佐藤正美Tweet_20181201_15

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佐藤正美 @satou_masami

さて、私小説論。西洋では、ルネッサンス・宗教改革・啓蒙思想(フランス革命)と芸術との相互作用を考えなければ、「私(個人)」という概念を把握できないでしょうね。遺憾ながら、私には、西洋(あるいは、西洋の芸術史) の知識が ほとんどない。

2018-12-01 18:43:00
佐藤正美 @satou_masami

十八世紀に生きたルッソオは、(ルネッサンス・宗教改革を体験した社会が更に)フランス革命の勃発を孕んだ状態にあった頃に社会的不平等を指弾した人です。私は、かつて(20才代の頃)ルッソオの著作を三冊 読みましたが、今ではもう どういう中身だったのかも忘れてしまっています。

2018-12-01 18:43:32
佐藤正美 @satou_masami

ただ、西洋では、封建制に抵抗して合理的精神や「人権」「契約」を獲得するために烈しい改革を幾つも体験して来た中で、「私(個人)」が意識されて来ました。彼等の「私」は、現代に生きる我々日本人の意識する「私」とは異質である事は確かでしょう。

2018-12-01 18:44:04
佐藤正美 @satou_masami

私が興味を抱いて観ているのは、日本文学史上、自然主義小説と称される作品の前後では、小説の様相が変わったという事です。

2018-12-01 18:44:37
佐藤正美 @satou_masami

自然主義小説の後に現れた(ただし、プロレタリア文学以前の)所謂「反自然主義(高踏派、耽美派、白樺派)」「新思潮派」では、明らかに、(「現実」 [ 人間の生態 ] を作家の仮構の中で再現する物語性に較べて「私(あるいは、私の思想、自意識)」が作品の中に強く現れて来ている事がわかる。

2018-12-01 18:45:21
佐藤正美 @satou_masami

私は文芸批評家ではないので、私にとっての文学という視点でしか文学を語る事ができないのですが、私にとって、自然主義小説は退屈ですし、私が惹かれる作家は、その時代では、有島武郎です。

2018-12-01 18:45:59
佐藤正美 @satou_masami

芥川竜之介は、有島武郎の事を「蓄音機で西洋音楽を聴いている感じがする」と皮肉を綴っていますが、私は有島武郎の西洋的な感覚に惹かれる。

2018-12-01 18:46:50
佐藤正美 @satou_masami

有島武郎氏の作品を現代に生きる私が読んで ワクワクする理由は、かれが実生活で感じていた「知識階級の悲哀」を帯びているからではない、作品の主人公 [ 個性の強い主人公 ] が「じぶんの座標(個性を活かす場所)を見つけられないで、破滅してゆく」有様に惹かれるからです。

2018-12-01 18:47:34
佐藤正美 @satou_masami

そして、それらの作品において、かれの文体は、欧米風(翻訳っぽい?)で独特な筆致です。「カインの末裔」「或る女」の終末は、まるで映画を観ているかのような生々しい影像が浮かぶ筆遣いです(物語性としても白眉です)。

2018-12-01 18:48:26
佐藤正美 @satou_masami

有島武郎氏と志賀直哉氏は、「白樺派」という一つの派として括れないくらいに、文学性が異質です。日本文学史を読めば、作家の力量としては、志賀直哉氏のほうが高く評価されています。そして、志賀直哉氏は、私小説作家の代表と云ってもいいでしょう。

2018-12-10 07:07:51
佐藤正美 @satou_masami

有島武郎氏に惹かれる私は、志賀直哉氏には共感を覚えない。志賀直哉氏の文体を学ぶ作家は多い様ですが、もし、西洋的思想が日本の中で「私」という自意識を持ったら、有島武郎氏はその一人ではないかしら。

2018-12-10 07:08:53
佐藤正美 @satou_masami

志賀直哉氏の作品は、作家の眼と「現実」は即一している感があるのですが、有島武郎氏の作品では、作家が「現実の生活(あるいは、社会)」に対して個性を充実して作用しようと足掻いている意向を感じます。

2018-12-10 07:09:42
佐藤正美 @satou_masami

「惜しみなく愛は奪う」(有島武郎)の様な思想的エッセーを綴る事のできた作家は、当時、有島武郎氏の他には存しなかったでしょうね──「私(私の思想、自意識)」について、芥川竜之介氏の「侏儒の言葉」と読み比べても、それぞれの特性が顕れていて面白い。

2018-12-10 07:10:56
佐藤正美 @satou_masami

「私」について、西洋の思想に熟知した夏目漱石氏が、晩年、「則天去私」の境地に至ろうとしたのに対比して、夏目漱石氏の 10年後に生まれて、西洋の思想に熟知した有島武郎氏が竟(つい)に「日本的なもの」に回帰しなかった事に私は興味を覚える。

2018-12-10 07:12:02
佐藤正美 @satou_masami

批評家たちは(そして、作家たちも)有島武郎氏については、たぶん、次のように云うのではないかしら──「構成力のすぐれた、大陸的な・人道的な個性の作家だが大作家ではない」 と。

2018-12-10 07:12:53
佐藤正美 @satou_masami

芸術性の濃い作品が高級な通俗小説でいいではないか、という思いを私は抱(いだ)いています。「或る女」「カイン の末裔」「生まれ出ずる悩み」は、そういう性質の作品でしょうね。

2018-12-10 07:13:35