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金(gold)はなぜ現在でも資産価値を持っているのか

通俗的な説明を廃し、金融政策・為替政策・国際金融の側面から考察してみました。
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望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

「「租税貨幣論」概論」ameblo.jp/shingekinosyom… のコメント欄にて、『金(gold)はなぜ現在でも資産価値を持っているのか』について考察(というか仮説提唱)してみたので、ツイッターでも軽く整理しておきたい。

2019-02-13 23:19:39
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

『金(gold)がなぜ今でも資産価値があるのか』という疑問については、希少性が云々、採掘量が云々、といった、どうにもピント外れな解説がなされがちである。 そもそも金の価値が安定しているというのが間違いで、ブレトンウッズ崩壊によって通貨との兌換性を失ってからはむしろ乱高下している。 pic.twitter.com/BLw6z2ZkLi

2019-02-13 23:22:48
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望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

このことからも分かるように、「金の価値が安定しているから、通貨を金に紐付けた」のではなく、「通貨と紐付けられることによって、金の価値が安定していた」のである。主従が逆なのだ。 金本位制にしても、金は列強によって恣意的に国際的決済手段として"利用"ないし"強要"されていたに過ぎない。

2019-02-13 23:24:41
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

では現在の金(gold)の資産価値は、通貨との兌換性なしでどうやって持続しているのか? この状況を説明するヒントになりそうなのが、金市場自体のサイズである。 kamikenblog.hatenablog.com/entry/2017/10/…やhttps://t.co/2hlj94aEx1で引用されているように、金市場というのは決して小さくない規模を持っている。 pic.twitter.com/ysWljUEjxX

2019-02-13 23:29:10
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望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

これだけ規模の大きい金市場の存在下で金の大暴落が起こると、リーマンショックなどと同様に、凄惨な金融危機が発生することになる。 つまり、投資銀行や不動産証券などと同様に、金市場は"too big too fail"(大きすぎて潰せない)の状態にあるわけだ。

2019-02-13 23:31:35
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

金市場自体が"too big too fail"である以上、公共機関がその底抜けを防ぐように一定程度買い支えるのは極めて理に適っている。 元々金本位制の名残で公共機関は一定規模の金を投機的資産として保有していたため、より一層『底抜け』を防ぐインセンティブが働く。

2019-02-13 23:33:38
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

管理通貨制度では、中央政府や中央銀行に基本的に決済リスクがないため、対外債務破綻などがない限りは、手持ちの金(gold)を大量に手放すということが置きづらく、こうして金市場は、兌換喪失による乱高下を経験しつつも、底抜けはきたさないという状況が続いたのだと考えられる。

2019-02-13 23:35:49
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

金本位制が終わって久しいにも関わらず、金の資産価値が"底抜け"しないこと、また公共機関が未だに金保有を継続していることは、これまで論じたように、『金市場自体が"too big too fail"の状態にある』と見なすことでかなり整理して説明可能となると考えられるのだが、如何だろうか。

2019-02-13 23:37:44
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

『金市場がtoo big too failだから、金本位制廃止後も各国が金保有を止めない』という話を以下でしたわけですが、とはいえ、各国が"意識的に"金市場保護をしているというわけではないかもしれません。 むしろ各国政府の無意識の投機的行動の結果として、金市場の保護が生じていると考えるべきかも。 twitter.com/motidukinoyoru…

2019-02-14 06:59:24
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

金保有国 lets-gold.net/ipn/chart_gall… を見ると、アメリカがぶっちぎりで、ユーロ主要国とIMFが続いている。 これらの国や組織の金保有が大きくなるのにはそれなりの理由がある。 pic.twitter.com/Y9WD7an5GV

2019-02-14 07:04:24
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望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

アメリカは通常と異なり、自国通貨が基軸通貨なので、外貨準備としてとりあえずドルを持つということが出来ない。ドルの為替レート変化をリスクヘッジするには、ユーロ、円、そして金などを分散保有する必要があり、ドルを持てば良い普通の国よりも金を保有するインセンティブがかなり高くなる。

2019-02-14 07:06:14
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

ドルほどでないにせよ、国際決済通貨としての地位が高いユーロも似た状況にある。 「とりあえずドルかユーロを持てば良い」という"普通の国"に比べて、為替レート変動リスクをヘッジするための資産保有の仕方が非典型的となる。 これによりユーロ主要国の金保有も相対的に大きくなる。

2019-02-14 07:10:45
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

ハードカレンシー国が自国通貨の為替レート変動リスクを金(gold)保有でヘッジするという構造上、金はハードカレンシー国によっていわば協同的ないし共犯的に価値が保証されているのと似た状況になる。 こうなれば、ハードカレンシー国以外(IMF含む)もヘッジ資産として保有するインセンティブが働く。

2019-02-14 07:14:34
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

もちろん、こうした『ハードカレンシー国のヘッジ資産』としての役割を担うのが金(gold)でなければならないという必然的理由は特にない。 ただ、①金本位制の名残で既に各国が保有しており、②金本位制の名残で金市場の規模が十分に大きかった、という経路依存的な要素がほぼ全てであろう。

2019-02-14 07:18:48
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

金市場はtoo big too failであり、かつハードカレンシー国のヘッジ資産として利用されているという二点から、なかば各国の『共犯』によって金市場の規模が維持され、各国公共機関の金保有が持続していると。 そこでは金それ自体の価値や要素は重要ではなく、国際決済上の各国の思惑の帰結に過ぎない。

2019-02-14 07:22:39
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

金(gold)は事実上、ハードカレンシー国から("Lender of Last Resort"ならぬ)"Buyer of Last Resort"としての保証を受けているのに等しい状態にあると言える。 金に何かしらの安定的価値があるから各国が保有するのではなく、ハードカレンシー国による事実上の保証が金保有需要を産み出している。

2019-02-14 07:26:23
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

コメント欄でもらった指摘とそれへの回答をいくつか抜粋していく。 金(gold)はなぜ現在でも資産価値を持っているのか - Togetter togetter.com/li/1319072 @togetter_jpから

2019-02-22 11:20:31
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

『金はドルやユーロみたいに国の管理を受けないのが良い。仮想通貨の失敗で「やっぱり金だ」となっている面もある。』 ↑ まとめで書いたのは「一見国家管理を受けてなさそうな金が、実際には各国、特にハードカレンシー国の投機需要によってその価値を維持しているという構造がある」という指摘だ。

2019-02-22 11:23:41
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

したがって、もし金(Gold)が仮想通貨に比して優れているところがあるとすれば、金には各国(特にハードカレンシー国)からの事実上の保護があり、仮想通貨にはそれがない、というところが最も大きいだろう。

2019-02-22 11:25:23
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

金は無政府の資産どころか、各国政府の投機需要に依存している極めて高度に政府的・政治的資産である。民間の金保有需要も、そうした基礎構造が派生的・波及的に発生したものである。

2019-02-22 11:27:43
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

『金の価格は実需の影響が大きいのでは』 ↑ 実物的価値は、確かに金の価格の『底』にはなるし、また量産可能であれば現在のような地位はなかったことは間違いない。 しかし、それだけでは、現行の地位・価値を説明できないし、インゴットやコインなどの製造と流通も説明がつかないだろう。

2019-02-22 11:30:04
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

『金(gold)の材料としての価値はいくらで、投機資産としての価値はいくらなのか』 ↑ 参考になりそうな情報はいくつかあり、(ソース不詳だが)これまでの金の総採掘量は18万トン nanboya.com/gold-kaitori/p… であるのに対し、公的機関の金保有は3万トン lets-gold.net/chart_gallery/… にも上る。

2019-02-22 11:42:38
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

また、各年の金需要のうち、投機的需要(投資+公的機関)は30~50%程度 lets-gold.net/chart_gallery/… で、金価格の変動はおおよそ投機需要で説明されるとする議論もある rakuten-sec.co.jp/web/gold/begin…。 既に指摘したように、インゴットやコインといった投資用商品の製造も多いわけで。

2019-02-22 11:45:26
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

『ブレトンウッズ体制崩壊後から金価格が不安定になったとのことだが、不安定なのはむしろ通貨価値の方ではないか』 ↑ 通貨価値を反映する物価の推移と比較すれば、金価格の方が不安定なのは一目瞭然である。 essential-abs.net/2018/02/07/gol… pic.twitter.com/CCBsAcBmuy

2019-02-22 11:52:54
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望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

『公的機関が金(Gold)を実質的に買い支えるとはどういうことか? 金が安くなったときに公的機関が購入する理由は?』 ↑ 公的機関は為替変動に備えて金を需要する。 その取引は、大雑把に言えば、自国通貨価値が高い=金が安いときに金を購入し、自国通貨下落の際に金を売却して外貨を確保するもの。

2019-02-22 11:59:09