カフカの『変身』におけるいわゆる「虫」、原典ドイツ語だと「Ungeziefer」となっている。 これは人間に害のある小さな生物全般を指す語だけど、否定接頭語「un」を除いた「Geziefer」は、聖書においては「神霊に捧げる犠牲に相応しい生き物」を意味する。
2019-02-12 18:02:15古代、神への捧げ物として選出された牛や羊は、捧げ物であることを表す傷をつけて野に放たれた。 グレーゴル・ザムザが成り果てたのは、ひょっとして「捧げ物として準備されたが、穢れてしまって捧げ物にできなくなった生き物」ではなかったろうか。
2019-02-12 18:03:49「捧げ物として聖別する」という意味を持つヘブライ語「ヘーレム(חֵרֶם)」は、語源を辿ると「引き離す、隔離する」「接触を禁じる」「俗用に供することを禁じる」という辺りになる。 その状態は、ザムザが置かれた状況そのままだ。
2019-02-12 18:07:43ザムザがヘーレムされたのは、一体いつであったのか。 それは恐らく、ザムザが「一匹の巨大な虫」と化す以前からのことだったと、ぼくは感じている。 既に壊れてしまっている家族のために、ザムザは自らをヘーレムしていたのではなかったろうか。
2019-02-12 18:09:59ザムザは穢れてしまって、GezieferからUngezieferと成り果てた。 そう捉えた時に、『変身』のラストシークエンスは、きっと違った感触を持って迎えられる筈だ。
2019-02-12 18:11:45ちなみにヘーレムうんぬんについては、以前 #バニーボーイ 写真集を出す際にいろいろ調べものしてて学んだ。 twitter.com/bi_deep/status…
2019-02-12 18:37:28捧げ物になる、という点で、今度の舞台『#雲隠れシンフォニエッタ』でぼくが演じる「朝顔の姫宮」は、グレーゴル・ザムザと繋がっている。 賀茂神社の斎院として身を捧げた朝顔の姫宮は、どう振る舞うべきなのか。 どう振る舞いたかったのか。 ずっと、考えている。 twitter.com/bishoujo/statu…
2019-02-12 18:30:28#源氏物語 翻案、#雲隠れシンフォニエッタ。 ぼくは【恋組・朝顔の姫宮】で出演します。 ご予約お待ちしておりますー。 2/20までのお振込みで特典フォトカードが付きます! …そして明日は雪の降る中お稽古です…。❄️ 応援されたい! ticket.corich.jp/apply/97311/02… pic.twitter.com/rvdDuUikSQ
2019-02-08 13:00:40個人的にカフカの『変身』の翻案ベストオブベストは、ワレーリイ・フォーキン監督の映画『変身』。 元は舞台だったそう。 日本公開時に劇場に観に行って、しばらくまともに喋れなかった。 「虫」の表現については、これを超えるものは出ないだろうとぼくは確信している。 amazon.co.jp/dp/B002GPPTXU pic.twitter.com/xqvhRtGD00
2019-02-12 18:20:02すぐ引っ張り出せなくてうろ覚えだけど、たしか馬場あき子の『鬼の研究』だったかに、鬼、特に一つ目の鬼は、生贄として捧げるために片目を傷つけて山野に放った人間が半ば神格化された姿だとする説が載っていた。(柳田國男だったかも?) 一応UngezieferおよびGezieferに絡む項目として挙げとこう。
2019-02-13 20:24:37@Bishoujo FF外から失礼します。 柳田國男のものは『一つ目小僧その他』ですね。一眼一足の神への贄が時を経て妖怪と堕したという論考でした。 『鬼の研究』は能の小面の裏に般若を見るという馬場先生の言葉が印象的でした。 長文失礼しました。舞台のご成功をお祈りしております。
2019-02-13 21:20:33@ippatutumoaka ぉゎーありがとうございますー! 柳田せんせ、たしか鍛治神とも絡めて論考されてたような。 アマノマヒトツとかヘーパイストスとか。
2019-02-13 21:28:15@Bishoujo ご返信ありがとうございます。 柳田國男は同書中でたたら製鉄民の祀る神としての天目一箇命がたたら製鉄民の身体的特徴(片目片足)と絡めて一本だたらという妖怪になったと指摘しています。 いずれにしても贄が聖性を失う、神がその属性を失い妖怪になったという視点は大変興味深いです。
2019-02-13 21:44:19美少女 @Bishoujo がカフカの「変身」の話をしているので、2015年すばるの多和田葉子訳「変身(かわりみ)」の冒頭と、多和田葉子氏の「カフカを翻訳してみて」を。 pic.twitter.com/DK1vbyfQRQ
2019-02-13 21:43:47@pisiinu ぉわぁぁぁ…。 まんま同方向の考察を経ての翻訳だ…。 これは読まないわけにはいかない。
2019-02-13 21:49:12@Bishoujo ウンゲホイアのようなウンゲツィーファー、のくだりとか、ドイツ語で読まないとわからないニュアンスだよな。支配人が「ザムザさん?(略)何を訊いてもヤーかナインでしか答えない」とか言うのも良い。一応新訳カフカはKindleにもなってるよ。 amzn.to/2IbwfeT
2019-02-13 21:56:12@pisiinu 翻訳ってほんと難しいのよね、真摯であろうとすればするほど…。 語学は文化そのものを識ることだもんね。
2019-02-13 22:06:35@Bishoujo ドイツ語では「罪」の複数形が「借金」とか、翻訳に乗せようがない。さらに書かれた当時の風習で「兄がウンゲツィーファーだと妹は結婚できない」って考えがあったらしく、ラストで家族旅行に出たときに両親が妹の結婚のことを考えたりする。 pic.twitter.com/cIYzkSkNtQ
2019-02-13 22:14:49@pisiinu 人を指して使われるUngezieferが当時のドイツにおいてどのくらいの重みの言葉だったのか、この辺は他の史料にも当たってみたいとこだね…。
2019-02-13 22:18:04@Bishoujo さっきのアマゾンのリンクの多和田葉子カフカ集、紙の本だと700ページくらいあってめちゃめちゃ資料が充実してるらしい。700ページももはや読む体力がねえわ…。
2019-02-13 22:21:35