【冬の魔女ア合同】強襲!暗黒料理人邪苦!奪われた氷結包丁!その1
お祭り参加用ツイートその2 ゆらぎの神話用 勢いでしかテキストを書けない駄文書きの私でも、このやり方なら続けられる…と良いなぁ! ゆらぎの神話・アリュージョニスト・アリスピ(冬の魔女合同) Advent Calendar 2018 - Adventar adventar.org/calendars/3515
2018-12-04 19:54:14天空は暗雲に覆われ、時折、稲光が走っていた。 どこまでも平らな世界の上にかかった雲は、まるでフライパンや鍋に被せられたフタのようだ。
2018-12-06 20:20:45ここは、北辺島。 文字通り世界の来たの果てに位置する、何もない島である。 島ではたしかに、北辺海特有の海の幸ぐらいは採ることが出来る。 また、北方特有の氷も、このあたりの特産品であることも否定することは出来ない。
2018-12-06 20:20:46だが、それらを加味したところで、この島が何もない荒れ島であることは、どうしようもない事実なのである。 この島は、その一面が岩地である。 ここでは、野菜や果樹のみならず、キノコ一つすら採取することが出来ない不毛の地なのだ。
2018-12-06 20:20:46この島で取れるものといえば、せいぜいが黄金くらいのものである。 黄金は確かに熱伝導率が高い金属ではあるが、そのままではあまりに柔らかすぎる。 厨具を作るためには、銀や鉄などと混ぜ、合金にする手間が必要であった。
2018-12-06 20:20:46この平たい大地の時代、または世界が【食卓界】と呼ばれた時代において、価値があるものは三種類しかない。 すなわち、美味しい食べ物、美味しくすることが出来るもの、美味しい食べ物を作り出すものの三つである。 この世界において、そこに当てはまらないものは全て無価値なのだ。
2018-12-06 20:20:47とはいえ、この島が本当に無価値なのかと言うと、実はそうでもないのだ。 物事には、なににせよ例外がつきものであるもの。 それは、この荒涼とした岩島でも変わることがない真実である。
2018-12-10 07:33:32この北辺島の更に北には、世界の果てがある。 そこは文字通りこの世界の北端であり、そこからは海水が轟々と海になだれ落ちているのだ。
2018-12-10 07:33:33そして、その世界の果てには、一つの宝物が隠されていた。 北辺島には、一年のうち数日のみ日光が差し込む期間がある。 宝物は、そのわずか数日にだけ姿を現すのだ。
2018-12-10 07:33:33北辺島と世界の果ての狭間に散らばっている無数の流氷、そのどこかに隠され、常にその位置を変えているという伝説の宝物。 それこそが、北辺島が誇る唯一の価値であり、その宝物に”認められる”ための試練こそが、この島唯一の祭事なのだ。
2018-12-10 07:33:34その宝物の名を【コルセスカ】という。 正式名称を【氷晶包丁コルセスカ】 柄から切っ先まで、その全てが伝説の水晶【チリー・クリスタル】で形成された魔性の刃である。 そしてこの包丁は、伝説の厨具職人メクセトが残した傑作【神滅ぼしの厨具】の一つでもあるのだ。
2018-12-10 07:33:34数多の料理人がこれを求めて試練に挑戦したが、いまだかつて試練を乗り越えられた者は誰もいない。 そう、今日これまでは誰もいなかったのだ。 だが、伝説は今塗り替えられる。 それも意外な人物の手によって。
2018-12-10 07:33:35* そう、それは異世界人の料理人【橋本八助】とそのパートナーの羊少女【ラム・スケープシープ・ヤミーミート】が、この北辺島を訪れたときのことであった。
2018-12-10 07:33:35と言っても、彼らは直接的にこの試練に参加したわけではない。 彼らがこの島の試練に関わったのは、あくまで行きがかり上のことであった。
2018-12-10 07:33:35八助とラムは、北辺海を航行中に海賊に襲われた。 嵐と怪物の襲撃にまぎれ、辛くも海賊からは逃げ出したものの二人は難破し、漁師の老人とその孫娘に助けられてようやく命を拾うことが出来たのだ。
2018-12-10 07:56:01だが、彼らの恩人である漁師は、悪徳商人に騙され多額の借金を背負っていた。 その借金を返済する唯一の道こそ、北辺島の【コルセスカ】へ挑む試練……に参加する悪徳商人のため、食材を用意することであった。
2018-12-10 07:56:01そう、八助たちは、べつに試練に参加してはいなかったのだ。 そもそも、北辺島の試練は、辺境の数少ないイベントとして形骸化して久しい。
2018-12-10 07:56:02いっこうに成功者が出ない試練、それも都より離れた辺境の中の辺境の地の祭事に、わざわざ参加する者など、もとより実力が無いごろつきや面白半分の参加者しかいなかったのだ。 だが、その日、その朝だけは違った。
2018-12-10 07:56:02それは、八助たちが調達した【ブルーダイヤモンド・マカジキ】を悪徳商人が雇った料理人【包丁王ブラーサーム】が見事な刺し身にした、そのすぐ後のことであった。
2018-12-10 07:56:03その時、伝説の魔包丁【コルセスカ】は確かにブラーサームの前に現れた。 【ブルーダイヤモンド・マカジキ】をも上回る美しい蒼い輝き、その全てが特殊な水晶で出来た刀身。 それこそが、まさに伝説に謳われる厨具であることは疑いようがなかった。
2018-12-10 07:56:03「それは、お前のようなクズ料理人には、過ぎた道具だ」 突如として現れた謎の料理人が、宙に浮かぶ【コルセスカ】を掴み取ったのだ!
2018-12-10 07:56:04その人物は、奇妙な服装をしていた。 それは、一見しただけでは、コック帽にコックコートと、ごく基本的な料理人の格好に見えた。 だが、その服装のあちこちには金属がくっついており、その背からは、三つの金属棒が伸びていた。
2018-12-12 07:59:32「ジャークックックックックックッ!」 その怪人物は、奇妙な笑い声をあげた。 そして、続けて高らかに名乗りを上げたのだ。 「我輩こそは、史上最高の料理人になる男、”神を食った料理人”邪苦(ジャック)・クックである!」
2018-12-15 10:09:37