…!」少女の強い言葉に、医者は優しく頷いた。水晶玉をくれてやり、薬が処方され診断は終った。医者を名乗る少女は、父親との面会を求めた。

2018-11-25 12:16:05
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#rsbs日誌 「不躾ながらお聞きしたい事があります。旦那さん」「…なんでしょうか」「あなたの過去と、貴女の奥様の事に御座います。先ず奥様から…奥様は、漁村の生まれではありませぬかな? それも頻繁に、海で遊ばれたような…」「え、えぇ…全くその通りで御座います」

2018-11-25 12:16:23
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#rsbs日誌 「宜しい。そしてもう一つ…」少女は少し勿体ぶって、言葉を詰まらせた。「旦那さん、貴方…『元提督』ではございませんか?」少女の父親は立ち上がった。「何故それを!?」「いやぁ…合点がいった。此れで全ての欠片が揃った。落ち着いて聞いて下さいまし。旦那さん」

2018-11-25 12:16:37
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#rsbs日誌 少女は差し出されたお茶をぐい、と一口飲んでこう言った。「彼女は『海に愛された』のだ。人の子でありながら、その実態は海の子なのだ」「何を…根拠に…馬鹿馬鹿しい…」「だが事実でありましょう?海水を浴びねば生き続ける事も儘成らぬ体。尋常ではない。それは寧ろ人魚に近い」

2018-11-25 12:16:50
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#rsbs日誌 「海辺で育った奥様と、艦娘と共に過ごした旦那さん。互いに強い『海の因子』をお持ちだ。故に彼女の体、彼女の魂には強く『海』が結びついてしまっている。どうしようも無い程に」「…何か…何か方法は無いのですか! 先生!」父親は縋るようにそう言った。

2018-11-25 12:17:40
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#rsbs日誌 「あの子は可哀想だ!友達も作れず、外の世界を知らず、ただただ部屋の隅で海水を浴び続けるしかない!書物を読んで暇を潰すのが精一杯だ!」「…一つだけ、方法が御座います。然しそれは決定的なまでに、彼女が人間で無くなってしまう治療行為ですぞ」

2018-11-25 12:18:01
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#rsbs日誌 「教えて下さい!是非とも」「……後悔は、なさいませんな?」眼鏡をくい、と持ち上げた少女に父親と母親が頷く。「彼女を…」その時、不意に外から低く、大きく、おぉぉんと唸る声が聞こえた。遠吠えの様にもそれは聞こえた。誰かを呼ぶ様にもそれは聞こえた。

2018-11-25 12:18:13
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#rsbs日誌 「またあいつ等か…」辟易した表情で少女の父親は首を振った。母親は怯えるように父親の手を握った。「一体何事ですかな?この遠吠えの様な、鯨のだみ声の様な音は」「深海棲艦ですよ。あの子が産れて幾らかした時、突然現れた。沖に佇んでいるだけで何もしてこないが」

2018-11-25 12:19:20
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#rsbs日誌 窓から港の波止場に眼をやれば、数人の艦娘が海へと出て行く。軽い威嚇射撃を行っただけで、深海棲艦はスゴスゴと立ち去っていった。「数日に一回はああですよ。全く…漁に出ようとする人達と出くわさないか、ヒヤヒヤものです」父親はやれやれとばかりに呟いた。

2018-11-25 12:19:35
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#rsbs日誌 「中々苦労していらっしゃる。漁業を生業としていらっしゃるならば当然の事でしょう。それでは、わしは此れにて…」「ああ、先生!ちょっとまった!あの子の、治療法を…いや、あの子を助ける方法は…!?」「…旦那さん。貴方ならもう既に半分程は気付いておるはずだ」少女は言う。

2018-11-25 12:20:16
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#rsbs日誌 「だが、それを行うかはどうかは、貴方次第でもあるし、彼女次第でもある。それではまた薬が切れた頃に再診に来ます故、御機嫌よう」医者を名乗る少女は飄々とした感じで立ち去り、看護婦はペコリと会釈をして医者を自称する少女に付き従う様に帰っていった。

2018-11-25 12:20:28
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#rsbs日誌 時を経て、少女は成長した。然しそれは少女に終焉を訪れさせる事でもあった。少女は床に伏せた。体はまるで鱗の様な物に覆われて、正に魚か何かと言わんばかりであった。少女の変化を耳聡く何処かからか聞いた村人達は恐れ戦いた。怪物だ。魔性の子だ。人間じゃない。と

2018-11-25 12:20:46
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#rsbs日誌 そして海は荒れた。まるで少女の容態が海の荒れ様と一致したかの様に。そして深海棲艦はより大きな声で雄叫びを上げ続けた。何かを呼ぶように。何かに呼びかけるかの様に。そんなある日の事。あの胡散臭い少女が現れた。薬が切れた訳でもないと言うのに。

2018-11-25 12:21:12
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#rsbs日誌 胡散臭い少女は、眼鏡をくいと持ち上げながら床に臥せった少女に問うた。「お前さんに聞こう。苦しみぬく『生』か。それとも安からな『死』かを。どちらを選ぶ?お前さんはどうしたい?」胡散臭い少女の問い掛けに、少女は答えた。「友達が…欲しい…」「ほう!」感嘆の声を零した。

2018-11-25 12:21:38
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#rsbs日誌 少女は訥々と心中を語った。誰かと遊んだ事もない。地面を走った事もない。自分の世界は小さな窓から見えるキャンバスだけ。このまま惨めに死ぬのなら、せめて楽しく悪魔と踊り狂いたい。何もせず、何も味わう事無く死ぬのは嫌だ。「死ぬのは、嫌。バケモノになってもいい。助けて!」

2018-11-25 12:21:59
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#rsbs日誌 それは魂の慟哭だった。彼女の心の底からの本心であった。医者は笑った。否。彼女は医者ではない。そもそもただの医者が彼女を生き長らえさせる事など無理なのは。『魔女』は笑った。心の底から笑った。心底嬉しそうに、喜びに打ち震えるかの様に笑った。

2018-11-25 12:22:15
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#rsbs日誌 「あい判った。ならば踊ろう。世界の果てで、この魔女と共に。わしの名前は比良坂巴。お前さんを導く魔女にして提督だ」スーツ姿から一転、女、否、比良坂は提督服へと早着替えを行った。まるでマントを脱ぎ捨てるかの様に。「それでは今暫く耐えておくれ。何。すぐに終る」

2018-11-25 12:23:15
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#rsbs日誌 式神を広げ、陣を引く。妖精達に太鼓囃子をかき鳴らさせ、即席の祭壇に供物としての資材を置く。そして少女は叫んだ。「カグツチ、サアペフチ、ヘファイストス、ヴァハグン、火の神々よ。我を見守り、かの少女に加護を与えたまえ。今此処に人型艦船、艦娘の起工を執り行う!起工!」

2018-11-25 12:24:33
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#rsbs日誌 轟…! と少女を炎が包んだ。それは青白く、否、様々な色へと変化する。宛ら虹色を映し出すプリズムの様に。やがて少女は炎の中から現れた。バチバチと紫電を纏って。雲龍となって、現れた。「よくぞ今まで生き長らえた。海の子よ。龍の子よ。わしはお前を歓迎する」

2018-11-25 12:24:48