担当編集ブラッドが小説家アイシャを説得する話

りぇえちゃま @syaku_syakunasi

カバー用：担当編集ブラッドが小説家アイシャを説得する話 pic.twitter.com/Pn6rHXqhl7

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【編集部】 編集長「おう、あの爺さん先生の原稿取れたか？」 ブラッド「はい、あと次回作のプロットも」（封筒差し出し） 編集部「でかした、やっぱりお前じゃなきゃ駄目だなぁ、図体でかくて迫力あるから羨ましいよ」 ブラッド（……あいつに比べたら他の作家の原稿回収なんてお遊びだ）（溜息）

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編集長「で、今度ベル先生の新作が出るだろ」 ブラッド「はい」 編集長「懇意にしてる取引先からサイン会やらないかって話が来ててな」 ブラッド「…………は？」 編集長「だから、サイン会だよサイン会、ベル先生の作品にゃ根強いファンが多いだろ、イベント開いて初動をどどーっとな」

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ブラッド「……お、お言葉ですが、よした方が」 編集長「何でだ？　ベル先生、若い女だからそっちでも受けるぞ、新年会でベル先生見たけど綺麗なねーちゃんじゃねえか」 ブラッド（見た目だけはな、見た目は……） 編集長「とにかく、もう決めてるからな。来週の日曜だ、今からベル先生に伝えてこい」

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【アイシャ宅】 アイシャ「どうした、原稿はもうこの間渡しただろ、また新しい書き下ろしの依頼か？」 ブラッド「その、お伝えしたいことが……」 アイシャ「何だ、お前も辞めるのか？　お前は結構持った方だったな、元気でな」 ブラッド「違います」 アイシャ「じゃあ何だ」（じゃがりこサクサク）

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ブラッド「……来週の日曜、予定は」 アイシャ「別に何も」（サクサク） ブラッド「開けて下さい」 アイシャ「何で？」 ブラッド「……落ち着いて聞いて下さい」 アイシャ「回りくどいな、言ってみろ」（サクサク） ブラッド「……サイン会が、決まりました」 アイシャ（じゃがりこポロ）

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ブラッド「……先生」 アイシャ「何であたしに何も聞かないで決めるんだ何で何で」（毛布くるまり） ブラッド「もう決まってるんです」 アイシャ「絶対嫌だ！」（もごもご） ブラッド「お願いします」 アイシャ「出るくらいなら本出さない！　印刷機止めろ！」 ブラッド「もう全部刷り上がってます」

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【電話でひそひそ】 編集長『で、絶対嫌だってか』 ブラッド「……はい」（ちら） アイシャ（毛布にくるまってぶつぶつ） 編集長『何とかしろ』 ブラッド「……は？」 編集長『お前の仕事だ、首を縦に振るまで帰ってくるな、逃がすなよ、いいな』（ガチャン） ブラッド（仕事辞めたい……）

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ブラッド「……先生」 アイシャ「かえれ！　かえれ！」（毛布もごもご） ブラッド「了承していただくまで帰れません」 アイシャ「帰れったら！」（じゃがりこの空箱ぽこぽこ投げる） ブラッド「……先生、お食事は」 アイシャ「かえれ！」（ぷんぷん）

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ブラッド「好きな物を言っていただければ経費で落とします」 アイシャ「博多の明太子！　白いご飯！　ピザ！」（毛布もごもごぷんぷん） ブラッド「何がそんなに嫌なんですか」 アイシャ「とにかく嫌だ、何で作家が人前でへらへらしなきゃいけないんだ」（明太子ご飯を片手にピザもぐもぐ）

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ブラッド（まあ、確かに……） アイシャ「好んで人前に出る作家の気が知れん、そんなに見られたいなら大道芸人にでもなればいいんだ」（もぐもぐ） ブラッド「これも営業のうちです」 アイシャ「それはお前らの仕事だろ、作家に投げるな」 ブラッド（言い返せない） アイシャ「絶対出ないからな」

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ブラッド「………」 アイシャ「話は終わりか？　ほら、帰れ」（しっしっ） ブラッド「……1週間の休みを保証するという条件では？」 アイシャ「……なっ」 ブラッド「収入は保証します、取材旅行という名目で経費を押さえます」 アイシャ「……い、やだ、嫌だ！　そんな餌になんて……！」

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ブラッド「1ヶ月は」 アイシャ「………！」 ブラッド「海外への長期取材旅行名目、在宅がばれるのを防ぐために極秘で1ヶ月間ホテルを取ります」 アイシャ「う、あ……ひ、卑怯だぞ……！」（ふらふら） ブラッド「さぁ、どうする」 アイシャ「あ、あ………うう……！」（ふらふら）

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【サイン会当日】 編集長「よくやったな。初サイン会がうちの出版物だ、これでベル先生はヨソに取られねぇだろ」 ブラッド「仕事ですから」 編集長「……で」 【黒い大箱に出口と入口にカーテンがかかっててそこに行列ずらっ】 編集長「何じゃこりゃ、さっき入ったらベル先生、手しか出てなかったぞ」

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ブラッド「……コンセプトサイン会です」 編集長「は？」 ブラッド「先生の新刊は暗闇密室ミステリーが肝なので、体験型に」 編集長「だからってなぁ……」 読者「このサイン会やばい」 読者「熱烈なファンにしか作れないサイン会……」（拝む） 読者「企画した人、神……」（五体投地）

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ブラッド「SNSでも話題に」 （バズりまくりのサイン会ツイートを見せる） 編集長「……お、おう、何か分からんが、よくやったな！　重版確実だぞこりゃ」 ブラッド「仕事ですから」 編集長「これからもベル先生にゃ稼いでもらわないとな」 ブラッド（さて、取材旅行名目の経費を確保せねば）（溜息）