編集部イチオシ

『レイヤードストーリーズゼロ』というゲームがありました。

「サービス終了が近いからやってくれ」という奇妙な請願に惹かれて、残り2日というタイミングで始めました。 果たして、それはぼくの現実を強く変えてくれました。 今回は、そんなレイゼロへの一方的な書き散らし文です。
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らいおねサン @WRaione

『レイヤードストーリーズゼロ』というゲームがありま“した”。 “あった”んです。 もう、過去形です。 ソーシャルゲームでした。 サービスを終了しました。 2019年1月8日11時59分。 今日の正午を最後に、お別れでした。 通称 #レイゼロ と呼ばれていました。 とても、あたたかい世界でした。 続→

2019-01-08 23:47:38
らいおねサン @WRaione

最初にことわっておくのですが、ぼくはこのゲームの真っ当なプレイヤーではありませんでした。つい2日前にDLし、初心者救済機能によってストーリーモードだけを集中して走り抜けた、“外様”のユーザーです。 たった2日関わっただけにもかかわらず、このゲームは喪いがたいものと心に刻まれました。

2019-01-08 23:47:41
らいおねサン @WRaione

世界観はこうです。 2037年の渋谷。“レイヤード”と呼ばれる、複合現実技術が発展し、仮想の世界と現実の世界が折り重なった街並みができていました。 ここに生きる人々は、一人ひとりが“ACT”と呼ばれるパーソナルAIを持っていました。

2019-01-08 23:47:41
らいおねサン @WRaione

ACTは単なるお手伝いさんではありません。“wis-dom”という巨大サーバーから、個人のパーソナルログに照らしたキャラクターがDLされ、ユーザーと二人三脚で生活を営む存在です。 ユーザーによって、その姿は憧れのヒーローだったり、自分のアルターエゴであったりします。

2019-01-08 23:47:42
らいおねサン @WRaione

故に、ACTとは基本的には個人の想像力の発露、表現でありました。分身と呼ぶには少し単純すぎる、奥深い相棒です。 このACTの用途は、単に生活を支援するだけではありません。“オルタナステージ”と呼ばれる、渋谷のどこにでも展開される舞台で空中サーカスのように戦う競技にも使われていました。

2019-01-08 23:47:43
らいおねサン @WRaione

ところで、ACTとは表現の究極なのですが、それ故に強力な影響力を持つものと言えます。ユーザーとセットで、強烈な個性を発揮することができました。 レイヤード社会では、ユーザーやACTの悪目立ちを防止するため、UNPL(UNPLeasant)という機能が存在します。 謂わば逆“いいね!”。不快の多数決です。

2019-01-08 23:47:44
らいおねサン @WRaione

(長々と用語の説明が続いてしまいました。備忘を兼ねて書いております故、ご容赦ください) つまるところ、人はACTと共生しつつ、UNPLによってデリートされないよう、節度を持って複合現実での生活を営んでいるという世界観になります。

2019-01-08 23:47:46
らいおねサン @WRaione

物語は、そんな世界で主人公が親友のヒーロー好き少年“キョータロー”と共に、近頃はやりのオルタナステージの利用登録のために渋谷に繰り出すところから始まります。 登録のプロセスのなかで、キョータローがパーソナリティに沿ってヒーロー系ACTをDLする一方、主人公は謎のACTをDLしてしまいます。

2019-01-08 23:47:47
らいおねサン @WRaione

DL作業を始める寸前、謎の目眩に襲われます。 「私を見てはならない」 そう聞いてもなお、主人公は声の主をwis-domからDLしてしまいます。 その少女型のACTは、名をイオン・ミルナと言いました。 何のキャラクターかと訊くと、彼女は「レイヤードのヒロイン」と答えます。

2019-01-08 23:47:48
らいおねサン @WRaione

レイヤードとは、2037年の渋谷を成り立たせている根幹。つまり、渋谷の社会そのものを指しているようなものです。 その“ヒロイン”を自称すると言われても、何がなんだか分かりません。 しかしキョータローにDLをし直すように勧められるも、主人公はやはりイオンをACTに迎えることにしました。

2019-01-08 23:47:48
らいおねサン @WRaione

以降、主人公はイオンの導きのもと、渋谷のレイヤード社会における“トラブルシューター”として活動するようになります。 しぶしぶ付き合うキョータローを伴って、主人公はレイヤード社会のモザイク模様を次々と目撃していきました──。

2019-01-08 23:47:49
らいおねサン @WRaione

奇怪な依頼をこなしていくその中で出会う友人達が、主人公の周囲に集まっていきます。 新人気鋭のJK音楽P、テルミ。 オカルトに生きる少女、ミアラカ。謎の空間ULA渋谷を仕切る、ユウト。 他にもまだまだ居ます。一人ひとりが、一人ひとりの事情でACTと、渋谷と、向き合っていました。

2019-01-08 23:47:50
らいおねサン @WRaione

時には、“アーダル症候群”という、表現への欲求を堪えられず、ACTを乱用してしまう症状を見せ、破壊を撒き散らす人物もいました。 時には、自身へのUNPLの蓄積を恐れて、抜け道としてUNPLを押し付けたACTをデリートさせる人物もいました。

2019-01-08 23:47:50
らいおねサン @WRaione

しかし、そんな危ない人たちすらも含めた誰もが、ACTを単なる存在とは考えていませんでした。 誰もが、自分の愛する虚構の存在と本気で向き合って生きていました。

2019-01-08 23:47:52
らいおねサン @WRaione

自分自身という現実と、 自分の分身という虚構。 かたや、嘘偽りのない、等身大の自分。主導権の持ち主。 かたや、自分の好きなもの、愛するものの結晶として、仮想技術によって共生する隣人。隷属の存在。 人間とACTの関係は、往々にしてプレイヤーである我々に様々なものを投げかけてきました。

2019-01-08 23:47:53
らいおねサン @WRaione

あなたは、虚構を信じられますか。 あなたは、自分の「好き!」とまっすぐに向き合えますか。 あなたは、自分の選んだ現実に誇りを持てますか。 あなたは、たとえ仮想の存在でも、その隣人を自分の現実と認められますか。 あなたは、現実に反した自分の理想が真横に立ち続けるのに耐えられますか。

2019-01-08 23:47:54
らいおねサン @WRaione

あなたが触れた漫画、アニメ、小説、音楽……そういう表現物から得た経験や知見を、「どうせ創作物だ」と言い捨てずに、まるで現実のもののように認められるかは、そういった「虚構との付き合い方」に収斂します。

2019-01-08 23:47:54
らいおねサン @WRaione

なんだかそれっぽい雰囲気になっていますが、別にこれは“オタク”に限った命題ではありません。 ドラマであれ舞台であれ、「創作」というものに触れる、全ての人の心に問いかける命題なのです。

2019-01-08 23:47:55
らいおねサン @WRaione

レイヤード技術が映し出す人間模様は、何もACTに限って見えてくるものではありませんでした。 UNPLによる大衆からの裁き、 所属するクランによる思想の対立の顕在化、 自分自身の見た目の選択…… 何でもできるような時代の渋谷だからこそ、十重二十重にパーソナリティのモザイクが重なります。

2019-01-08 23:47:56
らいおねサン @WRaione

結局抽象的なことばかり説明してしまいました。 レイゼロの良さは、本当に多くのことに、エンタメとして向き合ってきて、その上で前向きな答えを提示しづけることにあります。 一つ一つを懇切丁寧に説明することはできますが、一口に概要を……とはうまくできそうにありません。

2019-01-08 23:47:57
らいおねサン @WRaione

レイゼロの舞台は2037年の渋谷ですが、どうも個人的には「すぐ近くに迫っている未来」を先取りしているようで、あまり遠くの未来を描いているようには思えませんでした。 まあ、SFとはすべからかく現時点の技術論の延長線上で語るものなので、当然と言えば当然なのですが……

2019-01-08 23:47:58
らいおねサン @WRaione

過去の自分の「好き」なモノとの付き合い方。虚構と溶け合う自分の内面。 それらにどう向き合うかの答えが、これからの未来で求められる、とぼくは思っています。 『レイゼロ』は、そんな懐かしい未来を先取りして、愛おしくも疎ましい、共感できる人物たちを通して、僕たちにそれを伝えてくれました。

2019-01-08 23:47:58
らいおねサン @WRaione

しかし、『レイゼロ』は。 今日、いなくなりました。 ぼくにとっては、あまりに速すぎる別れでした。 いいえ、誰にでもでしょうね。 「2037年にまた会おう!」と我々は別れを告げました。 あの未来にまた会うには、『レイゼロ』が示した様々なものに、我々は向き合っていかなくてはなりません。

2019-01-08 23:47:59
らいおねサン @WRaione

ぼくは、ゆっくりと『レイゼロ』を咀嚼して、これからの自分の現実に折り重ねていきたいです。 たった2日のユーザーが大言壮語を吐いたものだと、自分でも思います。 それでも、もう一度あの“ゼロ”にたどり着くためならば、頑張れる気がします。 ありがとう、レイゼロ。 また会う日まで。

2019-01-08 23:48:00

以下は、クリア当時のツイートをまとめています。