戦術人形ログ "Wake up, girl"

寝る子@ @neruko3114

ドールズフロントライン二次創作 #戦術人形ログ 「M4A1」のログより: "Wake up, girl"

寝る子@ @neruko3114

気付けば，光のない一切の暗闇の中に，私はいた。 #戦術人形ログ

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見渡す限りが暗黒に包まれている。ここには私しかおらず，他の生命の気配はない。そんなところに私は立っていて，しかし地に足がついている感覚はない。かといって宙を揺蕩うような感覚もない。一切合切が黒で塗りつぶされた世界に，私はいる。 #戦術人形ログ

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ここは暖かくも涼しくもない。例えるなら人肌程度の湯に浸かっているような，そんな感じ。口からこぼれた泡が上へ上へと漂って，闇に塗りつぶされて消える。それを見上げて，私はここが光の届かない程に深い水の中だろうかと思った。 #戦術人形ログ

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水の中なら，耳が音を捉えてもいいはずなのに，私の耳は無音を貫いている。私の肌も，水を感じない。試しに手を動かしてみる。すると，水の中にいるはずなのに抵抗を感じられず，まるで地上にいるかのように手が動く。それから気付いたのは，少しも息苦しくならない。 #戦術人形ログ

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ここは不思議な場所だ。水の中なのに音は聞こえず，手を動かしても抵抗はなく，少しも息苦しくならない。とても不思議なここは，もしかしたら夢の中なのかもしれないと，私は思った。だとしたら，一体いつから夢を見ているのか，少し気になったがそれ以前の記憶が私にはない。 #戦術人形ログ

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…………。私がここにいると気付いてから，どれだけの時間が経っただろう。この暗い水の中では時間という概念すら希薄で，私はただここで立ち尽くしている。 #戦術人形ログ

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ふと，私を包む暗闇に白い光が差し込んだ。その光は私から見てずっとずっと遠くにあって，しかし私に向けられているように思えた。私に対する目印であろうか，とも私は思った。この虚無の暗黒に差した一筋の光は，私を導いてくれるような気がしたから。 #戦術人形ログ

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私は遥か向こうにある光に向かおうとして，足を動かす。水の中にいるはずなのに，まるで地上に立っているかのように歩きだせた。一歩，また一歩踏み出す。こんな暗闇の中では自分の位置すら定かではない。だと言うのに，踏み出した足はたしかに前に進んでいるような錯覚を私に抱かせる。 #戦術人形ログ

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そうしてずっとずっと向こうにある光へと私は歩みを進めていく。そうする内に光は段々と明るさを増していき，やがて私の視界は明るくなりすぎた光によって白一色に染まって――― #戦術人形ログ

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...... > ************************************** > *** I.O.P. Condidential Restricted *** > ************************************** > T-Doll Integration System ver. 4.1.0.0c produced by 16LAB > (C) Important Operation Prototype manufacturing, Inc. #戦術人形ログ

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> [!] Energy supply detected > [+] Run: Boot sequence ... done > [+] Run: Self check ... done > 0 error(s) > [+] Run: T-Doll Module connetion check ... done > 0 error(s) > [+] Run: T-Doll Module initialization ... done > 0 error(s) #戦術人形ログ

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> [+] Load: T-Doll basic component ... done > [+] Load: Integrated mental component ... done > [+] Load: Basic mental module ... done > [+] Load: Mental supplement module ... done > > [!] Additional module detected > [+] Load: Commander module ... done #戦術人形ログ

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> > ***System boot process complete!*** > > Good morning! > #戦術人形ログ

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<System log: 2061-04-26 14:02:36> そして私は目を開いた。視界に入ったのは真っ白な天井と，そこに埋め込まれた照明器具の光。照明の眩しさに思わず目を細め，手をかざす。 #戦術人形ログ

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「おはよう」不意に声がして，影が差した。手をどけると，女性が私をのぞき込んでいた。端整な顔立ち，ぼさぼさの髪に眼鏡，睡眠不足なのか目の下には隈がある。前を開いた白衣からは薄く色味が付いたシャツが見える。それからかすかなコーヒーの匂い。 #戦術人形ログ

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「調子はどう？」「……調子？」消え入るような少女の声がそれに答える。「そう，調子」疑問にオウム返しに答えて，同じ言葉がそのまま返ってきた。私は少し考えて口を動かす。「悪くはない，と思います……」再び消え入るような少女の声。少し遅れてそれが私自身の声だと気付いた。 #戦術人形ログ

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「そう，ならいいんだけど」女性は私から離れて，近くの机に向かう。「起動は問題なし。音声モジュールも機能してる」そして机に向かって手を動かしていた。私は上体を起こして，部屋を見渡す。真っ白な部屋の壁際にはよく分からない機械が並んでいて，時折ランプが明滅している。 #戦術人形ログ

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見知らぬ場所だと私は思った。知らない場所に知らない人，ここはどこかと私は問いかける。「あの，ここは……？」女性は振り返って机によりかかる。それからマグカップを口に運んですすった。「ここは16LABの研究所で，貴方はうちで作られた戦術人形」 #戦術人形ログ

寝る子@ @neruko3114

返答した女性の頭部には，何かの動物の耳を模した機械がついていた。背中まで伸びる髪の色と同じそれは，時折動いて女性の姿にかわいらしさを添えている。彼女の返答に私は困惑した。「……人形？……私が？」真偽を確認するように，私は自分の体を見た。 #戦術人形ログ

寝る子@ @neruko3114

胴体は滑らかな曲線を描いていて，そこには人形らしい継ぎ目は見えない。それから自分の両手を目の前で広げてみる。手の平，手の甲，関節をじっくりと眺めてみるがどこにも継ぎ目は見られない。腕も同様である。めぼしい関節という関節は見てみたが，どこにも継ぎ目は見られない。 #戦術人形ログ

寝る子@ @neruko3114

どう見ても私の体には人形らしさはなく，むしろ人間と寸分も違わない。むしろ人形という設定の人間だと言われた方がしっくりくる。「技術の進歩はすごいもので，最近の人形は人間ととても区別がつけられない」女性の言葉を聞いても，とても私は自分が人形であるとは思えなかった。 #戦術人形ログ

寝る子@ @neruko3114

「私が人形だなんて……とても……」「でしょうね。でもそれは事実。貴方はうちの最新技術をつぎ込んだ戦術人形よ」「えっと，その……戦術人形というのは……？」わずかな呼称の違いがふと気になって，私は女性に問いかけた。 #戦術人形ログ

寝る子@ @neruko3114

かすかに，女性からため息が聞こえたような気がした。私は何か間違えたような気がして，ばつが悪い気持ちになった。「ちゃんと認識できてるって聞いてたのに，話が違う……」女性は小声で何事か言うが，私にはよく聞こえなかった。 #戦術人形ログ

寝る子@ @neruko3114

女性が言うことをいくらか譲って受け入れて，私が彼女の言う戦術人形というものだとする。だとすれば，その戦術人形というものは何なのか気になった。わざわざ人形と呼ばずにそのように呼ぶということは，ただの人形とは違うだろうということだけ，なんとなく察せた。 #戦術人形ログ