天才だと思う研究者とは?

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shinshinohara @ShinShinohara

同僚で、この人は天才だと思う研究者がいる。この人と話していて合意したのは、「目の前を通り過ぎていく現象に気づくかどうか」。たぶん、多くの研究者の目の前を、これまでに知られていない現象が通り過ぎている。だけどそれを拾おうとする人は多くない。「計画にない」からだ。

2018-12-19 07:20:05
shinshinohara @ShinShinohara

「ドラえもん」で、ママのネックレスを入れたオモチャの宝箱を探すというゲームの話があった。地図を見て探すが、なかなか見つからない。焦りが出て、ジャイアンやスネ夫の助けも借りて探す。古い木箱を掘り当てるけど、「こんなのじゃない!」とのび太。実はそれ、大判小判が詰まった本物、という話。

2018-12-19 07:23:29
shinshinohara @ShinShinohara

今の研究者は、計画通りに研究を進めることを求められている。三年後にはこれを達成し、五年後にはあれを達成、と。しかし計画通りに進むのは、研究というより事業。どんな結果が出るか未知のことには手を出せなくなる。で、実現可能性の高い、しょうもない目標を立てることになる。

2018-12-19 07:26:40
shinshinohara @ShinShinohara

しょうもないなりに「事業」としてはそれなりの業務量だから、必死にならないと計画通りに進まない。勢い、目の前に「宝箱」が現れているのに、計画で目指す「オモチャ箱」に気を取られ、見逃していく。そしてオモチャ箱を手にして、やれやれと安堵する形。

2018-12-19 07:29:23
shinshinohara @ShinShinohara

「天才」と思う研究者と私は、計画を「達成する必要なんてない、仮置きの目標」だと考えている。目標を達成できなくても一向に気にしない。ただ、一応、計画通りには進める。大事なのは、その途上で現れる「宝箱」を見逃さないことだ。

2018-12-19 07:32:40
shinshinohara @ShinShinohara

「計画通り」に実験を進めていても、不思議なことが結構起きる。普通はこうなるだろ、と思っていたことが、ある確率で起きない。別のことが起きる。「これはハプニング」として統計処理し、無視する人が多いが、私はそれこそ宝箱だと考えている。偶然で済ませてはもったいない。

2018-12-19 07:35:38
shinshinohara @ShinShinohara

例えば、トマトの苗に病原菌を接種しても、全部枯れるわけではない。生き残るのが一定数ある。統計処理するだけで終わらせるのもありだが、確実に病原菌はとりついたのになぜこれは枯れなかったのか?不思議に思う気持ちが大事。それに何か、未知のことが起きているのかも。

2018-12-19 07:38:27
shinshinohara @ShinShinohara

経験値が「宝箱」を見えなくする原因となることがある。何度も同じ経験をして、「こうしたハプニングはつきものだ」と不思議に思わなくなり、「路傍の石」化して、意識に上らなくなるのだ。目の前に宝箱が姿を現しているのに。

2018-12-19 07:41:10
shinshinohara @ShinShinohara

「天才」の人と、私は、多くの人が当たり前と考えるようになったことをよく不思議がっている。「こうなってもいいはずなのに、なぜそうならないんだろう?」経験豊富な研究者なら、「それはそういうものだ」と説教食らわして終了。しかし私たちは、「何でだろうねえ」といつまでも不思議がる。

2018-12-19 07:44:56
shinshinohara @ShinShinohara

宝箱を見えなくするもの、それは「これはこうなるものなんだ」と、当たり前の現象として不思議がるのをやめてしまうことも一因。人間はあれもこれも考えていると時間がなくなるから、「考えなくする」処理が必要なのだけれど、この処理の仕方をすると、不思議に思わなくなる。

2018-12-19 07:48:37
shinshinohara @ShinShinohara

私はこうする。「不思議だなあ。今は検討する暇がないけど、不思議だということは覚えておこう」。当座、考えないことにするのは同じでも、こう処理すると話が全然違ってくる。また同じ現象と出会ったとき、「あ、また!不思議だなあ」と感じる新鮮さを失わないのだ。

2018-12-19 07:51:00
shinshinohara @ShinShinohara

不思議な「ハプニング」に何度も出会ううち、「これは、全体の中では確率が低いけど、毎回顔を覗かせるということは、再現性は高い現象。なら、やっぱり何か起きている。何だろう?発生確率を高めるにはどうしたらよいだろう?」と考えるようになる。そこから新しい研究は生まれる。

2018-12-19 07:53:26
shinshinohara @ShinShinohara

計画通りに進めることに必死で、途中の「宝箱」に目を向ける余裕を見失うこと、経験を重ねるうちに「これはこういうもんだ」と当然視して、路傍の石化してしまうこと。これが、創造性の高い研究をするジャマとなっている。研究をPDCAサイクルなんかで回したら、余計にひどくなる。

2018-12-19 07:56:52
shinshinohara @ShinShinohara

研究計画なんて「とりあえず」で構わない。旅に出なければ出会いが生まれないように、研究も、とりあえず計画を立てる。しかし、面白い出会いがあれば旅行の計画を変更しても構わないように、研究も面白い出会いがあれば変更して構わない。そもそも、「出会う」ことが目的なのだから。

2018-12-19 08:00:21
shinshinohara @ShinShinohara

そして、一つ一つの出会いを当然視するのではなく、「不思議がる」こと。面白がること。すると、「これをもっと掘り下げたい!」というものが見つかる。掘ってみてダメだったら次に移って構わない。不思議に思う気持ちさえあれば、本当に面白い現象に出会ったとき、のめり込む。

2018-12-19 08:03:24
shinshinohara @ShinShinohara

研究者は、どんなことも「当然視」してはいけない。経験上、常に確実にそうなることも「不思議だなあ、必ずそうなるんだもんなあ」と不思議がることが大切。よく言われる「疑う」ことは、私は不要だと思う。何でも斜に構える皮肉屋が生まれるだけだから。

2018-12-19 08:06:18
shinshinohara @ShinShinohara

不思議がること、驚くこと。センス・オブ・ワンダー(自然の神秘さ、不思議さに目を瞠り、驚く感性)を大切にすること。そうすれば、みなが当然視している日常から、不思議がいっぱい立ち顕れる。

2018-12-19 08:08:40