尾上先生の勉強風景 (12) ダーウィンのカテドラル

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尾上正人 @9w9w9w92

Wilson, David Sloan. (2002) Darwin’s Cathedral: Evolution, Religion, and the Nature of Society, University of Chicago Press. 「マルチレベル淘汰」説で知られるD. S. ウィルソンの宗教論(っぽい)…特にカルヴィニズムだけに1章を費やしていて(第3章)、「プロ倫」への言及もありそう

2019-01-03 11:09:01
尾上正人 @9w9w9w92

「この本の目的は、教団の有機体的概念を、真剣な科学的仮説として扱うことだ。有機体は自然淘汰の産物だ。無数の変異と淘汰を通じて、有機体は環境の中で生き延び再生産できるような特質を獲得した。私の目的は、ヒトの集団一般、特に教団がこの意味での有機体として適格なのかどうかを見ることだ」p1

2019-01-03 11:29:47
尾上正人 @9w9w9w92

「私はヒトの進化を、文化として緩やかに叙述されるメカニズムによって可能となった、急速で今も続く過程と見なす。それはヒトの本質が、良くも悪くも決して確定されたものではないことを意味する。とりわけ私は、ハクスリからドーキンズに至る多くの進化論者が宗教に向けてきた敵意を共有しない」p.2.

2019-01-03 12:01:40
尾上正人 @9w9w9w92

「私はこの本が、その断固として科学的なアプローチにもかかわらず、宗教の信仰者に読まれることも望んでいる。スピリチュアリティとは部分的には、何か自分自身よりも大きなものと繋がっているという感覚である。宗教とは部分的には、スピリチュアリティを誉め称える信念と実践の集合体である」p.3.

2019-01-03 13:00:48
尾上正人 @9w9w9w92

「宗教は、目的と秩序の神学的説明としてではなく、集団がーー少なくともある程度はーー適応の単位として機能できるようにするそれ自身進化の産物として、戻ってきている」p.6.

2019-01-03 13:10:26
尾上正人 @9w9w9w92

「思考の機能主義的・非機能主義的方法は互いにかくも異なっており、またある文脈ではかくも有効だが別の文脈ではかくもミスリーディングであるので、それらは実際には別々の認知スキルとして進化してきたのかもしれない」p.6.

2019-01-04 05:56:55
尾上正人 @9w9w9w92

「社会の有機体としてのメタファーはある場合には説得的に見えるが、別の場合にはミスリーディングである。…社会集団は適応の概念から見ると、漠然とした異質な成分からなるカテゴリーである」p.7.

2019-01-04 06:02:10
尾上正人 @9w9w9w92

「適応の進化的概念は、特に集団レベルでは、直観的概念に常に一致するとはかぎらない。…ダーウィンの理論は、生存と繁殖における違いに完全に頼っているので、集団を適応の単位として説明することができないように見える。これは、社会生活の根本問題と呼べる」p.8.

2019-01-04 06:17:54
尾上正人 @9w9w9w92

「集団は、メンバーが互いのために便益を提供する時に最も良く機能するが、社会組織のこの概念を生物学的適応度の通貨に変換することは難しいのだ。…適応の単位としての教団の概念は、進化理論から自動的には出てこない」p.8.

2019-01-04 06:22:34
尾上正人 @9w9w9w92

ダーウィン『人間の由来』(1871)からの群淘汰的記述の引用に続いてーー 「ダーウィンは、自然淘汰の3つの中身ーー表現型の変異、遺伝可能性、適応度の帰結ーーが集団レベルでも存在し得るということを提唱していたのである」p.9.

2019-01-04 06:30:20
尾上正人 @9w9w9w92

「多くの社会科学者は社会の有機体的概念を自明視しているが、1960年代の進化生物学者は群淘汰を強く拒絶したので、ヒトや他のいかなる種にあっても『有機体としての社会』…を考えることは異端となった」p.12. 今は社会科学でも、社会有機体説は十分異端だと思うけどな(笑)

2019-01-04 06:48:09
尾上正人 @9w9w9w92

「生物学者がある行動を、集団や種の善のためとして説明した時には、それはたいてい、理にかなった議論というよりはむしろ集団レベルの機能主義のナイーブな表明だった。しかし、群淘汰の全面的な拒絶はそれ自身が誤った転換だったのであり、そこからこの分野は回復し始めたばかりである」p.12.

2019-01-04 06:55:12
尾上正人 @9w9w9w92

「集団間のバリエーションが私の例[10羽中たった1羽が警告音を発する鳥の集団と、10羽中9羽もが警告音を発する鳥の集団]くらい極端である時に、群淘汰は圧倒的に強い進化の力となり、警告音を発する行動は集団内での淘汰上の不利にもかかわらず進化するのだ」p.14.

2019-01-04 10:14:35
尾上正人 @9w9w9w92

「1960年代の群淘汰の拒絶は、[著者とエリオット・ソーバーが呼ぶところの]平均化の誤謬に基づいていた」p.14. ・10羽中1羽が警告する集団Aの適応度: 鳴かず=50%、鳴く=25% ・10羽中9羽が警告する集団Bの適応度: 鳴かず=100%、鳴く=75% →「平均」すると、鳴かず=70%、鳴く=55%だが、実際はBが生存

2019-01-04 10:15:09
尾上正人 @9w9w9w92

マルチレベル淘汰説における「集団」の定義…「形質が社会的行動である時、個体の適応度はそれ自身の形質と、それが相互作用する[他の]個体の形質によって決まる。これらの個体が集団を構成する。進化の帰趨を決める適応度を計算するには、集団を正しく同定しなければならない」p.15.

2019-01-04 10:25:37
尾上正人 @9w9w9w92

「集団は、各々の全ての形質に対して別々に定義されなければならない。…私は、マルチレベル淘汰理論における形質と集団の間の親密な関係を強調するために、『形質集団(trait-group)』という語を作った。…どんな特定の[形質としての]行動に対しても、単一の適切な集団がある」pp.15-6.

2019-01-04 12:17:17
尾上正人 @9w9w9w92

「私が『有機体的(organismic)』という語を集団と関連づけて使う時には、それは『集団レベルで適応的』というのと同義であり、特定の形質と、それらの形質にとって適切な集団形成に言及しているのであり、他の形質や集団形成については不問とする」p.17.

2019-01-04 12:33:18
尾上正人 @9w9w9w92

「社会統制(social control)とは、もしも自発的になされたなら高コストの利他主義となったであろう行動を促進するべく進化した、低コストの利他主義の一形態と見なすことができる。エリオット・ソーバーと私はこれを『利他主義の増幅』と呼ぶ」p.19. ←セカンドオーダーの公共財問題はあるが低コスト

2019-01-04 16:34:54
尾上正人 @9w9w9w92

「社会統制は、集団間淘汰が強い集団内淘汰の反作用なしに作動することを可能にし、集団の利益と個人の自己犠牲[コスト]の間のトレードオフを部分的に緩和する。…社会統制メカニズムは明らかに教団と関連し、教団は遥かに大きな利他主義に基づいている」p.20. やっと少し宗教が…前置きが長いのう

2019-01-04 16:40:58
尾上正人 @9w9w9w92

ヒト集団がマルチレベル淘汰説が説くような淘汰の単位であった証拠を狩猟採集社会に求めるーー ・平等主義…エヴァンズ=プリチャード、Ch.ボーム(逆支配) ・モラル・コミュニティ…マレー半島チェウォング族の迷信「プネン」 いずれも血縁淘汰(包括適応度)や互酬的利他主義では説明不能。pp.20-5.

2019-01-04 17:15:19
尾上正人 @9w9w9w92

「我々は、2つの矛盾するように見える事実を和解させる必要がある。すなわち、モラル・システムが生得的な心理学的メカニズムを必要とするという事実と、それらが文化進化によって急速に進化し得るという事実である」p.25.

2019-01-04 17:19:57
尾上正人 @9w9w9w92

「私の[進化心理学への]不満は、アルゴリズムが誤っていることではなくて、それが一面的であり、学習や発達や文化や、オープンエンドな過程としてのヒトのメンタリティの他の側面の可能性を排除しているように思えることだ」p.30.

2019-01-04 23:06:20
尾上正人 @9w9w9w92

「遺伝的進化は、オープンエンドな過程を排除する類のモジュール性に、常に行き着くわけではない。そうではなくて、それ自身が進化的で、それゆえに新しい問題に対して新しい解決を与えることができるような過程を創り出すのだ」pp.30-1. →ヘンリー・プロトキンの「ダーウィン・マシン」の解説

2019-01-04 23:13:37
尾上正人 @9w9w9w92

マルチレベル淘汰理論の、文化進化論への貢献ーー ①文化進化を一般的進化の産物として捉える ②意識外の自動化された認知過程への着目 ③「集団脳」…集団的認知過程への着目(←ハチ) ④文化的変異とその広がりを捉える pp.32-5.

2019-01-05 04:15:58
尾上正人 @9w9w9w92

「[変異の]集団効果は、集団が大きい時(例えば1000人中の1人)よりも小さい時(例えば5人中の1人)の方が強力になりそうだ。群淘汰は、変異体が単一の集団の中に集中する時によく働くだろうが、もし変異遺伝子の個体群全体の中での頻度が低ければ、これがいかに起こり得るのか明らかでない」p.35

2019-01-05 04:24:02
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