科学論文にこんな用語を使っていいの? - 生態学における「性的嫌がらせ」

"Journal of Ecology"に掲載された生態学に関する論文タイトル、 "Sexual harassment sustains biodiversity via producing negative density-dependent population growth 繁殖行動上の「性的嫌がらせ」が自然界の生物多様性を維持する" …科学論文が「性的嫌がらせ」なる日常語や人文用語を用いることの妥当性について議論する https://univ-journal.jp/23643/
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リンク 大学ジャーナルオンライン 繁殖行動上の「性的嫌がらせ」が自然界の生物多様性を維持する 京都大学 | 大学ジャーナルオンライン 生存競争の厳しい自然界において、なぜ多種多様な生物が共存できるのか?なぜ一番強い種類だけにならないのか?この問いは、生態学における重要な未解決問題の一つとされている。 京都大学フィールド科学教育研究センターの小林和也講師は、自然界で見られる性淘汰のうち「性的嫌がらせ」が生物多様性を維持している可能性を理論的に示すとともに、シミュレーションによってこの理論が上手く機能することを示した。 生態学における「性的嫌がらせ」とは、生まれてくる子供の数が減ってしまうかわりに競争相手よりも自分の子供の割合を高める性質の 95 users 98
takasugi @GaoshanXinyu

記事からは削られているようだけど、社会問題の性的いやがらせとは異なる、と断言してるこの論文と、ソーカル事件で批判されたような人文系の「比喩ではない」用語の乱用は別物な気がする twitter.com/Cristoforou/st…

2018-11-28 01:50:29
takehiko-i-hayashi @takehikohayashi

『交尾行動の新しい理解』amzn.asia/d/1qcmz23 というガチ生態学専門書で理論分野の総説を書いた私が通りますが、この用法での(sexual) harassmentは少なくとも近年の日常語からの転用でもウケ狙いでもないです。/ univ-journal.jp/23643/

2018-11-28 09:59:18
takehiko-i-hayashi @takehikohayashi

生物の繁殖行動においてはharassmentとしかいいようのない「いやがらせ」行動がしばしば観察され、それをharassment behaviour等と呼ぶのは昔からです。少なくとも「近年の日常的用法をウケ狙いで採用したんだろ」とかいう憶測は全くの誤解だと思います。

2018-11-28 10:01:08
takehiko-i-hayashi @takehikohayashi

この辺りでも不当な叩かれ方されてるのを見かけたので。(専門的語用法と社会的な文脈とのconflictをどう考えるべきか、という問題は別途あり、そこは重要だと思う。けれども、勝手な憶測に基づき叩かれてるのは全く不当だと思う) b.hatena.ne.jp/entry/s/univ-j…

2018-11-28 10:06:19
あかみ@想造ラボ @AkamiSouzouLab

@Cristoforou 科学用語→自然科学用語ですね。 人文科学だって社会科学だって立派な科学ですから、自然科学だけに総称の「科学」を割り付けるのはやめましょうよ^^

2018-11-28 11:50:45
植村恒一郎 @charis1756

僕もまったく同意見です。人文学は「科学」である必要はまったくありません。「人文学」と呼ぶべきですね。隠岐さんの『文系と理系はなぜ分かれたのか』に、「価値の源泉としての人間を探究し、人間について知ろうとする知」が人文学であることが、とても明確に示されています。 twitter.com/Cristoforou/st…

2018-11-28 12:13:26
けい @petros_kei

すごくその通りだと思う。「人文科学」って言葉、とても違和感ある。 twitter.com/Cristoforou/st…

2018-11-28 12:14:26
あかみ@想造ラボ @AkamiSouzouLab

@Cristoforou おっと、その観点は新しくて私も見落としていました。 確かに人文学は科学と別枠にすると、芸術実技を大学でどう扱うか、って議論がクリアカットになりますね。 今度は人文学ごと大学教育の場から追放しろって議論にどう立ち向かうかの議論が必要ですが、芸術単体よりは考えやすいはず。

2018-11-28 12:15:53
奥山雄大(茨城県在住関西人) @yokuyama

例の論文タイトルの件、よく考えるとやはり腑に落ちないのは、ヒト社会で倫理にもとるとされる行為を呼ぶ言葉はすべて行動生態学で使ってはいけないのやろか?セクハラはだめやとして、例えば子殺しはいいのか?全ての用語を排除していくのが正しいあり方なのか?といった疑問が浮かぶ。

2018-11-28 12:29:05
奥山雄大(茨城県在住関西人) @yokuyama

全てのヒトの行動を動物の行動と区別して呼ぶことがもし可能ならこういうコンフリクトは起きないと思うけど、ヒトも動物である以上これは難しいのではないやろか。実際どういう解決策があるのか知りたい。

2018-11-28 12:31:42
奥山雄大(茨城県在住関西人) @yokuyama

ちなみに気になって調べてみると、sexual harassmentという用語は少なくとも1981年には名のある生態学系の雑誌に掲載された論文で使われているので、少なくともごく最近になって社会的な文脈から行動学に転用された単語ではないらしい。

2018-11-28 12:33:50
yamasa7 @yamasa7

@Cristoforou こういった意見についてはどのように思われますか? twitter.com/yokuyama/statu…

2018-11-28 13:16:23
蟲喰ロトワ (むしくろとわ)byおいしい昆虫生活®︎ @Mushi_Kurotowa

@Cristoforou @yamasa7 前後関係でいうと一般的用語を転用したのではなく、動物行動学の論文が先とのことです。twitter.com/yokuyama/statu… 論文は検索上、用語に一貫性があることが望ましいですが、後から社会的意味が付け加えられたマイナーな専門用語について、研究者側が譲るべき根拠はどう考えられるでしょうか。

2018-11-28 13:47:07
奥山雄大(茨城県在住関西人) @yokuyama

@Cristoforou @yamasa7 この点につきまして、「人の社会生活に関する語をむやみに自然科学で動物や植物に適用」したケースではなく、適切に動物の行動を記述した用語であり、少なくとも40年近い用語を使用してきた歴史もある、というのが観測範囲内での行動生態学者の見解だと理解しています(当方は植物学者ですが)。

2018-11-28 14:31:53
yamasa7 @yamasa7

@Cristoforou 用語を新しく定義する際に、擬人化を招き正確な記述を妨げる危険性の高い現象については、人間のための用語と、それ以外の生物のための用語を別々に定義し、使い分けるということが必要ということですね。それなりに長い間使われてきた用語については、線引きが難しいかもしれませんが…

2018-11-28 14:35:29
奥山雄大(茨城県在住関西人) @yokuyama

@Cristoforou @yamasa7 ここはおっしゃる通り、英語圏の科学者と日本の科学者で見解が一致していないように見えます(僕の昨日のツイートでもその点言及しています)。ただし、ツイートで批判している英語圏の科学者が本当に行動学に通じている人なのかはちょっと分かりません。

2018-11-28 16:09:20
奥山雄大(茨城県在住関西人) @yokuyama

@Cristoforou @yamasa7 もう使われていない、という点については、正確に概念を代替する用語が決められていない印象も受けます。唯一mating harassmentという単語が近そうですが、これも厳密に同じと言えるかはちょっと怪しいです。もう使うべきではないなら、その旨何らかの学術論文で提案されている必要があると思います。

2018-11-28 16:11:30
yamasa7 @yamasa7

@Cristoforou @yokuyama 少し調べてみると、2016年のフランスの研究者の論文タイトル( rsbl.royalsocietypublishing.org/content/12/1/2… )、2018年のカナダの研究者の論文要旨( pnas.org/content/115/26… )でも使われているようです。

2018-11-28 16:12:34
奥山雄大(茨城県在住関西人) @yokuyama

@Cristoforou @yamasa7 はい。おそらく社会的な日常語としてのsexual harassmentの方が先行しているだろうことは当方も予想していました。ただ行動学でも厳密な定義のもとに同じ単語が長く使われてきたことは確かです。訳語もおそらく「性的嫌がらせ」以外にはないかと思います。

2018-11-28 16:15:39
奥山雄大(茨城県在住関西人) @yokuyama

@Cristoforou @yamasa7 植物学ではこの用語は一般的ではありません。ただし、行動生態学の概念を植物学に拡張するということは昔から行われてきており(動物学で学術的概念が先行することも歴史的には多いです)、その過程で先に動物学で使われている用語を拡張して使用することにはそれほど違和感を感じません。

2018-11-28 16:17:27
奥山雄大(茨城県在住関西人) @yokuyama

@Cristoforou 訳語は元の英語が同一である以上あまり関係ないのではと思います。重要な概念を指す以上、代替語なく廃れるということはあり得ないですし、代替語を提案する場は学術論文以外あり得ないはずです。おそらく問題があるとすれば、行動生態学の分野でこの問題が真剣に考えられてなかったことかと思います。

2018-11-28 18:38:58
奥山雄大(茨城県在住関西人) @yokuyama

@Cristoforou 訳語については、議論の発端も論文自体も英語なので一度置いておきましょう。実際僕は人間のそれと行動学の用語は、少なくとも語源としては無関係ではなくて、むしろ表面的には同じものに見える、ということで使われている用語だと理解しています。

2018-11-28 19:12:42
奥山雄大(茨城県在住関西人) @yokuyama

@Cristoforou そこから僕の前の疑問として、「ヒト社会で倫理にもとるとされる行為を呼ぶ言葉はすべて行動生態学で使ってはいけないのか?」ということが出てくるわけです。

2018-11-28 19:14:11
奥山雄大(茨城県在住関西人) @yokuyama

@Cristoforou いちおう再度僕が植物学者でこの用語を研究上使ったことがないということはお断りした上での個人的見解ですが、本来動物に対して使う文脈では全く関係ないとは言えないのではないでしょうか。つまり、子殺しのような言葉と同じです。ちなみに植物でも子殺しという言葉を比喩的に使うことはあり得ます。

2018-11-28 20:59:29