丸山天寿先生の「物語を書く時の言葉の使い方」

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丸山天寿 @tenjumaruyama

 昨夜、言葉の使い方についてのツイートを見た。少し気になったので一言。私は言語学者ではなく、市井の郷土史好きの親父だ。土地と人の関係を知るために、少し言葉の研究をしている。特に漢語と和語の違いには興味がある。言葉の使い間違いの多くはこの違いから出ていると言っても良い、と思う。→

2011-05-01 06:53:56
丸山天寿 @tenjumaruyama

例えば「全然」と言う言葉は、私の年代の人は否定に使うが、現在の若者は肯定にも使う。本来「全」は「入口のある倉庫に工具を収納する」字で、すべて、まっとうする、の意味。「然」は「いけにえの犬を火で焼く」でもやすの意味で、「しかり」「しかれども」の両方の意味になる。どちらにもとれるのだ

2011-05-01 06:56:07
丸山天寿 @tenjumaruyama

 したがって「全然」は否定にも肯定でも意味が通じる事になる。事実、私の祖父の年代では肯定の意味にも使用していた。言葉は時代によって変わる。一番移り変わりの激しい流行とも言える。ただ、文章を書く人間はなるべく保守的であらねばならないと思う。積極的に「造語」を意図するなら別だが。→

2011-05-01 06:57:54
喜多野土竜 ⋈ @mogura2001

テレビ黎明期、外国ドラマを翻訳した脚本家は、できるだけ流行語を取り入れずオーソドックスな日本語に訳出した。結果、時代を経ても古さを感じない永続性を得た。岡本綺堂が古くならない理由も同じ RT @tenjumaruyama: 文章を書く人間はなるべく保守的であらねばならないと思う。

2011-05-01 07:59:36
丸山天寿 @tenjumaruyama

「兵」は「廾=りょうて」と「斤=おの」で出来た字。両手で持つ手斧で武器を意味する。転じて、「兵士」「軍人」あるいは「戦」そのものを表し、動詞にも使う。「つわもの」は和語で「兵」の字をあてた。「強者」を「つわもの」と読むのは二重変換のようなもの。言葉の使い方は間違っていないと思う

2011-05-01 06:59:44
丸山天寿 @tenjumaruyama

あきらかな言葉の間違いもある。例えば「弱冠」。二十歳くらいの人。その若さ、の意味に使う。出典は「礼記」「二十曰弱冠」とあるのを「二十を弱冠と曰う」と呼んでしまった。これは「二十を弱と曰う、冠す」と読むべき。礼記の前後の文章を読めば分ることだ。読み方を間違ったから意味も違う。→

2011-05-01 07:01:12
丸山天寿 @tenjumaruyama

 あげくには「若冠○○歳」などの誤用も出て来る。和語の「若い=二十前後」がくっついたものだろう。本来は二十は「弱」でその頃に冠をつける、すなわち「弱冠」は成人して冠をつけた男子、と理解するべき。女性には使わない。万葉集では女性に対して使っているようだが、あれも誤用のように思える→

2011-05-01 07:03:01
丸山天寿 @tenjumaruyama

ただ、物語を書く時に「厳密」に書かねばならぬかどうかは、別問題だと思う。作者の意図や話の状況が読者に伝わらねば、何の意味もない。文豪と呼ばれる先生方も、大いに「新語」「造語」を使っておられるし、中にはその言が独立してしまった物もある。それに目くじらを立てて騒ぐのも大人げない→

2011-05-01 07:05:11
野知潤一 TIAOBooks 発行人 @mao3mao3

@tenjumaruyama 「語り部」は「騙り部」でもあるわけですからw

2011-05-01 07:50:47
丸山天寿 @tenjumaruyama

拙は「中国古代」の物語を書いているが、その中で「診療室」や「捜査」の言葉を使う。当然ながら紀元前にそんな言葉も観念もない。そも、中国古代の庶民の生活など殆ど記録に残っていない。「ホラ話」だからと承知の上で、現代用語を使っているが、読者に伝わる言葉でないと意味がないと思うからだ

2011-05-01 07:06:50
丸山天寿 @tenjumaruyama

教科書や学術書はともかく、「小説」や「物語」は、あきらかな誤植は別として、多少、強引な言葉使用は許されるのではないか。ついでに言うなら「校閲」で行われる「差別用語」の変換なども神経質すぎると思う。商品であるから、読者に不快感を与える物は駄目だが、面白さを殺してしまう時もある

2011-05-01 07:09:20
丸山天寿 @tenjumaruyama

断っておかねばならない。私は白川先生や、金田一先生のような言語学者ではない。あちこちの文献から資料を拾い集めているだけで、それらは物語のネタとして使う。拙著「琅邪の鬼」を出した時に某学者から「孫引きは駄目。この作品の原典を示しなさい」と説教された。そんな物はありません。物語です。

2011-05-01 07:13:23
丸山天寿 @tenjumaruyama

言葉は面白い。笑話を一つ。検閲されるかな。寺の和尚が、参詣の人妻に悪心を起こした。人妻は「助けて」と叫ぶが、和尚は「寺の回りには『関帝廟』『城皇廟』があるだけで人はいない」と強引に事に至った。人妻はしきりに「廟、廟」と叫んだ。「廟」は「妙」と同じ発音で「気持ち良い」の意味がある

2011-05-01 07:16:56
汀こるもの@探偵は御簾の中 @korumono

【RT言及】俺の書いているものも論文ではなく物語なので、結構ボロボロ間違ってます。受験を考えてる人は真に受けないでください。

2011-05-01 09:34:01
山口芳宏 @yama_yoshi

@tenjumaruyama ぼくも「雲上都市の大冒険」を書いているときは、方言をどうするか迷いました。というのも、あの時代の東北弁ってもう日本語といえないくらい通じないのですよね。結局「ニュアンスが伝わることが大切」と考え、思い切って現代語にしましたが…やはり批判はありますw

2011-05-01 07:15:49
丸山天寿 @tenjumaruyama

@yama_yoshi  お早う御座います。胸中お察しします。私も「読むと書くとは大違い」だと、書いて始めて知りました。誰からも、何処からも批判されない作品は書けないと思います。「雲上都市」は現代語で充分に「面白さ」が伝わっているから、批判する人の方向が間違っていると思います。

2011-05-01 07:34:59