
日本語学(Japanese Linguistics)の研究、青山学院大学文学部、日本語文法書の構築を目指してツイートしています。日本語学会・日本語学の宣伝もしていきます。発言は個人の責任で行っています。 twilog.org/yhkondo instagram.com/yhkondo

橋本治氏は、その言語学的センスも抜群だったと思う。私の著書でも参考文献にあげて、引用したが、『枕草子』の複文構造を、そのまま逐語訳すると、現代語の口語になるということを発見して、表現したことは、大きな業績である。文構造の「逐語訳」というところを、ちょっと引用してみる。
2019-01-30 00:31:02
(桃尻語訳・43段)(ミノムシの親が)「……待ってろよ」って言い置きして逃げてっちゃったのも知らないで、風の音を聞き分けてさ、八月頃になると、「パパァ、パパァ」って心細そうになくの。メッチャクッチャいい……。
2019-01-30 00:34:21
(原文)(親が)「……待てよ」といひおきて、逃げていにけるも知らず、風の音を聞き知りて、八月ばかりになれば、「ちちよ、ちちよ」と、はかなげに鳴く、いみじうあはれなり。
2019-01-30 00:37:36
この古文独特で、難解と思われた複文の連鎖(clause linkage)が、実は、現代語の口語体とそっくりであるという発見が、「桃尻語」の本質なのだ。単に、語彙を現代風にしてみたというのとは違うことを、この機会に是非紹介しておきたい。
2019-01-30 00:41:07
橋本治氏自身の言葉を引用しておく。「なんで日本の古典が読みにくいかという理由はもうお分かりになったかとおもいますが、あれは、そもそもの原文に句読点が一つもないもんだからどこで切れるのか分からない。・・」(まえがき)
2019-01-30 00:48:18
(続き)「という訳で、現代の日本語に句読点のないものは一つしかありません。即ち話し言葉です。話し言葉には句読点がないかわりに”息つぎ”の間があります。はっきり言って日本の古典の言葉は全部これです。……古典を現代語に移し換えるには、”こういう日本語”しかない……」
2019-01-30 00:50:53
これを言語学風に言い換えれば、ツイの最初に書いたように、節が、終わりなく次々と連鎖していく節連鎖構造(別の表現では、多重化された埋め込み文構造)が、古典の複文構造の本質であり、実は、それは現代語の口語体にもそのまま受け継がれているということになります。
2019-01-30 01:03:38
@i_mediator 『日本語記述文法の理論』(近藤泰弘・ひつじ書房刊)の、巻末の人名索引には、ちゃんと「橋本治」が立項されています。
2019-01-30 09:41:03
@yhkondo @OHMAGATSUHI こんにちは。橋本先生は「分からないという方法」で、「学者は皆知っていたのに、誰もやらなかった」と述べられていました。
2019-01-30 12:51:10