@NakamuraBoris 氏のリフレ論まとめ

とても勉強になる価値ある議論なので纏めておきたいと思います。
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Boris Nakamura @NakamuraBoris

@makoto_shimizu_ 少し長めのReplyになってしまうのが恐縮ですが、ご返答いただきましたので、私の知る範囲での《リフレ派》の原点について(事実認識としての)異見を述べておきたく思います。

2019-01-30 23:17:26
Boris Nakamura @NakamuraBoris

@makoto_shimizu_ まず第一に『昭和恐慌の研究』の著者の一人である現日銀副総裁の若田部昌澄氏は『ネオアベノミクスの論点』の「はじめに」にて次のように書かれています。

2019-01-30 23:17:53
Boris Nakamura @NakamuraBoris

@makoto_shimizu_ 《クルーグマン教授といえば、何よりも現在のリフレーション(リフレ)政策の元祖です。現代リフレーション政策の基礎を作ったのはクルーグマン教授の一九九八年論文でした。》(p.6)

2019-01-30 23:18:22
Boris Nakamura @NakamuraBoris

@makoto_shimizu_ この見解は同じく『昭和恐慌の研究』の編者および共著者である岩田規久男・元日本銀行副総裁、原田泰・日本銀行政策委員会審議委員にも共有されており、2013年の論文にて次のように記述しています。

2019-01-30 23:18:46
Boris Nakamura @NakamuraBoris

@makoto_shimizu_ 《Krugman[1998]、[2000]は、1990 年代にデフレ状況に陥った日本経済を念頭に、名目利子率がゼロであっても、金融緩和政策によって,予想インフレ率を上昇させて予想実質利子率をマイナスにすることによって、デフレ不況から脱却できることを指摘した》「金融政策と生産:予想インフレ率の経路」 pic.twitter.com/vYjqOSs5Jl

2019-01-30 23:20:00
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Boris Nakamura @NakamuraBoris

@makoto_shimizu_ また黒田東彦・現日本銀行総裁も同様の認識です。《1998年、クルーグマン教授は、日本のデフレ克服には、マネーサプライを大幅に増加させ、インフレ予想を高めることにより実質金利を十分にマイナスにすることが必要と主張しました。》「「量的・質的金融緩和」と経済理論」(2017年) pic.twitter.com/belzP0vM8J

2019-01-30 23:20:58
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Boris Nakamura @NakamuraBoris

@makoto_shimizu_ それでクルーグマンの1998年の論文の内容を実際に見てみますと…《現代のマクロ経済学者はそもそも流動性トラップのことなんか考えないけれど――EconLitによれば、流動性トラップということばを題名、内容、アブストラクトの中で使っている論文は、1975年以降では21本しかない――》

2019-01-30 23:21:59
Boris Nakamura @NakamuraBoris

@makoto_shimizu_ 《考えるにしても、流動性トラップは起こり得ないし、起きなかったし、この先も起きない、というのが基本だ。》ポール・クルーグマン『復活だぁっ! 日本の不況と流動性トラップの逆襲』(山形浩生・訳)

2019-01-30 23:22:25
Boris Nakamura @NakamuraBoris

@makoto_shimizu_ 繰り返しますが《伝統的な見方では、流動性トラップに置いて金融政策は無力で、財政支出の拡大だけが唯一の出口、ということになるけれど、これは考え直すべきだ》というクルーグマンの論文が書かれたのは1998年です。彼は(当時は)金融政策の転換だけで割となんとかなると考えていたかもしれません。

2019-01-30 23:23:33
Boris Nakamura @NakamuraBoris

@makoto_shimizu_ しかし2015年10月に《ヴィクセル流の自然利子率の当期の水準はマイナスだが、これが将来のある時点で正常なプラスの値に戻るという想定》(ポール・クルーグマン「日本の問題を再考する(Rethinking Japan)」、朴勝俊・訳)を「マイナスがずっと続くのではないか」に考え直しました。

2019-01-30 23:24:02
Boris Nakamura @NakamuraBoris

@makoto_shimizu_ そして《インフレ率が上がるということを誰も信じなければ、インフレにならないのだ。インフレ率を高める唯一確実な方法は、大規模な財政支出とともに金融政策レジームの変更を行うこと》だが、「政治的に難しいだろう」と悲観しています。

2019-01-30 23:24:16
Boris Nakamura @NakamuraBoris

@makoto_shimizu_ さらに『マクロ経済政策の課題と争点』(1999年)では《私が政策責任者であればどうするか。すべてのことをやることになろう。第1に、少なくともしばらくは拡張的な財政政策も堅持する》と書かれているので、《リフレ派》の元祖はポリシーミックスを主張してきたと判断していいかと。

2019-01-30 23:25:18
Boris Nakamura @NakamuraBoris

@makoto_shimizu_ また、クルーグマンは一貫して消費税増税に反対しています。/ポール・クルーグマン「とにかくいま増税しちゃだめよ,日本さん」 econ101.jp/%e3%83%9d%e3%8… @econ101jpさんから

2019-01-30 23:26:08
Makoto Shimizu @makoto_shimizu_

@NakamuraBoris @econ101jp クルーグマンのイツバーーク論文をよく読むと、昭和恐慌研究会の主張とはかなり違いますので、私にとってクルーグマンはリフレ派ではありません。クルーグマンは当初から財政政策で景気を改善させることを主張した上で、金融政策が引き締めすべき時期が来ても放置することにコミットできれば、

2019-01-30 23:31:02
Boris Nakamura @NakamuraBoris

@makoto_shimizu_ @econ101jp こんな夜中に大量のReplyをしてしまい失礼しました。私の筆力では以上のようにしか経緯をまとめられず…。付言しておけば、労働力調査などからたくさんグラフを作って、色々と調べてきましたが、私は(ポリシーミックスとしての)リフレ政策を支持しております。

2019-01-30 23:32:42
Makoto Shimizu @makoto_shimizu_

@NakamuraBoris @econ101jp 予想インフレが起こると言っているに過ぎません。ウッドフォードとエガットソンもゼロ金利では量自体に効果はないが、この金融政策の将来のコミットメントができるかどうかと結論しています。これをフォーワードガイダンスと呼びますが、クルーグマン自身それは上手くいきそうもないと認めたそうです。

2019-01-30 23:34:51
Makoto Shimizu @makoto_shimizu_

@NakamuraBoris @econ101jp 財政派のクルーグマンが増税に反対するのは当然ですが、リフレ派と呼ばれる人達のクルーグマン引用は、都合のいい解釈であるか、彼らがクルーグマンの主張を正しく理解していないかでしょう(多分両方)。

2019-01-30 23:36:48
Makoto Shimizu @makoto_shimizu_

@NakamuraBoris @econ101jp あなたが個人的にどのような政策を支持するのも自由であり、全く構いませんが、何故それをリフレ政策と呼ぶのか意味が分かりません。ポリシーミックスなんて軽く数十年前から議論されてきたようなことです。

2019-01-31 00:04:24
Boris Nakamura @NakamuraBoris

@makoto_shimizu_ @econ101jp 少なくともクルーグマンが「金融政策は中立的であるべき」とは考えていないことは明白ではないでしょうか? これも私が知る限りでは「もっとやれ」と言っていますね。/Krugman: Monetary Policy Not Enough, We Need More bloomberg.com/news/videos/20…

2019-01-31 00:27:50
Boris Nakamura @NakamuraBoris

@makoto_shimizu_ @econ101jp 以下は2018年2月のクルーグマンの論文"It’s Baaack, Twenty Years Later"からの引用です。

2019-01-31 00:28:37
Boris Nakamura @NakamuraBoris

@makoto_shimizu_ @econ101jp "lower real interest rates create an economic boom that generates the expected inflation"と書かれてあるように、クルーグマンは「実質金利に働きかけることが重要である」と考えているという認識です。

2019-01-31 00:30:02
Boris Nakamura @NakamuraBoris

@makoto_shimizu_ @econ101jp そして「リフレ政策とは何か」と訊かれたら私の理解はこうです。《デフレとは、実質金利が自然利子率よりも上回っていた(引き締められていた)状態であったわけで、これを逆転させる政策こそがリフレ政策》(若田部昌澄『ネオアベノミクスの論点』)です。

2019-01-31 00:31:12
Boris Nakamura @NakamuraBoris

@makoto_shimizu_ @econ101jp 投資を促し、雇用が増え、賃金が上昇し、消費がなされ、物価が上がるというスパイラルのために金融緩和策は必要条件となる。ここで緊縮を実行すれば、金融緩和にブレーキをかけることになるというのが素直な理解ではないでしょうか?

2019-01-31 00:32:13
Makoto Shimizu @makoto_shimizu_

@NakamuraBoris @econ101jp IMFのコンファレンスでのスピーチと報道されていたと思いますが、それは金融政策一般ではなくフォーワードガイダンスについてでしょう。The answer seemsとかなり自重して言っていますね。実質金利が自然利子率よりも上回っていた状態を逆転させることに失敗したのがリフレ派の政策だったわけです。

2019-01-31 01:29:34
Makoto Shimizu @makoto_shimizu_

@NakamuraBoris @econ101jp 投資を促し、雇用が増え、賃金が上昇し、消費がなされ、物価が上がるのに金融緩和策は有効ですが、緊縮というのが財政であれば、以上のメカニズムには関係しませんので素直な理解とは思いません。財政あるいは外需でもネガティブな影響があればそれを相殺するだけ利下げすれば良いでしょう。

2019-01-31 01:32:44
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