10周年のSPコンテンツ!

【行きたい場所に行く】福間健二 #k2fact207

11月14日から27日まで。行きたい場所に行くのが詩だと、ふと思って、書きはじめ、まず近くの多摩川の橋を渡った。その多摩川が、行きたい場所ということから、ジャカルタのチリウン川になり、ソウルのハンガンになった。ほぼそこまでの10では、終わった(行きたい場所に行った)気がしなくて、おまけの二回を書いた。 音楽は、マーク・サンドマンのひきいたモーフィンの「The Night」。歌詞もいいです。 https://www.youtube.com/watch?v=wI5hxEguomo
鹿児島 マレーシア ジャカルタ 札幌 ソウル
2
福間健二 @acasaazul
大橋を渡ってからの、笑い声とぬくもり。遠くても、てのひらで覆うことのできる、そうでなくても夜の底にやわらかく沈む、息をしているものとともに。単数と複数、どこに毒を入れるか。とくに指示はないが、たいてい川の近くにはなぜか見すてられた機械がある。(行きたい場所に行く1)#k2fact207
福間健二 @acasaazul
「何回言ったらわかるの!」と無抵抗な部品を叩く音といやな匂いがした。チリウン川。その掃除と何年も前の詩人の死を伝えるジャカルタからの手紙、どこにしまっただろう。いまは歌がきこえる。星が見ている。虫も黙っていない。いちばん静かな網が自然発火する。(行きたい場所に行く2)#k2fact207
福間健二 @acasaazul
どこにも受け入れてもらえなくなって、最後は川。苦しみの極限で天使に出会うひとりの老いた娼婦。彼女が主人公の詩を彼は書いた。何を救ったのだろう。彼の詩集をもって列車に乗った別な詩人が夢のなかで蛇に追いかけられる。シューシューッと鳴る赤い舌の蛇だよ。(行きたい場所に行く3)#k2fact207
福間健二 @acasaazul
レンドラとロシディ。ふたりのことを思いながら、あてもなしに歩く。死んでしまってもここにいる。生きていてもここにいない。詩人たち、いま「止まれ!」という声に驚いたぼくを救う。シガーを吸う。ダブルハピネス。ひっくり返していない石がまだたくさんある。(行きたい場所に行く4)#k2fact207
福間健二 @acasaazul
ジャカルタからソウルへ。夜遅くに発って朝に着く。あやふやな自信と修正液を使いつくして。ここにも大きな川がある。避難する場所への湾曲する道ときれいに整備された公園がある。時差で夜が短かったが、眠くはない。元気な詩人がいる。自転車に乗ってやってきた。(行きたい場所に行く5)#k2fact207
福間健二 @acasaazul
食べものが変わり、音楽が変わる。秋だから、という釘の打ち方。どうしたって気にしないわけにはいかない。影の流れ方、通行する人たちの演技力、発色の方法。詩人はうれしそうに並べる。ちょっと多すぎるよ。市場の屋台に腰をおろして飲みはじめるまでにすること。(行きたい場所に行く6)#k2fact207
福間健二 @acasaazul
吸い殻の山のとなりにシャベルと赤い布。そして波状に動くもの。なんだろうと目をこらしながら、話題は謝るってどういうことかから若い女性の見分け方へ。顔のほそいのが韓国人、まるいのが日本人。詩人は黙っているが、明洞のコンビニで働く彼の友だちが言った。(行きたい場所に行く7)#k2fact207
福間健二 @acasaazul
地下鉄で若いカップルと話した。はにかみながらも文句なしの笑顔で英語がうまい。マレーシア人だとわかった。新婚旅行かな。ノー。ソウルのこと詳しいね。ノー。ここはマッコリもソジュも安くて困ってしまうとぼくは言う。飲まない二人に。澄んだ目をした二人に。(行きたい場所に行く8)#k2fact207
福間健二 @acasaazul
だめだろう。死者との約束を忘れてウトウトしていては。二人を見送りながら思い出していた。二十年前にカーディフで出会ったマレーシア人青年のこと。妻とぼくと彼で三つのさびしさになって紅茶を飲んだ。あとで東京に送ってくれた結婚式の写真の彼は王様だった。(行きたい場所に行く9)#k2fact207
福間健二 @acasaazul
あしたは普通の人。そうなれたらいいってことだけど、大通りを重いもの持って歩き、あてずっぽうに角を曲がると詩人に会い、一緒に地下に入ると豚の串焼きのおいしい店があったりする。事実に負ける夢の、もしかしたら明るい部分。資料篇のページにも光があたる。(行きたい場所に行く10)#k2fact207
福間健二 @acasaazul
行きたい場所。友だちのいる札幌。師匠のいる鹿児島。北と南、どっちだと迷う心の階段を何人もの死者の思い出がおりていく。ホコリ、踏まないようにね。淡い月を消しきれない社会が朝から注文をつけている。でも、足裏からのロックンロール。始末のためじゃない。(行きたい場所に行く11)#k2fact207
福間健二 @acasaazul
きみの誕生日、きのうだったね。誕生日、一年にいっぺん、宇宙のなかの、地球が、きみの生まれたときの位置に戻ってくる。すごいね、と教えてくれたきみの自転車が消えていった暗がりの釘。十六本あるはずなのに十五本しかない。一本は行きたい場所に行ったのかな。(行きたい場所に行く12)#k2fact207

コメント

コメントがまだありません。感想を最初に伝えてみませんか?

ログインして広告を非表示にする
ログインして広告を非表示にする