文芸春秋戦後復刊号からの抜粋

今回の震災と太平洋戦争との社会環境の類似性を指摘する声は多い。外面的な類似性のみならず、日本人の言論思潮の面においても類似性があると思う人は多いだろう。例えば原発事故の当局の説明が二転三転し、真実を見えにくくする表現を用いているところが退却を転進と表現していた大本営発表を思い出すこと、福島原発の安全対策が極めて不十分なところが、国力の圧倒的な差を省みずに戦争に突き進んだ軍部との間で、不合理性という点で大きく共通することなどがあろう。 続きを読む
1
Jun Yasuda @jyasuda1

今回の震災と太平洋戦争との類似性を指摘する声は多い。津波の被災地と空襲後の風景の類似性、物資不足の状況など外面的にも類似している。また原発事故の当局の説明が、真実を隠していた大本営発表を思い出すこと、原発の不十分な安全対策が不合理な戦争突入と大きく共通することなどがあろう。

2011-05-01 00:06:52
Jun Yasuda @jyasuda1

学者や知識人の警鐘によっても、原発の安全対策や地震予知、放射線被爆に対する政府・東電による対策の改善が進まない点も、戦争反対者がいながら結局戦争に突入したのと類似している。日本気象学会の放射性物質の予測の発表を控える呼びかけも戦争当時の言論統制を想起させた。

2011-05-01 00:09:17
Jun Yasuda @jyasuda1

今回の震災と太平洋戦争時の思潮的類似性について考える材料を提供する。文芸春秋の敗戦直後の昭和20年10月号の復刊号に掲載された11本の随想の中から、今の日本人にも耳が痛いと思われる文章を抜書きする。

2011-05-01 00:09:44
Jun Yasuda @jyasuda1

(文春戦後復刊号1)菊池寛:国家が国運を賭して最後の一戦を試みたというのなら、あきらめようもあるが、戦前の日本がそれほどの危機に瀕していたとは誰も考えられないだろう。

2011-05-01 00:10:24
Jun Yasuda @jyasuda1

(文春戦後復刊号2)吉川幸次郎:建設は悲傷と悔恨を底に蔵し、その上に立つものでなければならぬ。

2011-05-01 00:11:04
Jun Yasuda @jyasuda1

(文春戦後復刊号3)正木あきら:「原子爆弾が米国文化を表徴する如く、斬込特攻隊は現日本文化の本質を最も良く表現していると見るべきである」「哀れなる民族、彼らの生まれる処は既に柵の中である。島国民族の悲しさ、彼らの一部は既に生まれながら家畜の心理を持つに至った」

2011-05-01 00:11:27
Jun Yasuda @jyasuda1

(文春戦後復刊号4)正木あきら:「口に禁欲を説き、死の哲学を強行させながら、日本の戦争責任者と、その便乗者ほど酒をのみ、遊興に耽ったものがあるか。彼らは戦争を享楽の対象とし、致富の術となしたのだ」

2011-05-01 00:11:49
Jun Yasuda @jyasuda1

(文春戦後復刊号5)中谷宇吉郎:やれば出来るに決まっていることをやるのを研究と称することになっていたわが国の習慣では、それも致し方ないことであった。

2011-05-01 00:12:13
Jun Yasuda @jyasuda1

(文春戦後復刊号6)中谷宇吉郎:原子力兵器の出現に遭ってから、慌ててその方面に関係した器械を注文するのでは仕様がない。しかしそれに類したことが、実際に屡々起こっているのである。

2011-05-01 00:12:32
Jun Yasuda @jyasuda1

(文春戦後復刊号7)阿部真之助:当局者の考えでは、人民は馬鹿のものだから、事実を知らして失望させるのはよくない。なるべく体裁のいいことだけを示していれば、松毛虫の行列のように何処までも妄信的に先導者の後についてくると、かように信じていたもののようだ。

2011-05-01 00:12:51
Jun Yasuda @jyasuda1

(文春戦後復刊号8)武者小路実篤:世界一の学校、世界一の研究所、あらゆる種類の人間の生命を尊重する学術の研究所をつくることができ、その結果を国内で十分生かすことができたら、土地は狭くなっても面白いことは出来ていいはずと思う。

2011-05-01 00:13:16
Jun Yasuda @jyasuda1

(文春戦後復刊号9)水谷長三郎が日本社会党結党とその政策課題について記した文章がある。党名についてだけで延々半頁も費やし、敗戦の反省はない。課題は列挙されているが、当事者意識の欠如が目立つ。現在の民主党が政権を奪取したときの準備不足はこのときから始まっていたように思われる。

2011-05-01 00:13:36
Jun Yasuda @jyasuda1

戦前の政府に比べると今の日本の政府の科学政策はより手厚くなっているし、隠蔽体質も事故当初の東京電力にはあったが、かつての大本営発表ほどのごまかしはなされていないと期待したい。要は戦後日本の政策はそれなりに進歩してきたのだが、いまだ足りないとというのが本当のところなのだ。

2011-05-01 00:13:59
Jun Yasuda @jyasuda1

戦後60年間、改善が認められたものの不合理性、科学軽視、異文化軽視、お手盛り体質、虚偽報道と世論誘導、人権軽視は厳然として残る欠陥である。Naïveな意見だが、これらは権力特有の問題であり、相互に密接な関係がある。

2011-05-01 00:14:16
Jun Yasuda @jyasuda1

民衆に情報を与えずおろかな状態においておくこと=虚偽報道の結果、生産性が著しく低下し、科学を軽視せざるを得ないほど国力が低下する。お手盛り体質はその体制に組み込まれなかった人間の人権を軽視することにつながり、結果として人知を結集することを困難にする。

2011-05-01 00:14:37
Jun Yasuda @jyasuda1

改善策としては思い切って、学者を閣僚に登用するのが一番の早道だろう。反対も多そうだが。

2011-05-01 00:15:22
Jun Yasuda @jyasuda1

昨日は結論が尻切れトンボであったので追加の提言をする。合理的な判断が出来るリーダーの育成が重要だし、義務教育の段階での科学教育の改善が必要だろう。物理化学を暗記科目に落とし込むのではなく、実生活とのつながりを重視した指導をすべき。

2011-05-01 07:03:25
Jun Yasuda @jyasuda1

科学の最大の弱点は「それが今すぐ役立つのですか」という質問にたいていの場合「無理です」と答えざるを得ないことである。すぐ役立たないものに投資できる「政府」に依存せざるをえない。だから科学者は政府に対して基本的に「強くは出られない」。

2011-05-01 07:03:59
Jun Yasuda @jyasuda1

生殺与奪を権力者に握られている科学者は原則として権力に従わざるを得ない。だからこそ、政策決定の場に科学者を登用する必要がある。閣僚に最低1名、理系文系問わず大学教員・研究所員などから派遣するようにすべきだろう。各省庁でも博士号を持つ職員を多数雇用すべきである。

2011-05-01 07:04:59