アルター・オブ・マッポーカリプス #9

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【アルター・オブ・マッポーカリプス】#9

2018-12-26 21:20:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」サツガイは両手の先の宙に留まっていた二枚のハッポースリケンを同時投擲した。「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは応じるように両手をかざした。もはや掴み取りすらしなかった。ハッポースリケンはカラテの圧力に遮られ、ニンジャスレイヤーの手の前で撥ねのけられて静止。砕けた。 1

2018-12-26 21:23:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ゴーン、ゴーン、ゴーン。鐘なき鐘の音は鳴り続け、空を駆けるニンジャ達の鬨の声がそれを掻き消す。そして、ゴギン、ゴゴゴゴゴ……。やがて、ナムサン……巨大モニュメントは悲鳴めいた軋みとともに震動し始める。鎖だ。白く光る鎖を引くニンジャの仕業だ。バカげた綱引きだ。彼はニンジャなのだ。2

2018-12-26 21:26:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

クロヤギ・ニンジャは杖をふるい、ついにジツを解き放たれたウン・ニンジャはダークニンジャに襲い掛かる。そして新たなリアルニンジャがポータルから出現しようとしている。だが、サツガイとニンジャスレイヤーは地上にあって、もはや無言。赤い雨に濡れながら。 3

2018-12-26 21:28:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「SHHHH……」サツガイは食い縛った歯の間から金色に輝く息を吐き、新たなハッポースリケンを生じた。今度のスリケンは1フィートの直系があり、この世ならぬ破裂音を響かせながら高速回転していた。ニンジャスレイヤーの目から雨よりも赤い血が流れ出した。血は装束に伝い、混じり、足元で燃えた。 4

2018-12-26 21:31:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「スウーッ……フウーッ……」赤い雨がバタバタと音を立てる。ニンジャスレイヤーの背中が黒く燃えている。彼のニューロンは極限速度に達し、現実時間の全てが静止した。サツガイ以外の事象が黒く吹き飛び、そして戻ってきたとき、彼はコンクリートの天井の下に居た。マルノウチ・スゴイタカイビル。5

2018-12-26 21:34:17
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ビデオテープの巻き戻しじみて、サツガイは真後ろに歩行し、裂け目を閉じて姿を消した。マスラダが振り返ると、やってきたのはアユミである。「どうした?アユミ」「どうした、ッて……随分だね。ほら」アユミはフロシキ包みを差し出す。「言われた通りの物の筈だけど。これで大丈夫?」 6

2018-12-26 21:36:47
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マスラダは中身を確かめた。そして微笑んだ。「良かった。焦ったよ」「わたしが居たからよかったけど!」「恩に着る」「恩に着てよ」「今度飯でも奢るさ」「そうね」アユミは少し考えた。「そうだ。テンプラ」「テンプラか……」「このビ010ルにいいお店が出来たって。今度行こ0011うよ0101」 7

2018-12-26 21:38:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「高そうだな」「別にそこ10010101じゃなくてもいいけど」「いや、そ01001こにしよう。店の名前を……」アユミの肩越しに、マ010011スラダは荒地のトリイを見た。マスラダの作品があったはずのとこ0101ろには荒野とトリイがあった。超自然の風が吹いた。黒いトリイ。それをくぐり、現れた者がある。 8

2018-12-26 21:42:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

キュン。キュン。キュン。スリケンが放たれた。アユミを突き飛ばし、庇う。その者のフードの奥の闇に、嘲笑う白い歯が見える。「BWAHAHA! GWAHAHA!」「……!」マスラダは声もなく叫んだ。影は笑い続けた。マスラダの胸をスリケンが貫いた。そしてアユミ0100「違う」マスラダは首を横に振った。 9

2018-12-26 21:44:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

サツガイがスリケンを投じてアユミとマスラダを殺した瞬間の記憶は、赤黒のノイズ混じりの静止画像と化す。ナラク・ニンジャの凝視をマスラダは感じた。(((……マスラダ……!)))「かまわない」マスラダは言った。「おれに必要な事だ」彼の記憶の世界に、今一人、外部の者がいる。シルバーキーだ。 10

2018-12-26 21:47:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

マスラダはシルバーキーを見る。シルバーキーは言葉を探したのち、話し出す。「もう、止めはしない。情けない話だが、お前しか頼れないからだ」その背後には三本の銀のロウソク。「だが、ナラクの奴は……あのナラクがだぜ……おかしな話だが……お前を壊さない為に、繕ったんだ。その記憶を」 11

2018-12-26 21:50:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

GRRR……外側で不服な唸りめいて重低音が響いた。「奴にも色々あるんだろ。お前が死んだら面倒だの何だの。……他にも、多分な」「無駄話はいい」マスラダが遮った。「時間が無いぞ。おれはサツガイを倒す。そしてゾーイを引きずり出す」「ああ」シルバーキーは頷いた。彼もまた覚悟を決める。 12

2018-12-26 21:54:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

シルバーキーはロウソクの一つを自ら吹き消した。するとシルバーキーの密度が増した。内より銀に輝くニンジャはマスラダに近づき、額に触れた。波紋が生じ、静止した記憶に燃え移り、フィルムにマッチを近づけたように、その像は燃えて焦げながら散っていった。マスラダは前に進んだ。 13

2018-12-26 21:57:30
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01001001……「言われた通りの物の筈だけど。これで大丈夫?」「ああ。これだ」容器のネジ式の蓋を外すと、少しも光を反射しない黒の粉末が現れる。「助かった。足りなくなるところだった」「オリガミに使うんだよね」「そうだ。おれも浮わッついてるな……」マスラダは設営の場を見渡した。  14

2018-12-26 22:00:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

既にこの場にはマスラダとアユミしかいない。マスラダ以外の明日の展示の参加者は設営を済ませている。「これがカイの?」アユミはオリガミに近づいた。赤いオリガミだ。ツル。それから、ねじれた枝じみた、アブストラクトなものだ。「迫力を感じる」「壊すなよ。2億だぞ」「2億?」「将来な」 15

2018-12-26 22:05:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

枝じみたオリガミは苦しみながら上に向かって手を伸ばしているようだ。接地面は白く、上にゆくに従って徐々に黒くなる。光を一切かえさない黒に。このグラデーションが、思ったようにいかなかった。前日の夜になってもうまくいかない、そんなバカげた話があるか。マスラダは己を恥じた。 16

2018-12-26 22:09:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

マスラダはアユミから受け取ったエメツ粉末をスズリに落とし、水滴を垂らした。塗料を練り上げるさまを、アユミは黙って見ていた。練りながら、マスラダのほうから声をかけた。「アユミ」「なに?」「寄付の件だ」「え?」「孤児院」「急に何?」「急でもないだろ。ここ最近ずっと話していた」 17

2018-12-26 22:12:42
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育て親のワモンは、孤児院を遺した。人の手に渡ったそれは、程なくして経営難に陥った。まとまったカネを工面する必要があった。状況は八方塞がりと言ってよかったが……不意に、解決した。匿名の人間が、余るほどの額をポンと入金したのだ。「ホントに……良かったよね。これで続く」「アユミ」18

2018-12-26 22:15:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「だから、どうしたの?」「この前の展示、おれが引くほど前のめりだったお前が、結局来なかったよな」「ああ……」アユミは少しホッとしたようだった。「その事?ホントごめん。罪悪感の為せるわざだよ。今日こうやって使い走りを……」「違う」マスラダは遮った。「連絡取れなかったな、あの時期」19

2018-12-26 22:19:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アユミは言葉に詰まり、他の展示に視線をさまよわす。「アユミのカネだ」「まさか」「じゃあ、誰だ」「知らないよ」「おれか、お前だ」マスラダはアユミをじっと見た。「他に、あんな施設に寄付する物好きな奴なんて居る者か」「い……居るかも」「アユミ」「証拠は?」「そんなものはない」 20

2018-12-26 22:22:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……」「ここ最近、おれはツイてる」マスラダは言った。「おれを強請ってきたヤクザが居たが、次に会った時、おれの目を見るだけで震えあがった。しまいには、ケリをつけるためにこっちから連絡を取ろうとしても、BANされてる。ワケがわからなかったんだ」「そんな事があったんだね」 21

2018-12-26 22:25:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「おれに何か隠してるだろ」マスラダは目を逸らそうとするアユミをまっすぐ見た。「……」マスラダは溜息をついた。「あのな。何故隠す」「え?」「なにか恥じてるから、隠すのか?何故。あの葬式で会うまでに、お互い、そりゃ色々あっただろ。いちいち隠す必要があるのか?」「それは……」 22

2018-12-26 22:29:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

マスラダは黙り、アユミの言葉をじっと待つ。やがてアユミは消え入るような声で言った。「ニンジャだとしたら」「何?」「私が」「そうか。ニンジャか」「本当に」「……ああそうか」マスラダは少し考えた。「……ニンジャ」 23

2018-12-26 22:34:36