日向倶楽部世界旅行編第69話「強襲のサザナミ」

勝ちに行こうとしない対戦相手から、何かの思惑を感じざるを得ない日向。そんな彼等に、ピンクショッカーズのサザナミが襲い掛かる。無気力なシラヌイを他所に翻弄するサザナミだが、一人では不利な事は承知であり…
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三隈グループ @Mikuma_company

「見えてんだよウスノロ!」 「変わった特技があるみたいだね」 「これは分からねぇよなァッ!?」 「全て捌いたか…!」 「オメーの顔に”表情”が現れる」 「良くてナンバー2だ!」 「やろうぜアバズレ共…このサザナミ様が、化粧のいらねー顔にしてやるからよ!」 日向倶楽部、この後21:00! pic.twitter.com/KnarQ3HR0i

2018-11-29 20:44:58
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【前回の日向倶楽部】 扶桑です。 親衛隊の二人は危なげもなく勝利しました、流石ですね。お相手の二人もとてもよく戦っていて、頼もしい限りだったと思います。中でもあの野分という艦娘は、日向達と同じトラック泊地の艦娘で、なんと那珂さんの部下だったとか…あの様に逞しく若い人達がこ

2018-11-29 21:00:10
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【前回の日向倶楽部その2】 利根姉妹は圧倒的な実力差を見せ、長門達を打ち負かした。野分も何とかして筑摩に喰らい付こうとしたが、実力は及ばず、最終的には降参という選択肢を取らざるを得ない。かくして決勝トーナメント二回戦第一試合は、大方の予想通り利根姉妹の勝利に終わった。

2018-11-29 21:01:21
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日向倶楽部 〜世界旅行編〜 第69話「強襲のサザナミ」

2018-11-29 21:02:38
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〜〜 二回戦第二試合を控え、日向は一人控え室に向かっていた。 (一回戦の相手…大和と五十鈴だったな。妙な相手だった…まるで勝ちに来ていないというか、何か試しているような、そういうものだった。) 神妙な顔つきで日向は廊下を歩く。戦う者の癖か、相手の動向にはどうしても気が行った。

2018-11-29 21:03:29
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(この時世…一定以上を越えた艦娘の強さというのは最早、何者かに誇示するものでしか無くなっている。深海棲艦対策のノウハウも洗練され、艦娘が圧倒的な強さを持つ必要は無くなった。) 初めこそ、艦娘は深海棲艦に対抗する切り札だった。彼等の奮戦が時代を守り、海を切り開いたのだ。

2018-11-29 21:05:31
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しかし反攻作戦も終わり、深海棲艦の脅威が薄れた今は違う。艦娘に深海棲艦を一捻りにする様な、一騎当千の強さは不要となった。だからこそ、艦娘は職業として成立し、今日に至るのである。 そしてそれ故に、その余りある腕を試す場が作られ、各地から戦士が集うのだ。

2018-11-29 21:07:15
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それは日向も知っていた、自分の艦娘としての強さは、この時代には大き過ぎるものだと理解していた。 最上や初霜だってそうだ、彼等は十分過ぎるほど強かった。極端な話あきつ丸くらいの強さがあれば、今の時代、艦娘として食って行くのに何も困らないのだ。

2018-11-29 21:09:01
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そういう過ぎた強さを出す機会というのが、こういう大会なのだ、同じように強さを持て余してしまった人々が集う場なのだ。 その貴重な場で全力を出さず、何かを試すような動きをする…五十鈴の挙動は日向の目に、とても不自然に映ったのである。

2018-11-29 21:11:01
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(ワタリ艦娘だとしても、こういう大会でわざわざ勝ちに行かない理由はない…賞金もあるし、名だって上げられる…何故だ、何故、本気で勝とうとしないのだ…?) 彼等にはもっと大きな目的がある、日向の頭にそういう考えが浮かぶ。だとしたらそれは一体何か、日向の眉間にシワが寄っていく。

2018-11-29 21:13:31
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(…伊勢のような奴もいる以上、何かを企む者達が蠢いていてもおかしくはない。我々の知らない所で、何かが進んでいる…これは考え過ぎであれば良いのだが) 自分一人なら良いが、日向には周りの人間がいる。だから用心深くなる、何度杞憂に終わっても、用心する事をやめなかった。

2018-11-29 21:15:13
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そうこうするうち、彼女は控え室のドアへと辿り着き、それを開く。 「やっほ、今日は私の方が早かったねぇ」 ドアを開くと、へらへらとした軽い声が日向に浴びせられる。声の主は伊勢、彼女は初めて、日向より先に控え室に入っていた。

2018-11-29 21:16:45
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ニヤついたその顔を見るだけで日向は頭血しそうになるが、感情を揺らした状態では伊勢相手に勝ち目はない。今は友好…もとい、表面的なこう着状態を作るしかない、彼女は堪えて椅子に腰掛ける。 「おやおやぁ、今日は随分と大人しいじゃん?またチャンバラしたっていーんだよ?」

2018-11-29 21:17:35
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絶対の自信があるのか、伊勢は日向の神経をひたすらに逆撫でする。しかし日向は心を鎮め、これを無視する、心を鏡のような水面にして、鎮める。 そんな彼女の様子を見て、伊勢は愉しそうに笑う。日向の一挙手一投足は、彼女にとって娯楽なのだ、無視されようが反応されようが、だ。

2018-11-29 21:19:19
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だがひとしきり笑った後、伊勢は声を低くして日向に顔を近付けた。 「まあ、何でも良いけど…今日も勝たなくっちゃあダメだよ、まだ、負けちゃあいけないんだからさ…」 「何…?」 試合に負けるつもりはない、だが伊勢の言葉に日向は違和感を覚え、訊き返す。

2018-11-29 21:20:43
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「…どういう意味だ、この試合が、何か特別か?」 相手はピンクショッカーズ、駆逐艦娘二人という平々凡々なチームだ、特別には見えない。伊勢もそれは承知なのか、含み笑いを浮かべて言った。 「特別はこの試合じゃあないよ…でも、この試合には勝ってもらわなくちゃいけないんだ、フフッ…」

2018-11-29 21:21:55
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伊勢は思惑を孕んだ笑みを浮かべて答えると、日向から離れ、椅子にだらしなく腰掛ける。日向はそこへ懐疑的な目を向ける。 (…どういう事だ、わざわざ何故そんな事を…) 伊勢の思惑が分かった試しはない。しかし今は、これと組む以外の選択肢は用意されていないのだ。

2018-11-29 21:23:24
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そんな彼女の前で、伊勢はニタニタと笑いながら足を組む。 (横須賀の二人は勝ち上がって来た…この次、この次なんだよ…) 試合開始が迫る、この先に何があるのか、日向は知らず、伊勢は分からない。 〜〜

2018-11-29 21:24:53
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〜〜 試合開始直前、母艦のカタパルトにて、ピンクショッカーズの二人は待機していた。 「相手は航空戦艦娘だっけェ?めんどくせえな…」 サザナミはぶっきらぼうに吐くと、手持ちの主砲をかちゃかちゃと弄る。取り回しの良いシンプルな連装砲だ。

2018-11-29 21:26:39
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その隣で、シラヌイは無表情のまま待っている。そんな彼女をサザナミは睨む。 「おいヌイクソ、流石に艦載機持ち二つは分が悪りィんだ、今回はきっちり働けよな」 一回戦でのシラヌイはまるでやる気がなく、支援などまるでしていなかった為、サザナミはクギを刺す。

2018-11-29 21:28:26
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だが、シラヌイは気に留めていない。 「この度の戦闘は無意味だと何度も言っているでしょう、やりたければ勝手にどうぞ。」 サザナミは肩を竦める。 「あんだよ、データ収集出来んだろ?」 「データは十二分にあります、これ以上は不要です。」 「ケッ、ンなわけあるかよ」

2018-11-29 21:30:34
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無表情なシラヌイの顔は、見方によっては澄ましたようにも見える。サザナミはそれが気にくわないといった風に悪態を吐いた。 「…まあいいわ、オメーが海に出てさえいりゃあ、戦わせる事は出来っからな」 「上手く行けば良いですね。」 そうこうしてるうち、外からアナウンスが響く。

2018-11-29 21:31:47
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サザナミはコキコキと首を鳴らし、艤装を構える。 試合開始は、もう目の前だった。 〜〜

2018-11-29 21:33:07
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〜〜 試合が始まると同時、両者は速度を上げて突っ走る。 (相手は駆逐艦娘のペア…距離を取った戦いが正解だが、そう易々とはやらせてくれんだろうな) 日向は正面を睨みつつ思案する。艦載機で完封できるような相手がベスト8に残るはずはない、そういう読みだった。

2018-11-29 21:35:13
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そして、その読みは的確に当たった。 「…!速いな!」 偵察に出していた瑞雲の反応に日向は身構える、相手は速やかな接近からの機動戦を狙っているようだった。 なら日向達の取る行動は一つ、瑞雲と豊富な火器を駆使し、距離を取った砲撃戦での制圧を狙う事だ。

2018-11-29 21:36:51