アルター・オブ・マッポーカリプス #3

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……!」数秒の気絶の後、サツバツナイトは再び意識を取り戻した。まず認識したのは凄まじい苦痛だ。むしろ彼はその苦痛を手繰り寄せた。そこに命がある。身体の自由は利かない。力を込めて、腕を、背中を、身体を壁から剥がすには呼吸が要る。 1

2018-12-04 21:21:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……!」シンウインターとの直前の交錯の記憶がフラッシュバックした。負けたか?彼は顔をしかめた。否。ジツを繰り出したシンウインターは指を失い、オーロラの力を再び充填させる必要がある。そしてサツバツナイトには命がある。ならば彼のカラテは無駄ではない。「スウーッ……ハアーッ……」 2

2018-12-04 21:23:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼は己の身体の音を聞いた。粉砕した肋骨、鎖骨が、筋肉の収縮によって再び圧し合わされ、かりそめに繋がってゆく感覚に意識を向ける。「スウーッ……ハアーッ……」呼吸だ。この地の成り立ちを、エレメントを理解し、助けとせよ。チャドー。フーリンカザン。そしてチャドー。死ぬわけにはいかぬ。 3

2018-12-04 21:26:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「スウーッ……!ハアーッ……!」死ぬわけにはいかぬ。今の彼には為すべきことがある。それは具体的なミッションではない。しかし、彼にしか出来ぬ事だ。霞む視界の焦点を、シンウインターと対峙する赤黒のニンジャに合わせようとする。(……マスラダ……!)あの若者を……そして……(ナラク!)4

2018-12-04 21:29:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【アルター・オブ・マッポーカリプス】#3

2018-12-04 21:30:17
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

マスラダの呼びかけに応え、瞬時に時間は凍りつき、眼前にナラク・ニンジャが現れた。邪悪な魂は燃える目でマスラダを見た。マスラダは言った。「ナラク。力を貸せ」「ググググ……」ナラクは笑った。「愚かな。オヌシがこれまで戦えたのは何ゆえにだ?儂がオヌシに力を貸さなんだ事はあるまい……」5

2018-12-04 21:33:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

無数の怨嗟の叫びで形作られた輪郭がマスラダを包み込み、不明瞭な声は限りなく反響した。「儂はオヌシのセンセイであり、親そのもの。オヌシは儂の言うままにカラテすればそれでよい。ニンジャ殺すべし。そのすべは何もかもこの儂がくれてやる故にな……」「黙れ」マスラダは厳しく言った。 6

2018-12-04 21:35:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「実際、お前が何であろうとおれには大した違いはない」マスラダは言った。「お前はおれを助けて来た。おれが断ろうが断るまいが」「何?」「お前はおれを必要としている」「なんたる増上慢!」ナラクが怒りに目を見開き、その怒声は赤黒い嵐と化してマスラダの周囲を荒れ狂った。「なんたるバカ!」7

2018-12-04 21:39:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

不定形の異形はその長い爪でマスラダを捉え、顎にくわえこんだ。マスラダの目から血が溢れ出した。だがマスラダは一歩も引かなかった。「おれの力を貸してやる、ナラク」彼は言った。「だから、おれに力を貸せ」「……」邪悪な魂はマスラダの言葉を吟味するかのように黙り込んだ。 8

2018-12-04 21:43:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「貸し借り無しだ。ナラク!」マスラダは叫びに意志を込めた。超自然の光景が吹き飛び、眼前にシンウインターの姿があった。ニンジャスレイヤーは右手を横に突き出した。そこにはヌンチャク・オブ・デストラクションが握られていた。今やその形状は均整のとれた元の形からはかけ離れていた。9

2018-12-04 21:46:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

黒く燃えるヌンチャク、棍のそれぞれに、溶岩めいて輝く「奈」「落」のエンシェント・カンジが浮かび上がった。ニンジャスレイヤーはヌンチャク・ワークを開始した!「イヤーッ!」バッ!バッバッ!黒い影が旋回し、赤い火を噴く!今やヌンチャク棍の両端には超自然刃めいた炎が生え、残像を伴う!10

2018-12-04 21:49:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

内側から己をはち切れさせるような不安定さは今やなく、メンポは正常に戻り、赤黒の火を湛えた眼差しはマスラダ・カイのものだった。彼は邪悪なるヌンチャクをワークし続けた。その速度は上がり続け、赤黒の炎は鬼の衣じみて乱れ舞った!「コシャクな!」シンウインターは吐き捨てる! 11

2018-12-04 21:51:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

シンウインターの手には再びオーロラのロング・ドスが育っていた。万色のヤリを凄まじき速度で繰り出す!「イヤーッ!」「イヤーッ!」二つの光が破滅的な軌跡を描き、喰らいあう!「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」 12

2018-12-04 21:54:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

横斬撃!縦斬撃!「グワーッ!」袈裟!浅い!ニンジャスレイヤーはヌンチャクを振り、高く構える!「イヤーッ!」シンウインターは大上段からの斬撃を繰り出す!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはヌンチャクを繰り出す!斬り下ろしながらシンウインターは呻いた。一刀に対し、ヌンチャクは八打! 13

2018-12-04 21:58:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イイイイイイヤアアアーッ!」棍と棍が複雑怪奇な軌跡を描き、赤黒の炎と光が凄まじい残像を生じた。シンウインターは後ずさった。八打のうち三打の打ち込みを許している。「イヤーッ!」シンウインターは斜めに斬る!「イヤーッ!」ヌンチャク!さらに八打!「グワーッ!」 14

2018-12-04 22:00:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」「グワーッ!」KRACK!KRACK!KRACK!KRACK!「イヤーッ!」「グワーッ!」KRACK!KRACK!KRACK!KRACK!「イイイイヤアアーッ!」「グワーッ!」乱れ打たれ、後ずさるシンウインター!ニンジャスレイヤーはヌンチャクワークを再開!再び乱れ舞う赤黒の炎! 15

2018-12-04 22:02:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「チィ……!」シンウインターは唇を舐め、ニンジャスレイヤーが攻勢に出れば叩き切る構え!だが!「イヤーッ!」瞬時にうつ伏せに近く身を沈めたニンジャスレイヤーのヌンチャクの炎はシンウインターの脛を切り裂く!「グワーッ!?」「イヤーッ!」そこから上へ跳ね上げる!「グワーッ!」 16

2018-12-04 22:05:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

オーロラのドスが宙を舞った!「ヌウッ!」シンウインターはドスに手をかざした。させぬ!ニンジャスレイヤーは目を光らせた。「イヤーッ!」宙のドスめがけヌンチャクを投擲!すると、見よ!まるで邪悪な赤黒のドラゴンめいて、ヌンチャクは凝縮されたオーロラに襲い掛かり、喰らいついたのだ! 17

2018-12-04 22:07:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

シンウインターのこめかみに怒りの血管が浮かび上がる。オーロラを爆発四散させ、己の身体に取り込む……それが阻まれている!「貴様のカラテは理解した!」ニンジャスレイヤーは叫んだ。彼は前傾姿勢をとった。それはナラク・ニンジャのカラテをなぞった、マスラダ・カイのカラテだった。 18

2018-12-04 22:09:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

シンウインターの全身をニンジャアドレナリンが駆けた。思わぬ苦戦……屈辱である。オーロラは無限だが、無尽蔵ではない。取るに足らぬニンジャ三匹を捻じ伏せ、そこへ今またこの一匹……単に一対一のイクサであればこのような苦戦は無かった。なんたる度し難き者ども。 19

2018-12-04 22:13:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

左手の指は欠け失せ、オーロラは底をついた。再び身に纏うために何秒かかる。時間を稼がねばならぬ……どう稼ぐ?ニンジャスレイヤーが身体を軋ませる。ここへ至り、不意にシンウインターは己の足元の氷を覚束ないものに思う。ザルニーツァ!彼の視界に愛しい娘が映る。カラテに敗れ、倒れた娘。 20

2018-12-04 22:16:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

即ち、インタラプトする手駒は無し。何故この流れに至った?シンウインターはショーギの盤面を前にしていた。数手前まで彼は敵を圧倒していた筈だ。何故、オーテ・ツミが見えている。何故この敵がいる。鈍化した時間の中で、ゆっくりとニンジャスレイヤーが迫る。頭が地に着くほどの前傾姿勢。 21

2018-12-04 22:19:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「AAAAAARGH!」赤黒のドラゴンは万色のエネルギーに焼かれながら、牙を噛みしめ、毒を貪った。その光に照らされ、二人のニンジャはワン・インチ距離に達した。影と影がカラテをぶつけあった。「イヤーッ!」「イヤーッ!」KRAAASH!右拳と右拳が衝突!砕ける! 22

2018-12-04 22:22:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーの裂けた右拳から血と火が噴き出し、溶かし、鍛造し、作り直していく。だが、構わず彼は左拳を繰り出した!「イヤーッ!」「イヤーッ!」 シンウインターは応じようとする!ナムサン!握れぬ左拳で!KRAAASH!「グワーッ!」シンウインターの左手が手首まで裂ける! 23

2018-12-04 22:24:32